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ストレンジャーシングス S1/S2

大好きなドラマ「ストレンジャーシングス」S3配信が始まり、鑑賞後の興奮も冷めやらぬ内に勢いで以前(2017年12月)ブログに書いたS1と2の感想などをアップしました。

ストレンジャー・シングス(ネタバレしてます)その1
呆れたことに、前回のブログ更新から既に2ヶ月が経とうとしている。その間相変わらずの日常生活を過ごしており、食べて寝て起きて仕事に行き、料理を作っては食べて寝て起きて仕事に行く、の繰り返しの中、私の心の非常に大きな面積を占めていたのが「ストレンジャー・シングス」だった。
Netflixのオリジナルドラマで、現在シーズン2まで配信されている。去年シーズン1を観てハマり、夢中になったときの私の悪い癖で、その後しばらくはどのドラマも映画も楽しめなかった。これが何とも辛く、まるで片思いの恋心を吹っ切るような覚悟で、Netflixの契約そのものを切ってしまったクセに、時々予告動画を覗き観に行っては、また思いを募らせるという執着ぶりだった。
そんな私の熱い思いが通じたのか(違う)今年の10月からシーズン2が配信されたのだから、再契約せずにすむわけがない。その後の約2ヶ月間、シーズン1と2を何度繰り返して観たことか。そもそもシーズン1は、ストーリー的にシーズン2への長い長い導入部でしかない。2と続けて観て、やっとひとつの物語の形と成る。そしてその物語が、とてつもなく面白いのである。

舞台はアメリカ中西部・インディアナ州にある架空の小さな町。時代は1980年代。このちょっと地味めな舞台・時代設定だけでも「あの」S・キングの小説を彷彿とさせるが、主人公が12歳くらいの少年たちとくればもう「スタンド・バイ・ミー」や「IT」を思い出さないわけにはいかないだろう。しかし私が評価しているのは(偉そう)、このドラマの登場人物たちの多彩なキャラクター設定が徹底していて、ベタでステレオタイプでありながらも親近感が湧き、好きにならずにはいられないところだ。とにかく大人も子供もバランスが良く、魅力的で、生き生きとしている。

このドラマで話題になったことのひとつに、ウィノナ・ライダーの起用もあったという。ドラマを観る前は「まあ確かにビッグネームの女優さんだから」くらいにしか感じなかったが、彼女は本当に本当に、素晴らしかった。むしろ若い頃はどことなくヨーロッパ(東欧)風の絶世の美少女だったから、役者としては損をしていたのではないかとさえ思えてくる。
ドラマのウィノナは12歳と16歳のふたりの男の子の母親役で、小柄でスレンダーなスタイルも年相応に崩れ、役柄上髪はボサボサで化粧っ気もなく、大きな瞳は子供を愛するあまりギラギラと狂おしく光っているのだ。その後ドラマの打ち上げか何かのパーティーでは、相変わらずの美貌とスレンダーボディだったから、女優さんというのは本当にスゴイ!と感心してしまった。

どこかの記事で読んだが、このドラマの製作者であるザ・ダファー・ブラザーズが制作会社に売り込みをしていた時、ほぼ全ての会社で「保安官を主人公にして大人向けドラマにするなら(買っても)いい」と言われたらしい。このままでいい、と買ってくれたのがNetflixだけだったのだとか。有難いではないか。おかげでこんな面白いドラマを観ることができるのだから。


ストレンジャー・シングス(ネタバレしてます)その2
ストレンジャー・シングスのシーズン1は、ウィル・バイヤーズという12歳の少年の失踪が発端となって始まり、その帰還で一旦幕を閉じる。ウィルは異世界に連れ去られてしまったのだが、全く痕跡を残さない失踪の様子は「神隠し」という表現が最も近いように感じた。
ウィルの親友、3人の少年たちはウィルを探すうちに不思議な少女「イレヴン」と出会う。町はずれの森に建てられた「研究所」で、生まれた時から超能力者として育てられてきた少女で、実は彼女が能力のコントロールを失い、異世界へのゲートを開いてしまったため、ウィルの失踪を始めとする異変が広がりつつあったのだ。
研究所から逃げ出したイレヴンを取り戻そうとする研究者たち、イレヴンを匿いながらウィルを救おうとする少年たち、一途に我が子の生存を信じ、探し求める母ジョイス。ジョイスのあまりの頑なさに、最初は同情から付き合うが、最後には真実に最も近づく保安官。ウィルの兄ジョナサンとウィルの親友マイクの姉ナンシーもまた、独自のアプローチで真実に近づこうとしていた。
私は映画にしろ小説にしろ、全く別々に展開されていたサイドストーリーズが、最後に一気にまとまる話にただでさえ目がない。しかもそのサイドストーリーズには無駄がなく、互いに齟齬を生じることもなく、それどころか結果的に互いに不足していた情報を補完し合い、完璧なストーリーを構築しているのだ。なんともワクワクが止まらない。
しかしシーズン1はここまで。この後シーズン2の配信を、一日千秋の思いで待ったのだった。

ストレンジャー・シングス(ネタバレしてます)その3
前回シーズン1について書いたのだから、次はシーズン2について書くべきかもしれないが、それよりも今回はドラマの登場人物たちについての感想をまとめてみたい。

まずは仲良し4人組の少年たち。シーズン1の第一話で失踪するウィルは小柄で大きな瞳が印象的。ウィノナ演ずるジョイスの息子で、本当の親子のように似ている。優しくて大人しいが賢く、「隠れる」のが得意。そのおかげで異世界で生き延びることができた。
仲間が集まる地下室にイレヴンを匿うことになるマイク。寝室とは別に趣味の部屋として地下室があるって・・・裕福そう。消えた親友を見つけるため、イレヴンを助けるため、全力で立ち向かう。ウィルと入れ代わりのように姿を消したイレヴンに向かい、一年もの間トランシーバーで呼びかけ続けるというロマンチスト。「イレヴン」を短くして「エル」と呼んだのもマイク。イレヴンが姉ナンシーのお下がりのワンピースを着て、ブロンドのヘアウィッグを着けた時、素直にprettyと言えずpretty goodと言ってしまう照れ屋さん(「pretty good」だと「まあまあ」という意味になる)
シーズン2ではとんでもないペットを拾い、育ててしまうダスティン。クルクルカーリーヘアと前歯がチャームポイント。フェア精神の持ち主で行動力があるが口が悪い。
武闘派で勇敢だが、おしゃまな妹にいつもやられっぱなしのルーカス。最初の頃はイレヴンの持つ能力を恐れ、彼女をあっさり受け入れたマイクと気まずくなる。
この4人の少年に共通しているのが、息子を溺愛している母たち。ハロウィーンの仮装をした息子、学校のダンスパーティに出かける前の息子を、各母親が激写するシーンには笑った。それぞれの息子の反応もお約束で、ルーカスは妹にダメ出しされながら、マイクは「もういいでしょ?」と仏頂面である。ママの気が済むまで撮らせてあげるダスティンは器が大きいなぁ。あ、ウィルのうちでは兄のジョナサンがカメラ小僧なので、お兄さんに撮られているんだった。
個人的にマイクの母親が興味深い。若くて色っぽくてセレブ感が漂うが、嫌味でないところがスゴイと思う。マイクには高校生の姉ナンシーとまだ3歳くらいの赤ちゃんの妹がいて、お母さんはいつも赤ちゃんを片手で抱いている。年頃のナンシーには厳しいが、マイクや妹には優しい感じ。かなり年上の旦那には少し物足りなさを感じているようだ。

保安官のジム・ホッパーのキャラクターも大好きだ。表向きは粗野で強面で不器用、無愛想。幼い一人娘を病気で亡くして妻とは離婚、薬とアルコールと仕事だけが彼を現実に繋ぎ止めている。そんな危ういところで踏みとどまっている男だが、警官としての勘が鋭く分析力にも優れている。この物語には欠かせない人物だ。
ウィルの母ジョイスとは高校生の頃付き合っていたとかいないとか。でも今はジョイスにとっては頼れる友人という存在のようだ。
私は警察署の受付にいるおばちゃんのファンである。無言でホッパーの咥えたばこをもぎ取って、甘いドーナツの代わりにりんごを手渡す。ホッパーの体を気遣っているのである。ホッパーが出口に向かって歩き出せば、顔も見ずにスッと車のキーを手渡す。彼女がいなかったら、ホッパーは何もできないんじゃなかろうか。

マイクの姉のナンシーとボーイフレンドのスティーヴ、ウィルの兄ジョナサンはこのドラマのティーンエイジャー・チームとでもいうか、ナンシーは優等生だがスティーヴは絵に描いたような軽薄男で、ジョナサンは根暗っぽくてナンシーに憧れているという、要するにどこにでもある三角関係の展開で、正直ここだけはつまらないと感じていた。
ストーリーが進むにつれ、重大な事件がここで発生するのでしかたないと思うようになったが、とにかくスティーヴの付き合っている仲間がクズ過ぎて、胸が悪くなる。たとえスティーヴ本人が本当は良いヤツだったとしたってあり得ない。付き合う友人は選ばなくちゃね。

マイクたちの学校の先生もいいキャラをしている。先生は単純に生徒たちの好奇心や疑問に答えているだけのつもりだろうが、実はとても多くのヒントを与えて少年たちの力になってくれている。こんな良い先生に恵まれたら、子どもは幸せだろうと思う。

メイン中のメインの登場人物イレヴンは、次回に。

ストレンジャー・シングス(ネタバレしてます)その4
ドラマの主人公、「エル」ことイレヴンについて。
イレヴンは生まれてすぐに母親から奪われ、対共産国の兵器としての超能力者となるよう、研究所で育てられる。研究所の所長を「パパ」と呼び、年頃の女の子らしい生活とは全く無縁だった。「イレヴン」も名前ではなく、手首に刺青された「011」のナンバーが元になっている。脳波測定がしやすいように髪は丸刈り、手首にはナンバーを刺青されたまだ幼い少女。しかしイレヴンの持つ能力は、とてつもなく強大だった。ふたつの世界の境界線を壊してしまうほどに。
マイクたちと森で出会うまで、友だちから名前で呼びかけられることも、友だちとの約束は必ず守るということも、友だちに嘘をつくのは悪いことだということも、ワッフルが美味しいことも知らなかった。それでもほんの数日間の体験から、イレヴンは多くを学んだ。友だちを守るためなら、我が身を犠牲にすることさえ躊躇わない心を。一度知ってしまったら忘れられない、人としての感情を。

このイレヴンという少女は、出自の設定上(シーズン1では特に)セリフがほとんど無い。最初は皆、口がきけないのではと疑うほど話をしない。話ができないのだ。英語が話せない外国人のように、つたない単語を発するだけだ。目と表情、声のトーン、ちょっとした仕草や息遣いだけでイレヴンの孤独や悲しみを表現した、この小さな女優のなんと素晴らしいことか。彼女が親鳥を慕う雛のように、マイクの名を呼び続けるシーンには本当に心を打たれた。

イレヴンの持つ超能力について、またその境遇の設定については、かつて本当にアメリカで行われていた洗脳実験「MKウルトラ計画」を知らない方には、荒唐無稽な絵空事と映るかもしれない。ドラマの中でも一回だけ、さり気なくそのコードネームが出てくるシーンがある。
私自身さすがにリアルタイムで知っていたわけではないが、わりと好みのドラマや映画、小説のベースになっていたりすることが多く、以前からネットや本で調べて知っていた。知れば知るほど闇は深く、恐ろしい計画である。

その後のストレンジャー・シングス(ネタバレなし)
以前このドラマについて日記に書いたが、その際あたかも「MKウルトラ計画」をベースに作られたかのような書き方をしてしまった。しかしつい最近、製作のザ・ダファー・ブラザーズがインタビューで「モントークプロジェクト」からヒントを得た、と語っている記事を読んだ。「MKウルトラ計画」の名称が出てきたから、という理由だけで飛びついてしまい、お恥ずかしい限りである。
「モントークプロジェクト」について少し調べてみると、「MKウルトラ計画」に負けず劣らずトンデモなプロジェクトだったようで、どこまでが真実なのかどこからが似非なのか、なんとも判別がつき辛い。関連記事を読む限り、かなり多くの部分が偶然に頼った実験だったような印象を受けた。
やはりタイムワープ、テレポート、マインドコントロールといった、SFゴコロがくすぐられるようなキーワードがあちこちに散りばめられているのは変わらない。もう少し調べてみてからドラマを観返したら、また新たな発見があるのかもしれない(まだ観るか)

ところでザ・ダファー・ブラザーズが、「ストレンジャー・シングス」の前に「HIDDEN」という映画を製作した、という記事を読んだ時、え、あのカイル・マクラクランの?と一瞬思ってしまった私(汗)ダファー・ブラザーズは私よりうんと若いのに。
ザ・ダファー・ブラザーズの「HIDDEN」は2012年に公開されたホラー映画(未見)だが、古い方の「HIDDEN」は1987年公開の、SFアクション映画だ。私は一時この映画にハマっていて、あまり何度も観たからセリフまで覚えてしまったほどだ。ストーリーは単純明快、テンポが良くわかり易くてB級映画のお手本のような作品だ。
数年前に「デューン/砂の惑星」に出ていたカイル・マクラクランは、未だ無名に近い存在だったが、この後「ツイン・ピークス」で一躍ビッグネームとなる。青年の一歩手前と言っていいくらい若く、役のせいもあるが、いたいけな少年のような揺れる眼差しが印象的だったなぁ。

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