滞在許可証を語る
イタリアで滞在許可証を取得した事のある人ならば、みんな1つや2つ逸話があるだろうと思う。取得までにぶつかる困難のレベルは様々だとしても、毎回何で?!な事が必ず起こる。
私は労働者の為の滞在許可証(と言っても様々な種類があるのだが)を取った事がないので、多分私が経験した事は困難と言うのはちょいとおこがましくないかい?なのかもしれないけれど。
記念すべき(?)最初の滞在許可証は2004年春、ヴェネツィアにて学生の為の滞在許可証。まずここで言わなくてはならないのは、滞在許可証の取得は例えば同じ時に同じタイプのものでも、街が違えば取得までの時間が違ったり、何もかもが同じ条件だったとしても、その日受付にいた職員によって言われた事が違ったとか、ともかくこうすれば絶対すんなりいく!と言うものがない。
2004年にはまだ、現在ほとんどの滞在許可証が使っているKITと呼ばれる郵便局経由のシステムが存在してなかった。そしてもちろんインターネットはあったけれど、今ほど何でもネットで調べたらすぐ解決するわけでもなく、当時滞在許可証に必要な書類とかは一体どこから情報を得ていたのか、さっぱり思い出せない。
さて、いざ滞在許可証を申請するぞ、更新するぞ、となり、書類も用意したら当時何をしたか。早朝から警察の移民局へ行き、我先に我先にとおしくら饅頭状態で8:30の開門まで待機。いざ門が開き、周りの勢いで転ばないように、遅れも取らないようにして門をくぐると、なんとな〜くできた列(そこには警察が数人見張っている)に並ばされ、建物の入口で番号札をもらう。この時点でまた結構待つ。よくこの時点でもはや何時間も待っている人々の忍耐力が切れてきて、押した、押さないみたいな事で喧嘩が起こったり、横入りしただろう?とか揉める。で、警察が止めに来て更にヒートアップみたいなシーンをよく見た。巻き込まれないように、ついでにスリとかにもあわないようにもう気を張りすぎて既にぐったりだ。やっと入口で番号札を貰い中に入ると、もはや座れる場所などなく、かなり広い部屋に色んな国籍の人々が暗い顔して(るように見える)ひたすら自分が呼ばれるのを待っている。何時間も待ち、ようやく自分の番が来て、指定の書類を出したり、指紋を取られたりして、問題がなければ、手続きをしてるという書類を貰い、大体いつ頃また来いと言われて終わり。最初の頃は本当にそれだけだったような気がするが(うろ覚え)、途中から滞在許可証ができたら携帯にショートメールが届くなんて事があったような気もする。
当時滞在許可証はすぐになんて貰えることはなく、申請してから半年後とかザラだった。そうなると1年ごとに更新する学生は、半年は本物の滞在許可証を手にしないままで、やっと手に入ってもまた半年で更新となる。ついでにいうと、滞在許可証を貰いに行く日もさっきのように朝からひたすら並ぶのだ。
確かヴェネツィアにいた最後の年、KITと言うシステムが導入された。以前のように闇雲に警察に行くのではなく、まず指定の郵便局に行きKITと言う申請書の詰め合わせのような物を貰ってくる。そしてそれを説明を読みつつ必要な部分を記入し、指定の書類をコピーして郵便局へ行き(どこでもいいわけではない)滞在許可証の件だと伝えると手続きをしてくれる。様々な料金も払い、書類も揃っているとその場でRicevutaと呼ばれる小さな紙が渡され、いつオリジナルの書類を持って警察の移民局へ行くかという予約が取れる。この予約システムのおかげで一応昔のように早朝から並び続けるというのはなくなった。また最初にこのシステムを使った時はそれでもすごく待ったような覚えがあるけれど、2013年に再びイタリア生活再開で今度はミラノで学生として手続きした時は、当日の待ち時間も昔ほどではなかった上に、移民局での手続きの後、1ヶ月未満で滞在許可証を手にできたのでかなりスピードアップだった。ただ、それがミラノだからなのかとかラッキーだったのかとか詳しいことは不明。
その後、2016年に私は結婚することになった。結婚により学生から、イタリア人の伴侶が申請できる滞在許可証を申請できることになった。色々調べていくとまず5年有効のものが貰えるらしく、さらにKITを使わずに移民局の予約システムを使って自分で予約を取るという。その通り予約を取り、書類を持って移民局に行き少し待つくらいですぐに窓口へ呼ばれ、書類をすべて提出すると、1時間ほどで新しい滞在許可証が発行されるのでその場で待機するようにと言われる。本当に約1時間ほどで、ぺらっぺらの紙の5年有効の滞在許可証が渡された。
ここで、私は全てに「滞在許可証」という言葉を使っているが、学生の時のものはPermesso di soggiornoと呼ばれていて、結婚によって得たものにはCarta di soggiornoと書かれていた。また学生の時はカードの滞在許可証だったけれど、結婚後のはさっきもいった通り紙なのだ。
さて今年2021年、結婚から5年経ちいよいよ次の更新では「無期限」の滞在許可証が貰えるはず、なのだが、ご存知の通り世界はコロナウイルスに翻弄されている。去年から滞在許可証が自動的に数ヶ月ずつ期限が延長されている、という情報は聞いていたがとりあえず例の予約システムに行ってみると、何回やっても2022年の1月からしか予約が取れないのだ。それはどうしてなのかという情報はどこにもないので、移民局にメールをしてみるものの返事がなかなかないので、移民のサポートをする事務所というのに連絡をしてみると、1つ目のところでは話が噛み合わない上に最終的に彼らにサポートを頼むと2万円ほどかかると言い出したので退散。別のところでは親身に相談に乗ってくれたが、彼らもやはり2022年の1月からしか予約が取れないというので、とりあえず予約は後で取り消すこともできるので一番はやく取れる日の予約を取った。その後忘れかけた頃に、移民局からメールが届いた。それによると、月曜日の朝に「予約を取りたい」という申請書を持って移民局の門の前に来いという。コロナによって、様々なことが対面ではなくオンラインでまず予約を取ろうとなっている中、まさかの時代に逆行。
そんなわけで今朝、夫とともに移民局へ。実は私達の住む県は比較的最近できた新しい県で、前はミラノ県の一部だったために5年前はミラノの移民局で手続きをしていたのだけれども、2年前からは県庁のあるモンツァになったということで今回初めてモンツァの移民局に来た。メールの通り開門の時間になると職員が現れて、まず今日の予約を持っている人々の名前が呼ばれ始めた。それが一段落したところで、職員に声をかけて用件を伝えてメールで送られた申請書を渡すと、「パスポートのすべてのページのコピーが必要」と言い出した。パスポートは持って来ていたけれどすべてのコピーはなかったので、近いコピー屋を探してコピーして戻って来ると、職員は書類を持って中へ。しばらくして、申請しました、という小さな紙をくれて「メールするから」と。バタバタした割には何だかなあ、メールなんていつ届くんだよ、と夫と帰りの車で話しながら帰宅。ところがびっくりなことに帰宅して1時間後に移民局からメールが来たのだ。しかも1ヶ月後に予約されたと。思ってたよりはやっ!っていうか本当に今日したこと、普通に予約システムが機能してたら5分で終わったのに。
そんなわけで、1ヶ月後に移民局へすべての書類を持って行ってまた前回のように現場待機で即日発行なのか、今回はしばらく待たされるのか。こっから先はまた謎だ。
先週自分と同じようにイタリア人の伴侶がいて20年くらい前に結婚した人にこの話をしたところ、なんとその人は結婚してすぐに無期限の滞在許可証を手にしたのだそうだ。もうひとりやはり10年以上前に結婚した人に同じ例の人がいて、これは年々色々厳しくなっているという意味なのか、たまたまそういうラッキーな人がいるのか、何かコネがあるのか。
違う国の出身の人と話していて、私が結婚しているのにまだ滞在許可証がどうのこうのと言うことに対してよく言われるのが「なんでイタリア国籍取らないわけ?」だ。これを言う人達は、多重国籍が認められている国の人達だ。私は日本かイタリアかどちらかしか選べないのだというと「あ、それ日本のままのがいいよ」と必ず言われる。イタリアの国籍を持たないことで普段の生活に困ることはない。選挙権がないというくらいだ。
そして毎回ドラマを生む滞在許可証の申請だけれども、実を言うと日常生活で使うことはほとんど皆無と言ってもいい。私には経験がないのだが、道を歩いていて警官に呼び止まれて提示を求められる場合がなくはないらしい。別の国へ行く時、日本に帰る時は必ずパスポートとともに滞在許可証は携帯する。ヨーロッパの別の国へ旅行に行くのに滞在許可証の提示を求められたことは今の所ない。ただ、日本へ帰る時に乗り換えで別の国を通る時、そして日本の空港でも大抵提示を求められる。普段イタリア内では、パスポートを携帯することもなく、身分証明書を持っている(これはイタリア人が使う身分証明と同じ見た目のものなのだが、彼らはそれでユーロ圏内を自由に移動できるのに対し、私のはイタリア国内のみ使える)。
ああ、どうか来月おかしなことは何も起きずに私は無事に滞在許可証を手にできますように。まずは今まだ足りてない書類を申請せねば!
もしも今後の為にと情報を探していてこの記事に行き着いてしまった方、何のお手伝いもできませんが、根気強く周りをどんどん巻き込んで、どんどん進めばいきなり思わぬところから助けが現れたりする、それがイタリア。大丈夫、ひとつずつクリアしていけば何とかなることのが多いです。わからないことは自分ひとりでなんとかしようとしない、それが重要。イタリア生活、頑張っていきましょう。
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