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小説まとめ

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書いた小説のまとめです。
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記事一覧

[短編小説]山形グルメメモリー

注意 ココナラにてご注文いただいた作品の掲載です。 依頼は「山形にちなんだ小説orエッセイ」でした。 以下本文です。 ---------------------------------------- 山形グルメメモリー  山形市というと何が浮かぶだろう。  ラーメン、蕎麦、芋煮、玉こん、どんどん焼き……僕が真っ先に思い浮かべるのは食べ物ばかりだ。もちろん、観光だってある。文翔館は立派な建物で目を奪われるだろうし、山寺の石段を登り切った先の絶景も捨てがたい。温泉も数多く、学

[短編小説]スリランカの風

ココナラで依頼していただいた作品です。 依頼者様のInstagramに掲載していただいたので、リンクからお読みください。 依頼者様を主人公にした、スリランカの旅行小説です。 今回の依頼で初めて、紅茶の国スリランカ・・・かつての国名セイロンを認知しました。 セイロンティーといえばわかる人も多いかもしれません。 ふだん紅茶を飲むようになって、自分も近く感じるところです。 小説の中で、紅茶のふるさと感を出せてたらいいなと思います。 ココナラでは随時、短編小説の依頼を受け付けてお

[小説]グリーンアーカイブ

東北ずん子SF小説『グリーンアーカイブ』の冒頭試し読みです。 ずん子をご存知でない方にもお楽しみいただけます。 SF/アンドロイドの自我や在り方をテーマにした作品です。 <あらすじ> 「ボイスピークにアップグレードしませんか?」 音声合成・会話型アンドロイド『ボイスロイド』——東北ずん子の提案に、私はすぐ答えられなかった。二人で暮らし始めて二年、変わったことだって多かったはずなのに、私は何を恐れているんだろう。二人の答えは出せないまま、誘われるように私たちは東北・白石に足を

[短編小説]75

 ぼんやりと空を見上げていると、夕焼けの中を一筋の光が走った。  願い事なんてあったかなぁ、と思っている間に光は地平に消えていった。  隣に座っている小学生の女の子──東北きりたんは「ラッキーですね、ゆかりさん」なんて言ってペットボトルのジュースを飲んでいる。いつも付けている頭の包丁飾りは鞄の中にしまっていた。 「そうだね」  そっけなく私は返して、微糖コーヒーをぐいっと飲み干す。  どこかもわからない河川敷で夏風に吹かれながら、遠くの空を眺めていた。 「ここ、どこですか?」

[掌編小説]石にたゆたう

 寝ぼけ眼をこするとカーテン越しの日差しが眼底を刺激して、どうやらまた朝が来てしまったらしいと困り果てる。昨日寝付けたのは何時頃だっただろう。  処方限度いっぱいの睡眠薬さえも効かず、布団の中でうごめくばかりの時間は苦痛だった。スマートフォンの向こうの世界も寝付く夜、僕はひとりなんだと実感する。田舎の夜は早い。十二時を回る頃には誰も彼も夢の中だ。僕だけが夜に取り残されたような不安と明日への怯えに体を丸め、朝が来なければいいのにと祈る。なにも感じることがなければ、こんな夜も怖く

[小説]猫とラジオと

 今の世の中はとても便利で、たとえばスマートフォン、手のひらにすっぽり収まる端末で、知りたいことをその場で調べることができる。インターネットには知らない情報がいくらでも転がっていて、分厚い文献の束を漁ることもなく、机上のコップに手を伸ばすように、検索窓にキーワードを打ってしまえば五分で辿り着けてしまう。ただ情報が流れているだけではなくて、仮想の自分を「アカウント」という形で作ってしまえば、同じような輪の中で見知らぬ他人と画面越しに繋がることだってできる。大学生なんて身分も関係