「硬い殻のように抱きしめたい」について

 齋藤飛鳥さんの卒業コンサートを観たので。

「硬い殻のように抱きしめたい」
・3rdアルバム「生まれてから初めて見た夢」収録
・齋藤飛鳥ソロ
・作曲は杉山勝彦さん

 3rdアルバム当時は、飛鳥さんに与えられたソロ曲としてはあまりしっくりこないかなという印象でした。誰にでも当てはまってしまう「これから」ほどではないにしても、もう少し本人ぽい歌詞を期待していました。それが6年経って、楽曲に歴史が追いついた感があるというか、やっと答えが見えました。卒業を迎えた齋藤飛鳥さんが「僕」、乃木坂46が「君」でした。

君のために硬い殻になって
悲しみから守り抜こう
僕が硬い殻になろう

「硬い殻のように抱きしめたい」より

 最後の挨拶で飛鳥さん自身はお母さんにも重ねていたようですが、とても素敵な歌声でした。この曲で終わった卒業コンサートの後に感じたのは、乃木坂46の守備力が高すぎるということ。まさに硬い殻のよう。

 これまでの卒業生も概してそうでしたが、「推しがいなくなってもう私の好きな乃木坂じゃないさようなら」と言わせないことに賭けるパワーがすごいですね。やっぱり1・2期生が全員卒業してしまって、別に敢えて声に出さなくてもいいのに「これでオタ卒できる」だとか、中には「もう32ndは興味ない」と言ってくるような人に対して、そうはさせるかと「これからの乃木坂46を応援してほしい」と強く言います。さらに、自分がいなくなった後のシングル曲を一緒にパフォーマンスする。私が一緒に歌いたいといったこの曲を、このメンバーを貶せるのか?無視できるのか?と。

 「人は夢を二度見る」が始まった瞬間は、ちょっと心の中で綱引きしていました。10thバスラにOGが出てきた時と同じ「後輩たちの場に出しゃばってきてほしくない」という感情と、「そこまでしても守りたいんだな」という感情と。まぁ飛鳥さんはこの時点では明確なOGとも言えないし、卒業とコンサート時期がずれたからこそできた荒技という感じで、まぁよかったのかなとも思います。

 もはや卒業コンサート・セレモニーで恒例になりつつある、3・4・5期生の期別曲に卒業生が混ざるコーナーについても、単純な楽しさがベースではありますが、深読みすれば「私が好きな後輩たちの曲をまさか貶さねえよな」とか、それは言い過ぎにしても「後輩たちの曲も興味もってね」みたいな感情も含まれていると思います。


 いくら攻勢に出ようとしても徹底して守るのが乃木坂46。例えばセンターの抜擢で攻めようとしても、周りの先輩が守る守る。もうカテナチオ。少しでもファンの感情とすれ違いが生まれたなと思った瞬間に、一気に陣形を整えてゴール前にバスを停める乃木坂46のメンバーたち。
 個人的にはこの守勢は好きです。もう2016年からずっとずっと卒業に対する感傷を抱きながら走り続けている状況を見ても、これこそが乃木坂46だし、他の姿勢をとりようがないだろうなと思います。

 最後の挨拶の与田さんの場面なんてまさにこんな感じに見えましたね。

僕にできることは
世界の誰よりも
強い力で君のすべてを
ただ抱きしめることなんだ

「硬い殻のように抱きしめたい」より

 

お疲れ様でした。

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