【裏切りの街】守ってあげたい ~後編

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ほんの数十秒前、エレベーターの中では沈黙が続いていた

大丈夫だよ♡ 清算済んだし一緒に出れば...

はるかに年上の自分がすべて対処する。連れの青年には余計な心配をかけてはならない。必要ならわたしがフロントに説明謝罪するから…

わたしの決意に応えるように1階のエレベータードアが開いた。仁王立ちしたフロントババァが待ち構えている

すぐに目が合った

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次の瞬間、信じられないことが起こる...

わたしはそのままダッシュで玄関ドアに向かい脱出しようと試みるのだった。後ろでババァが何か訴えているのが聞こえる

それでも一度も後ろを振りむこうともせず、若く将来のある青年をひとり置き去りにしてただ前だけを向いて走っていた

(ハァ ハァ ハァ・・・ハァ ハァ ハァ・・・)

気が付くとホテルから数十メートル離れた、うらぶれた場末の路地の片隅に立っていた。外はすでに薄暗くなっていた。ホテルの方角に目を凝らして青年を探すが何処にも姿は無い

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(〇〇クン、堪忍して...許してね…)

周囲を行きかう人の好奇な眼も気にせず、電柱の陰から静かに手を合わせ成仏を祈る

わたしの肛門から時折漏れてくるローションは、その若き青年が必死に生きた唯一のあかしであると同時に、絶望を知ってしまった青年の悔し涙なのかも知れない

(ありがとう、〇〇クン...)

懺悔を終えたわたしは日曜夕暮れの雑踏の中へと消えた。


《浣》  *すべて実話です

2020年 6月22日 初出

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趣味だけで書いてます('ω')イマドキの女装さん見ると女装辞めたくなりますが辞め時を見失ってます('ω')。LGBTイシューはよくわかりません('ω')...それではきょうもみなさま、ご安全に。