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農民は自然にやさしいのか

車窓から見える初夏の田んぼ。日本の原風景とも言えるこの光景が、ある時をキッカケに殺伐とした工業地帯に見え始めます。私が田んぼを手伝い始めたその年、父が私に言いました。

「そろそろ除草剤、撒きに行かんとアカンぞ」

え?うちって無農薬じゃなかったん?

「除草剤1回撒くだけやから限りなく無農薬や」

そうか?そうなのか?
この限りなく無農薬というのはどういうことなんだろう。そう思って周りの田んぼを見ると、かなり農薬を撒いているようでした。農薬とひとくちに言ってもその用途は様々です。

苗の時にカビが出ないようにする薬、カビが出たら出たでそのカビを殺す薬。田植えした後、雑草が生えてこないように撒く除草剤。畔に除草剤を撒く人もいます。最初「畔に除草剤撒くなんて…」って思ってたけど、よく考えたら田んぼの中にもバンバンに除草剤撒いてんですよね~。一緒じゃーん。それから、病気が出ないように撒く殺菌剤とかもあります。あと、時々話題になっているのがカメムシ防除の薬ですね。これはネオニコチノイドを含んでいて、ミツバチが突如として大量にいなくなってしまう原因ではないかと言われています。かなり深刻な薬にも関わらずものすごく使われています。

カメムシは若いお米の汁を吸ってしまうのですが、その後が黒く変色してしまうんですね。農協の検査で等級が下がってしまうので、それを嫌がる農家さんが多いのです。おかげて農協にうず高く積んであるカメムシ防除の薬がバカ売れ、という訳です。

農協へ行ったことのある人はご存知だと思いますが、一番目につくのが農薬と肥料の類です。大量に作物を作って、それを売って生計を立てている人にとって、作物の病気や虫の害は死活問題です。そういう意味では農薬と肥料は役に立っていると思います。とは言え、人間というのはだんだん慣れてきて、ちょっとづつ使う量が増えてきたりするものです。また、病気や虫も薬に耐性ができます。さっきのカメムシの薬だって、撒いても結構カメムシにヤラれてますしね。そうやって、農薬の種類も増え、使う量も増えてくるのではないかと思います。

もう稲刈りが終わっている地域がほとんどですが、いちど田んぼを見てみて下さい。雑草の生えている田んぼはありますか?草取りをしている人を見かけたことはありますか?
そういう田んぼは本当に少ないです。原風景と言われている日本の美しい田んぼの光景の後ろには、大量の農薬が投下されている現実があります。農薬は田んぼから水路へ、水路から川へと流れて行きます。田んぼの生き物も、川の生き物も、みんな死んでキレイさっぱりいなくなっています。農民は自然の友達じゃなくて、めっちゃ自然を破壊しているんじゃない?って思うようになってきます。

もちろん、その中にはきちんと使用方法や量を守ってやっている人、限りなく少ない量を使っている人、のべつまくなしにばら撒いている人、色んな人がいます。ただ、その多くは私たちには全く分からないということです。よく「減農薬」と言うのがありますが、その基準が分からないですよね。農薬10回撒くところを8回でも「減」だし、2回でも「減」。ですから、撒いた農薬をきちんと書いている農家さんはエライと思うし、信用に値すると思います。みんなそいういうことは言いたがらないです。まあ、言わなけりゃ分からないし、食べたって分からないからです。それに、農薬を一度使うとなかなか手放すことはできません。以前にも書きましたが、年に一度しか作れないお米、リスキーな賭けはできないですよね。

でも、自分の分だけなら好きに作れます。まずは農薬を使わずにお米を作ったらどんなになるのか。勇気のある人は小さい田んぼで試してみてはいかがでしょう。


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