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マーベルズの不評から見るディズニー帝国の衰退

ディズニープラスで早くもマーベルコミック映画の最新作「マーベルズ」が配信された。興行収入の振るわなかった作品に限って公開から配信までスピードが抜群に早い。前評判や映画批評の動画をyoutubeで見る限りはその評価は惨憺たるものであった。

ともあれ早速視聴してみる。あえて結論から言うと。

「えっ、こんなもんじゃない?」

であった。

もう少しポジティブな言い方をすれば、周りが言うほど私個人としては悪くない映画だった思う。それどころか、アベンジャーズという冠がついたシリーズを除けばMCUは大体これくらいのものであったと記憶している。

今回はキャプテンマーベル、モニカランボーそしてミズマーベルの3人のヒーローが集結する物語ではあるもののランボーとミズはドラマが主体のキャラクターであり、扱いとしてはキャプテンマーベル単体扱いなのかな?という印象だ。

私は自他共に認めるマーベル映画大好きオジサンなのでどうしても贔屓目に見てしまう傾向があるのだが、それでも今回の映画は周りが言うほど酷くはないと本当に思った次第だ。

まず映画の説明をしたい。しかしマーベル映画の大きなハードルとしてキャラクターを知らなければ全く盛り上がれないというか、知らない人々の身内話を見せられている蚊帳の外的な映画になってしまので注意が必要である。

キャプテンマーベルことキャロルダンバースとモニカランボーの関係性を知らなければ胸に込み上げる思いも沸かないし、ミズマーベルがなぜキャプテンマーベルと同じマーベルをコードネームにつけてややこしくしてるのかも分からないとただの面倒くさい糞脚本に感じてしまう。

それではごく簡単ではあるが各キャラクターの紹介をしたい。


キャロルダンバース


宇宙最強のぶきっちょお姉さん。コードネームはキャプテンマーベル。元はアメリカ空軍のパイロットだったがなんやかんやで宇宙に行ってスーパーパワーを宿した挙句記憶喪失になりそれを敵に利用され戦争の道具に。その後なんとか記憶を部分的に取り戻すもその都度ついた側の戦況を大きく覆すため「殺戮者」などと物騒なあだ名で呼ばれる強すぎお姉さん。あまりの強さから名作アベンジャーズインフィニティウォーからも進行上の都合で一回弾かれる。続編エンドゲームでは「強いけどチームワークを乱す奴」扱い。心根は優しいが強すぎる故に不器用。

余談だがSNSでキャロル演じるブリーラーソンがキャプテンマーベルの試写会に行った画像が上がった際は「地方のイオンモールで映画を見に来た地元の怖い先輩のヤンキー彼女感が凄い」として一部で盛り上がった。

「この後カラオケいくべ?」感が拭えないラーソン氏


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キャプテンモニカランボー


キャロルことキャプテンマーベルの親友の娘。幼少期は第二の母のようにキャロルを慕っていたが色々あって今は距離が出来てしまうもどかしい関係に。サノスの指パッチンで消えていた間に最愛の母親がガンで亡くなってしまうという過酷な人生を歩みつつ、魔女の結界に入った事で副作用的にスーパーパワーを得てヒーローへと転身。正直なところ能力的にもキャラクター的にも脇役感が拭えない。強いけどこれ系ならキャロルがいれば良くね?扱いになってしまう不遇の戦士。

ただしキャロルと違って常識的な人間かつ理性的なタイプなので頭脳戦で活きてくるキャラクターではある。ただどうしてもサイドキックとしての未来しか見えない。


お転婆ムードメーカー

今のところマーベルドラマ系では一番好きなキャラクターかもしれない。

キャプテンマーベルに憧れるごく平凡な少女だったが、ひいおばあちゃんのバングルを身に付けた事でスーパーパワーが宿った。ただ肝心のスーパーパワーがドラマの中では微妙な描かれ方をしていてイマイチ分かりづらいのと、後半で話の中心核となるひいおばあちゃん達の話が暗くて退屈だった。カマラカーンとしての大事なルーツの話であるだけに大切に扱っているのは分かるが、ポップで明るい入りで主人公も天真爛漫な性格ゆえに話が暗いと際立ってしまう印象だった。ドラマ中で一番面白かったのは一話だったのではと個人的に思うところ。

ただ今回の映画で「光を物質化する能力」という明確な説明があったことでああなるほどど合点がいったのでここにきて初めて足りない部分が補われたなという感じ。(ちなみに原作コミックでは超人類で手足が伸びる)


とまあこんな感じで三人の光に関係する女性ヒーローたちが集結して悪と闘う話(悪とは言ったもののある意味では悪とは言い切れない)である。

三人の合流も比較的スムーズでテンポも悪くない。強いけど我の強いキャロル、常識的で頭脳派だが真面目過ぎるランボー、能力は微妙だがムードメーカーで明るいカマラ。正直このチームは最高のバランスで観ていてウキウキした。

しかし、である。

今回の映画に関して不評だった原因は大きく2つあると個人的に推察する。

まずは公開のタイミングだろう。

ひと昔前。つまりエンドゲーム終了直後くらいなら興行収入は全然違っていたと思う。「シャンチー」や「エターナルズ」といった駄作としか言いようのない映画を作っているならこっちを出せば良かったのに思わざるえない。それもそのはず。一時期は最強の映画シリーズと謳われたマーベル映画も今は衰退の一途。エンドゲーム補正というフィルターが外れた視聴者には退屈な映画として写ったに違いない。「ブラックパンサー2」や「アントマンワスプクワントマニア」など金と時間を費やした作品でさえ思ったより評価を得られなかったのにこの作品では難しい。昨今のマーベル映画及びドラマのクオリティ低下は著しく、実際総プロデューサーのケビンファイギやディズニーのCEOがここ最近はディズニープラスの契約者数を伸ばすことばかり考えていた、と認めている。

ふたつ目はディズニーとMCUの迷走。これはかなり深刻で、ディズニーにおいては節目の100周年にも関わらず満を辞して送り出した「ウィッシュ」がスベってしまうという大失態をやらかした。今回のマーベルズに関しても軸のブレ方が顕著に見て取れたことから、彼らが今後方向性という迷路で右往左往しているのは確実だろう。

問題のシーンは三人のヒーローがとある水の惑星に行くところ。そこはかつてキャロルが政略的に王子と婚約することで周囲への抑止力になった惑星という凄い設定。しかもそこに住む種族は歌う事で言葉を伝えるというミュージカル式コミニュケーション手段をとる。

まず王子役だが、まさかのパクソジュン。

もっと良い役あっただろうに。お飾り感が凄い印象だった。この役、パクソジュンじゃなくても良くないかな?と思ったのは私だけでないはず。どうせ彼を使うならいっそ振り切ってヴィランとかにして欲しかった。パクソジュンならきっと良いヴィランになってくれたはず。

パクソジュンの使われ方もそうだが、このミュージカル惑星のシーンが観ていてキツかった。歌わないと会話出来ないというありがち且つ退屈な設定のまま進んでいく。そして何故か、ドレスアップするキャロルダンバース。舞踏会のごとくみんなが踊るなか、パクソジュン王子とドレスアップしたキャロルが歌い踊る。

うわ、きっつ、となった。


昨今、ディズニーもマーベルも何かと言えば新しい時代のコンテンツを創りたがり特にマーベルに関しては次世代のアベンジャーズはマイノリティや女性が中心で多種多様な人種とキャラクター構成にしていくぞという意気込みを表していた。

しかしどうだろう。蓋を開けてみれば強い女性の象徴のようなキャプテンマーベルにドレスを着せまるでプリンセスの様に振る舞わせ歌を歌わせる。そして流行りのイケメン俳優を相手役に起用して、韓国好きの女子たちにもしっかりアピールしていく。マーベルズで表現するのは新しい時代の強い女性像ではなかったのか。

ポリコレに拘って自分たちが築いた大半のコンテンツを破壊し続けているくせに、彼らは今だステレオタイプなアプローチでプリンセスへ憧れる女の子たちに媚を売り続けている。

ディズニー帝国が崩壊するなんてにわかには信じがたいかもしれない。しかし我々日本人はつい先日、あのジャニーズ帝国が崩れ落ちるのを目の当たりしたばかりだ。盛者必衰。あながち無い話ではない。

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