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第91日目 小さな町の映画の会

5月30日(土)

9時過ぎに田んぼへ行く。昨日の続きで、田んぼの除草。朝からまだ腰が痛かったけど、腰には慣れてもらうしかない。だいたい、あれくらいで腰が痛くなっては困る。風があって気持ちはいいけれど、やっぱり汗ばんでくる。頭から汗が落ちてきてメガネに入るのが困る。本格的な汗止め方式で手ぬぐいを巻いたほうがよさそう。昨日ずいぶん水が抜けてしまったせいで、オタマジャクシが群れになって干上がっている。アレだ、どんどんなくなる水を求めて最終的にオタマジャクシが集まっちゃったのだ。けれど、結局そこも干からびで全員死亡。いや待て、と私は水栓を開ける。ジョワワっと水がほとばしり出ると、灰色の土の上を流れて行く。窪みに集団で死んでいるオタマジャクシの上に水が流れると、オタマジャクシたちはぷくぷくと浮かび上がり、水に押されながら息をし始めた。

作業を終えて、水路で道具を洗う。昨日田車を洗った時、部品を落としてしまったので、堆積した土の中に手を突っ込んでみる。何度目かに引き上げた手の中に田車の部品が見つかった。枯葉と同じ色をしている。ワッシャーも落ちたままだけど、ワッシャーは代用が効く。私の手の中にあるのは田車独自の部品なので、これが見つかって助かった。あとは修理しなきゃだけど。

帰り道、止めた軽トラのそばでヤマちゃんと東城さんが話している。私が自転車で行くと「エライやろー」と声を掛けてくる。私が田車で除草しているのを見ていたのだろう。田んぼなんて言うのは開けっぴろげだから、どこで誰がなんの作業をしているのかまるっきり分かる。今はまだしも、3年前に「不耕起栽培だ、わーい!」ってやってた私が150時間も草を抜いていた時も全員が私を見ていた。おそらくあきれていたのだろうけど。

東城さんは「アンタ、あれ腰いたいやろ」と、まるで自分のことのように顔をしかめている。ヤマちゃんは「去年は小出来やったけど、Yukiちゃんのは黄金色でええ株やったなー」と言った。ヤマちゃんはずんぐりとした大きな体で西郷どんに似ている。頭脳明晰でイケメンの孫がいることで有名だが、ほかにも月に一度、公民館で「映画会」をやっている。借りてきたDVDや録画したものをプロジェクターで映しているだけだが、月末が近くなると、今月は「死霊のはらわた」です、とか「シャイニング」です、とか、回覧板で回って来る。ホラーが多い。と言うか、主に外国のホラーだ。最初は「寅さんシリーズ」とか「オールデイズ-三丁目の夕日-」とか、ちょい感動するようなのを上映していたらしいけど、ある時リクエストで「遊星からの物体X」を上映したら思いのほか盛り上がってしまい、以来クセになったらしい。年寄りの多い集落は刺激が少ないからだろうか。感動ものの映画よりもホラーのほうが集客がよくなってしまい、今ではすっかりホラー映画の会になっている。

ヤマちゃんは生き物も大好きで、子供を集めた生き物観察会なんかもやっている。ある日、私の田んぼの水栓の水たまりのところに小さい魚が大量に死んでいたことがある。近くにいた林さんを呼びに行って、見てもらったら、林さんは笑いを押し殺している。なんでもヤマちゃんが勝手に入れてったらしく

「Yukiちゃんとこは無農薬やから上手いこと育つんちゃうかな」

って、魚を入れて行ったらしい。いや、無農薬の前に酸欠で死んでるやん。

私の田んぼの横の土手から水路への降り口があり、ヤマちゃんはいつもそこにウナギの仕掛けを沈める。もうひとつの田んぼは近くに汽水域の川があり、ヤマちゃんはそこで毎年人魚を獲る。ウナギはもらったことはないが人魚はもらったことがある。小指ほどの大きさ、水色のバケツのそこでうようよ泳ぎ回っていたのを甘辛く炊いた。大きい物よりも小さいほうが味がいい。それに、小さいとあまり人魚らしくないので、食べる時も気にならない。これが川を上って行って育っていくとそれなりに人魚になってくるので、もう誰も捕らないし食べない。しかし、私は人魚よりもウナギが欲しい。ちゃんと土手の草を刈っているのだし、いつかはウナギのおこぼれをもらってもよさそうだと思っている。いつウナギをもらっても慌てないよう、「目打ち」を手に入れてアナゴで練習しとこうかな。

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交通費 0円 
歩数 836歩
作業 午前中1時間半、夕方1時間半、名古砂で田車を走らせる。
仕事 6月のセール向けに「父の日」の特設ページ作り。有料のバナー作成アプリを使う。かなりオシャレなのができそうな予感。
料理 お好み焼き作った。お好み焼き率高し。
その他 今日も全然歩かなかった。しかも店で昼寝もした。

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