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冷蔵庫のない生活で、人心一新を知った。

 長期の出張から戻ったら冷蔵庫が壊れていました。中にあった冷凍食品は全てダメになっていました。2年前に買ったばかりなのに。こんなに早く壊れるのかと、何度も電源を入れ直したのですが、冷えてくれません。カスタマーセンターに電話しても、修理ができるかどうかもわからない出張費用は8000円、保証は1年間だとの一点張りでした。無念でしたが、生き返るとは思えない。

買い換えよう。

さっそく、家電店に購入しに行ったのですが、気に入った商品は海外からの部品の供給が遅れており、納品まで一ヶ月かかるとのことでした。だからと言って、毎日10年以上は使うだろう物を妥協をしたくありません。

つまり突然、

冷蔵庫のない生活を強いられることになりました。

 その日からスーパーマーケットに行く度に氷をもらい、玄関においた発泡スチロールの小さな箱が我が家の冷蔵庫となりました。(毎回氷をもらっていると後ろからの視線が気になりました。)一日目はある程度冷えているのですが、二日目になると要冷蔵の食品が心配になります。そのうち欲しいものを何でも買うという発想をやめて、どうしても今必要なものだけを買うという考え方になりました。購入するものを工夫するようにしたのです。冷蔵庫はスーパーにある!という発想です。ですから、我が家には冷蔵庫が近所にあるスーパーの数だけあるわけですから、なぜだかおおらかな気分になります。最後には冷蔵庫のない生活を楽しんでいる自分に気がつきました。

やればできるものです。


 そんなこともあって、生活のスタイルを変えるのは「考え方」だなと思うようになりました。例えば私たちはこれまでも様々な試練を乗り越えてきました。突然降りかかる様々な苦難にも立ち向かい、学び、克服をしてきました。そのためには、これまでの生活様式を捨てて、新しい常識を作っていかなければなりません。場合によっては、個人や地域や国に限定されるものではなく、すべての地球人に課された共通の一新となることもあります。以前と同じ日常ではなく、以前とは違った次元の社会を創造するのです。環境の変化を克服する方法は唯一、自分が変わるということです。ダーウィンの名言に、

「賢いものや強いものが生き残ってきたわけではなく、変化に対応できるものが生き残った」

という言葉があります。

 今までの価値観や常識を疑い、将来への希望を見つめ直し、誰もが明日をより良く生きたいと思う社会。家族や愛する人を守り、明日が楽しみで、より幸せに生きたいという願いが叶う社会。それは刷新でも更新でもなく、人の心を一新するという意味です。初期化やバージョンアップではなく、OSを変えるくらいのことなのです。(少し大げさすぎか?)

 生活様式を変えるということは、大変な変化やストレスのように感じます。しかしながら私たちやその祖先の人々は、自分たちが持って育ってきた環境や考え方を見直し、変革を続けて生きてきたに違いありません。

 例えば武士の政権を終わりにし、近代の法治国家を目指した明治維新。戦争に負けて民主主義を押しつけられても、自らがその考え方を変えて生き続けることを選んだ昭和の戦後。大震災という自然災害の後、違う価値観で生きる希望をつないだ方も多かったと思います。疫病や自然災害が起こる度に、私たちは土地や建物の工夫や衛生環境への取り組みや研究を重ねただけでなく、自らの価値観を変えることで、災害と共存できる道を探してきたのではないかと思います。実はそうやって私たちの祖先は生き続けてきたのです。人心を一新し、自分を変えようとする姿には、人類の知恵と希望があります。 


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追記:この文章は、「今」を思ってむさぼるように書いたものですが、今起こっている具体的な事象や事態の固有名詞はあえて書かないようにしました。困難な歴史や悲しい出来事も時間が解決します。必ずいつか終わり、時代は変化するからです。この文章が10年先の人にも、100年先の人にも読んでもらえることを願っています。「今」を切り取るのではなく、いつ誰がどんな時代で読んだとしても、通用するような、そんな文章でありたいのです。

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