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セブンマイル・ブリッジで眠る

二十代の頃にはじめて訪れたマイアミは、陽気を絵に書いたような街でしたた。日差しが照り続ける中、やっとたどり着いたマイアミビーチ沿いにあったナショナルホテルの部屋で、途中買った本場フロリダのグレープフルーツを初めて食べました。こんな美味しいフルーツがあるのかと感動しきりでした。

マイアミからは、レンタカーでキーウエストに向かいました。当時は宿泊予約することもせずに、行き当たりばったりのホテルに泊まれば良いという気楽な考えで、キーウエストに到着しましたが、空いているホテルはなく、かと言って高級なホテルに泊まるほどの器量もなく、仕方なくマイアミに車で戻ろうということになりました。すでに遅くなってきていて、行きに見られた島々をつなぐ橋と海が美しく続く光景もなく、暗い退屈な一本道が続くだけですので、ついついスピードを出してしまって、ポリスカーに止められました。罰金のチケットを切られて、車を運転する気力も無くなって、側道に車を止めて明るくなるまで眠りました。それがセブンマイルブリッジでの若き頃の思い出です。

リトルハバナ

2023年の3月。数十年ぶりに訪れたマイアミも変わらず陽気でした。当時宿泊していたナショナルホテルはその時から古いホテルでしたが、老朽化して取り壊されているかと思っていましたが、驚いた事に今でも現存して大音量で貸切パーティーを開いていました。陽気さは相続されていくのだと思いました。

スペイン語にあふれたリトルハバナでJAPANのTシャツを着て散歩していると、微笑み顔で話しかけられます。そう、WBCの準決勝と決勝戦を見に来たのです。彼らは、メキシコが勝つとかアメリカが勝つとか勝手な事を言っていたので、「Japan win. We are Samurai !」ときっぱりと答えておきました。(WBCの試合のことは、他の媒体に発表したので書かないでおきます。)

屋台のフルーツ屋さん

そして、今回もキーウエストへ向かいました。そう、再チャレンジのドライブです。今度はホテルを予約して、違反にならないようにセブンマイル・ブリッジを走り抜けてキーウエストに到着しました。

ヘミングウエイの家は今でも猫が主のようであり、遠くにキューバが見えるハーバーに落ちる夕陽は、変わらず人々を魅了していました。

キーウエストのハーバー

庶民的なキューバ料理店では、あまり見かけないアジアンの来訪のせいか終始無口で、黙々と作業をこなしていました。帰る前においしかった料理の素材や味付けを聞くと、嬉しそうに丁寧に答えて、「また、どうぞ」と言って愛想よく見送ってくれました。

人生であと何度も行けるかわからない場所に身を置くと、
その一歩一歩を歩く時間が愛おしくなります。

若い頃に支払った罰金も、夕日の美しさや人々の笑顔が受け継がれていたのであれば、うれしい代償です。


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