「人は夢を二度見る」について

 一度も見ない人もいます(多様性の時代)。

「人は夢を二度見る」
・32ndシングル表題曲
・センターは久保史緒里と山下美月
・作曲は松尾一真さん

 「夢を一度諦めた全ての人へ……」と帯が付けられているかのような曲ですが、単純に好き嫌いで言うと、こんなに初めて聴いた時から好きな曲は珍しいかもしれないです。作曲の松尾一真さんという方は初めましてで、調べても何の情報も出てこなかったので謎なんですが、今後を楽しみにしています。賛否両論らしい振付けも個人的には全然気になりませんでした。あれを品のある足捌きで見せられるのが乃木坂たる所以。ただ、腹式呼吸するには厳しい姿勢だと思うので、がっつり歌うことは最初から諦めているのかなと思ったり思わなかったり。

・歌詞、世界観
 感覚的なものでしかないのですが、完全に久保史緒里さんというイメージです。”くぼした”の物語ももちろん深いですが、楽曲からは久保史緒里一人の物語しか想定していないような気がします。山下さんもブログで、後ろ向きな言葉を並べていました。

でも当初センターをやらせていただくと決まった時はこのテイストの楽曲が来ると思っておらず正直すっごく困惑しました

そこからまた1から創り始め焦りと共にリリース期間を迎えてしまった部分もあります

山下美月ブログ

 もちろんセンターのキャラクターに依存した楽曲ばかりを作る必要はないんですが、
結果として本人を困惑させるほどのギャップがあったというのはちょっとかわいそうだなと思ってしまいます。
 ダブルセンターにした意図として考えられるとすれば「未来の答え」「不眠症」からのストーリーの要請ですが、似たような言葉が使われているとはいえ、一つの物語としてまとめるのはちょっと難しいような気もします。結局一番の目的は新しい乃木坂を世間にお披露目するために「顔」を4人並べたかったのかなという、それだけでしょうね。まぁ、楽曲側から求められたダブルセンターと言えるのは「今、話したい誰かがいる」ぐらいですが。

あきらめるなら一人でいいけど
夢を見るなら君と一緒がいい

「今、話したい誰かがいる」

・夢を見るということ
 個人的に、一度でも夢を見られた人はとても幸運だと考えています。たとえ叶わなくても。アイドルになりたい、プロ野球選手になりたい、医者になりたい、お嫁さんになりたい。そういう具体的な夢に出会うこと自体がすでに人生における一つの成功であって、二度も夢を見られる人は相当なめぐり合わせの良さがあると思います。なんとなくだらだらと生きてきて、一度も夢を見たことのない自分のような人間にはとても羨ましい話です。強いて言えば、穏やかな終幕を迎えたいというのが夢といえば夢でしょうか。
 常々、いろんな人が自分に置き換えて聴くことができる歌詞がいい曲の条件だと思っていますが、いい曲だと思っているのに自分には置き換えられないというジレンマを感じながら聴いています。

・夢といえば
 思い出すのが2017年にNHKで放送された「ガクたび!」での一コマ。

きいちゃん

 どこかの高校の生徒たちと弁当を食べながら会話しているシーンで、「将来の夢は?」という問いに対して、北野日奈子さんが「動物愛護センターの犬をゼロにすること」と言っていました。やっぱりアイドルですから、「夢は?」と聞かれたら、アイドルとしての夢(センターに立ちたい!紅白に出たい!東京ドームでライブしたい!ファンの人を幸せにしたい!)、もしくはアイドルの先にある夢(女優になりたい!ソロシンガーになりたい!)を答えるのが普通というか、無難なところです。実際そうなのであれば良いも悪いもないのですが、ここで何の衒いもなくアイドル活動とは関係ない夢を口に出せることが強いなと思いました。「この人は信じられそう」と思った瞬間でした。

 それでは。

「ここにはないもの」のMVで"二度見"する筒井あやめさん


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