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就職の意思決定をSNSでする新卒候補者達

この時期になると毎年、次の年に入社してくる新卒採用の面接が怒涛のように行われる。私はシンガポールで現地採用、つまりこの地でキャリアの第一歩を始める日本人もしくは日本語スピーカーの採用を毎年担当している。

私が務める会社ではバイリンガルであり国際的なバックグラウンドを持つ新卒候補者を世界中から募集し採用している。実際に、面接をする生徒さんは世界中に散らばっていて、先週zoomを通じて会った生徒さんはハワイ、ロンドン、スイス、フランスの大学に在学中、と多岐に渡っており、世界各地から時差を物ともせず面接に臨んでくれる。

毎年たくさんの生徒さんと話しをする中でやはり自分が就職活動をしていた時と今の生徒さん達とは就職活動への取り組み方、人生においての仕事とはなんたるか、成功とは何なのか、どういうことを基準に仕事を選ぶのか、という感覚が刻々と変化していっているなと思うことが数多くある。

先週の面接でもそうだったが、まず情報収集にSNSが多用されている。それだけではなく、私が驚いたのはSNSで見聞きすることを元に実際に就職先や職種を決定する、ということ。

「シンガポールで生活し、仕事をするにあたって、この国のどんなこと知ってる?」「どうしてシンガポールで仕事したいと思ったんですか?」といった質問にはインスタで写真を見た、といった回答が多く返って来る。

「弊社に興味を持たれた理由は?」「弊社でどんなキャリアを築きたいと思っていますか?」には尊敬するインフルエンサーが働いていた、と。この会社で働けばそのインフルエンサーのような能力を身につけられるのではないか、と。

面接の場で堂々と将来はどうなるか、何をやりたいかわからないから、
様々な業種、様々な会社の面接を受けて自分に合いそうなところを選びます、と言われる…  ガツガツと競争していくようなカルチャーは合わないので、皆んなで仲良く協力して、チームワークを大切に楽しく仕事していけるような部署がいい、と言う生徒さんもいた。(これに関してはある意味では自己分析ができていて自分に合う環境合わない環境が分かっている、と言えるのかもしれない)

まず自己分析をしっかりする、応募する会社のことをしっかり調べる、あくまで面接の場では御社が第一志望だと言うべきなのでは?同期と切磋琢磨し、自己研磨していくことに達成感を持つべきなのでは?と目がキョトンとしてしまう私の感覚はもはや古いのか…  返答に窮してしまう面接官がここに…

ここで、「これだから最近の若者は!」という思考になって終わらせてはいけないなと自戒を込めて来週からのさらなる面接にどう挑もうかと考える。

情報の流れや人の感覚、意思決定に影響する要素というのは常に変化している。であれば、面接するこちら側もその感覚をどんどん更新していかなければならない。通り一遍の質問ではなく、もっと踏み込んで候補者のモチベーションや強みを理解する質問をする。もっと言えば入社面接のやり方も変化させなければいけない、と強く感じる。

従来の一対一で質疑応答する方法だけでは候補者と面接官側の”感覚の溝”が原因となり候補者の本当にスキルや将来性を評価できない。であれば、質疑応答の他に、生徒間でグループになってディベートをさせるとか、グループワークで問題解決をさせるとか、顧客や社内関係者との会話を想定したロールプレイをさせるなど、面接もワークショップ型にした方が良いのではないだろうか?また、もっとインターンシップ後の採用枠をあげるというのも会社と本当にフィットする人材を採用するのには有効なのではないだろうか。もっと掘り下げれば、将来会社に入ってくれる優秀な生徒さん達に遡求できる、リーチできるチャンネルというのを開拓しなければならない。今現在弊社で働いている社員こそがインフルエンサーとして知られるようににならねばならないのかもしれない。

そして新卒候補者の皆さんにはぜひ面接官との溝を埋めるための一助として、面接官はインスタグラムのアカウントすら持っていないひと昔前の人間なのかもしれない、という可能性も念頭に置いて面接に挑んでいただきたい。





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