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辛すぎた映画「こちらあみ子」

こんなはずじゃなかった。どんよりした気持ちは梅雨時の低気圧の如く私たちの頭の上に留まり続ける。正直、一昨日行ったディズニーランドの夢見心地な気分を返して欲しい。なぜ、この映画をわざわざチョイスしてしまったのか。それはもう、ジャケットとNetflixの説明文に騙されたとしか言いようが無い。

広島を舞台に広がる不思議で温かい癒し系あみ子ワールド♪
ではない。断じて。

なんとなく気分的に優しい気持ちになれる映画が見たかった。子どもが主役で優しくて温厚な大人ばかりが出てくる不自然な映画。不自然だけど観ていると「ああこういう大人にならなきゃ」と思わせてくれる映画。心の栄養素として。

そこでなんとなくNetflixの一覧から選んだこの映画。「こちらあみ子」。

「広島に暮らす、小学五年生のあみ子。家族に見守られながら元気いっぱいに過ごしていたが、少し風変わりな彼女のあまりに純粋な行動は、家族や同級生など周囲の人たちをいやおうなく変えてゆく」※Netflixサイトより引用

まずこの紹介文を書いたNetflixのスタッフ。

いい加減にしろよ?

と言いたい。もっと書くことがあるだろ。と言いたい。説明不足過ぎる。この説明ではサバイバルナイフをまるでおままごと用のプラスチック包丁の様に誤解してしまう。

あみ子は刺してくる。何度も何度も心を。遠慮なく抉ってくる。派手な効果音や陰鬱なカメラワークをあえてあまり使用していないせいで身構えられない。無防備なこちらを遠慮なく刺してくる。ダーツの旅を見ていたと思ったらザ・ノンフィクションだった。そんな気持ちになる。

決して説明文は嘘を書いているわけではない。だが説明不足過ぎる。ただ嘘は書いてない。それがまた無性に腹が立つ。

さて、ここからは登場人物の紹介をしながらこの映画の辛さに注意喚起をしていきたい。ネタバレを過剰に含むので閲覧は自己判断でお願い致します。


あみ子
小学五年生の主人公。途中で中学生になる。周りが大きくなっているのにあみ子を演じている役者さんが変わらないので並んだ際に身長差で一瞬違和感を覚えるがそれがネグレクトによって成長が止まってしまっている描写かもしれないと気が付いた時に胸が痛くなってしまった。私の予想通りなら悪趣味な演出だと思う。この後どうなるかは知らないがどうか幸せになって欲しいと心から願う。

お兄ちゃん
前半は優しい家族想いのお兄ちゃんだがある日突然グレだして暴走族にメガ進化する。通称田中先輩。お兄ちゃんのおかげで中学であみ子がイジメられないくらいの影響力を持っているが途中でまさかの中学を退学になるという不良街道を爆進。その後の消息は不明。あみ子がグレた原因の一旦の様な匂わせもあるが突き詰めると自分勝手で無関心な父親のせいであることがなんとなく分かる。クソオヤジの被害者のひとり。

お母さん
継母。近所の子どもを集めて習字教室を開いているがあみ子は出禁。色々な意味で母親になりきれなかった人。後半は心が壊れてしまった。あみ子のせいで心がダメになった描写があるが突き詰めるとクソオヤジと結婚したのが不幸のはじまりだったので言ってしまえばクソオヤジのせい。自分のことはお母さんと呼ばせるわりに子どもたちはさん付けで呼ぶという距離の置き方をする。とは言え可哀想な人ではある。

お父さん
物語全般における戦犯。サイコなクソオヤジ。自分勝手で子どもに無関心。事なかれ主義で子どもに向き合わない。子どもの前で新しい恋人といちゃついたり子どもへの説明をせず祖母に押し付けたり無言で寝室から追い出したりする。大きな声で歌うあみ子に対し「もっと小さな声で歌え」と怒るふりをするがこの場面から見るにあみ子に向き合って怒っていないことが読み取れる。最低限の面倒は見るが体裁を取り繕っているに過ぎずネグレクト気味。同じ親としては最後まで観るとコイツが一番クソだなと思わざるを得ない。

のり君
あみ子の想いびと。多分同級生。お母さんの習字教室に通う優等生。親から「あみ子は可哀想な子だから面倒見てやれ」と言われ半ば強制的に面倒見ていたがあみ子のせいで親に怒られた時は彼女の腹部に躊躇なく蹴りを入れていた。それでもあみ子から好かれていたがとある事をきっかけに堪忍袋の緒が切れてあみ子をボコボコにする。実はあみ子のクソオヤジと同じくらい自分本位だが子どもゆえに仕方ないと思える。

坊主頭
今作最大にして唯一の良心。最初はよくいるお調子者のイタズラ坊主かと思いきや、人を差別せず自分の真っ当な価値観で人に接する優しい男。口は悪いところはあるが相手を思い遣っての言動も多く、真っ直ぐで素直な良い子。こういう子どもに育って欲しいと親は思ってしまう。どうやったらこんなことが言える子どもになるのか、彼のご両親に聞きたいくらい。最後の最後まで「実は俺、お前のことが‥」的な描写がなくて本当に良かった(近いのはあったけど)男女どうこうではなく純粋に人としてあみ子を気遣ってくれる人。

おばあちゃん
トランプと虫除けと戸締りが苦手

チームおばけ
途中で歌にのせて出てくる仮装連中。子どもの妄想だからか陳腐な感じ。必要性を感じない。むしろこんなほんわかパート逆にいらんわと言いたくなる。原作は未読なので知らないが監督が耐え切れなくて入れたなら断ればいいのにと思わざる得ない。どっこいラストでの登場シーンは完全にホラー。

観たことを後悔するくらい辛い

こんな映画はある意味そうそうない。同じ子を持つ親だからこそイラつくし辛い。一番嫌なのはもしも自分が彼らと同じ立場だったら果たして違う行動がとれるだろうか?などと奥底にある仄暗い感情を刺激され陰鬱な気持ちにさせられることだろう。今のところ二度と観ない映画ナンバーワンである。

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