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アキヤマフルート頭部管

先月リリースした、私の5年ぶり5枚目のアルバム「fifth season」。
色々なチャレンジや変化が詰め込まれていますが、1つ今までのアルバムと大きく違うのが、楽器の「ある部分」です。
フルートの「頭部管」が今までと変わり、求める音・イメージする音が変わり、そしてレコーディングで助けられました。
そんな、アキヤマフルートの頭部管について。

アキヤマフルートとは

公式ウェブサイトをご覧いただくと「唯一無二の手巻き管フルート」と書いてあります。
アキヤマフルートは、社長で職人の秋山 好輝さんがお一人でフルート(最近では能管など日本の笛も!)を作っていらっしゃいます。
メインは19世紀の銀食器を使い、巻き管という手法で作られたフルート。
工房には銀のお盆やスプーン、フォークなどが材料として積まれています。
19世紀の銀食器は、現代の銀にはない不純物などの配合で、独特の響きがするとか・・・。そして巻き管という手法は豊かな倍音を生み出すそうです。

アキヤマフルートとの出会い

私は長年、ムラマツフルートを吹いています。
フルートを習い始めた時に買ってもらった最初のヤマハのスチューデントモデルから、当時の師匠も使っていた憧れのムラマツフルートの総銀製へ。
両親に買ってもらって以来、とても自分にもしっくり来る感じで長年吹いてきました。
凛とした輪郭のある音、パワフルに吹ける音が気に入っていて、私の見た目とのギャップで「力強い音」と言われるのも嬉しかったり。
そんな中、近年、年齢を重ねて大人になったこともあり・・・少ーしずつ、音の好みに変化が表れてきたのです。
その中でも運命のような流れが2つ。
フルート奏者の西田紀子さんとの出会い。お名前は存じ上げておりましたが、2年前の春、初めてその音を生で聴いて、柔らかな音、力みのない自由な音、草原を思わせるようなフルートに惹かれました。
そんな西田さんとの出会いはこちらのYoutubeにて・・・!(目次で20分40秒「西田さんとの出会い」トークに飛んでいただけます)

その時をほぼ同じくして・・・色々な流れがあってピッコロの修理でアキヤマフルートにたどり着きます。
修理をお願いするのに初めて訪れた際、ついでに自分のムラマツフルートの調整もお願いして、その場で調整して下さっている間に、アキヤマフルートを吹かせていただきました。秋山さんにも、その場にいらしゃったお客様にも、「吹いちゃうと戻れないよ」「沼だよ(笑)」と言われながら・・・

人によっては鳴らすのが難しいというアキヤマフルートなのですが、ふわーーん。と1音目から心地よく吹けちゃいまして。なんだか遠くに響く音。オクターブの跳躍が楽々な感じ。「おー。。。(ドキドキ・・・)」
そんな出会いでした。

フルートリペア入門

その時に調整していただいたムラマツフルートがとても調子が良く。パッドのフィット感が何とも吹きやすくて!調整はムラマツではなくアキヤマフルートを頼るようになりました。

そしてアキヤマフルートのFacebookページにて、リペア(調整やオーバーホール)を習っている人達の写真があり、私もやりたい!!と門を叩きました。
長年フルートをやっているのに、楽器の構造について全然知らないで吹いていることが気になっていたし、中高生に部活で教えるようになり、故障があってもすぐに楽器屋さんに行けないことも多いので、小さな故障を直してあげられたらいいな、と思ったのです。もちろん、自分の楽器も。

リペアの勉強は楽しく、職人秋山さんから見たら、フルート吹いているなら当たり前、と思われるようなことも私は知らなくて1つ1つ勉強になりました。月1回くらい通わせていただいて、一応3本くらいオーバーホールも一通り終わって(かなり師匠に修正してもらったり手を貸していただきましたが)、先日は生徒の楽器のちょっとしたトラブルもレッスン中に直したりできるようになりました。

そんな中で、昨年の秋。秋山さんに修理を教わりながら、「2週間後にレコーディングがあるんです。」
(※アルバム「fifth season」収録の「花びらが溶けるように」を1年前の秋に先行レコーディングしました。その時です)
と話したら、頭部管を貸してくださいました。
フルートは3つのパーツに分かれていて、上から頭部管・胴部管・足部管となっています。歌口のある場所、一番音色に関わる部分が頭部管となります。

「もう返せなくなると思うけど(ニヤリ)」と言われつつ・・・

借りた日の写真。(リペア修行の写真と持っているのは頭部管ケース)

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1年前のレコーディングとそれから

借りたての頭部管を今までのムラマツの胴部管・足部管に付けて吹き始めました。最初は音自体には大きな変化を感じず・・・
ただ、最初にアキヤマを吹かせていただいた時と同じで、遠くで響く感じ・オクターブや倍音構成音の跳躍が楽・・・そんな感覚でした。

2週間後レコーディングで音を録ってみても、ふむふむ、私の音。っていう感じで、変化に気づかず。
ところが・・・時間が少し余ったので、念のため今までのムラマツでも録ってみたところ・・・「えー!全然違う!」というくらい違いがあってビックリ。エンジニアさんもビックリでした。
後から録ったムラマツのほうがエッジが強く、先に録ったアキヤマは倍音が広がるような、何とも優しい音がしていたのです・・・
(その時のブログはこちら

そこからそのまま・・・「ね、返せないでしょ、いいよ。頭部管いっぱいあるし」と言っていただき、借りっぱなしに。
ライブやYoutubeで「借りものなんです・・・いつか、いつか自分のものに!」と話しつつ、吹かせていただいた1年間。
鳴らしどころ・響かせ方も自然と体が覚え、頭部管のほうも私の音にエージングされてきたような。
とはいえ、最初は良いことばかりではなく(笑)
体調が悪いと、音も悪いんです・・・!
それを秋山さんに言ったら、「そうだよ、うちのは風邪の時は風邪の音がするんだよ」って。
力技が効かない・誤魔化しが効かないんですね。
でもその難しい部分と向き合い、脱力というか、柔らかな鳴らし方をこの1年で徐々に体得できた気がします。まさに楽器に育ててもらえました。

ちょうど1年後のアルバムレコーディング

頭部管をお借りしてちょうど1年。
アルバム「fifth season」のレコーディングが始まりました。
先に書いた、近年の私の好みの変化にこの頭部管との出会いがあり、私の音は柔らかく自然な(力みのない)音を求めるようになりました。
アルバムレコーディングの打ち合わせで、長年お願いしているレコーディングエンジニアの水谷勇紀さん(クラッキス・イレブン)もそういった点をすぐに理解してくださり、是非ビンテージマイクで録りましょう!
とスタジオを手配してくださいました。

レコーディング初日。この日の様子はこちらのブログに書いたのですが、初めてのピッコロレコーディングで予想以上に苦戦、時間を取られてしまった後のフルートレコーディング。
ほぼワンテイクでOK!のような状態だったのは「鏡の森」でしたが、この日録った「藍の空」と「鏡の森」の2曲はアキヤマフルート頭部管とビンテージマイク Neumann U47 (値段は言えないくらいらしい!?)に助けられたとひしひしと感じました。
今までだったら100のパワーで表現しなくてはいけなかったものが10で表現できるような・・・!
それは決して手を抜くという意味ではなく、無理なく、頭にイメージした表現・繊細な表現をそのまま録音に残せる・・・そんな感覚でした。

この他の曲はスタジオが変わり、マイクはTELEFUNKEN U-47という(こちらもビンテージマイク)に変わりましたが、初日が100→10だとしたら、100→15くらいかな?Neumann U47よりは少しだけ大きめに表現したほうが良い感じはしましたが、アキヤマ頭部管により、今までの感覚とは大きな違いを感じながらのレコーディングとなりました。

CD「fifth season」

最終的に「fifth season」のCDはボーナストラックの自宅スタジオで録った「いつもともに」を入れると、3つの時期、4種類のマイクで録ったことになります。
「花びらが溶けるように」と「いつもともに」は現代のマイク、それ以外はビンテージマイク。
そして全曲、頭部管はアキヤマフルート。
ミックスやマスタリングの工程で、それぞれの曲のイメージが大きく変わらないようにエンジニアさんが最終調整して下さっているので、はっきりとはわかるものではないと思いますが、これを読んでいただいて、そんな視点で聴いていただくのも面白いかもしれません。
また、1枚目~4枚目のアルバムの音と聴き比べていただくと、今回の私が目指す音の方向の変化、そしてアキヤマフルート頭部管の音を感じていただけるかもしれません。

そして、ついに。

ここまできて、というかすでにYoutubeやライブで「借り物なのです」と言っている段階で、「頭部管くらい買っちゃえばいいじゃん!」って思われた方々も多かったと思います(笑)
アキヤマフルートの公式サイトに価格表があるので、書いちゃいますが、お借りしている19世紀銀食器の巻き管の頭部管・・・・・・36万円なんです。
ちゃんとしたそこそこのフルート1本買えちゃうお値段で。
なかなか思い切れず、いつか・・・印税が入ったら、アルバムが売れたら(笑)なんて思ってきました。
でも、今回のアルバムレコーディングでの体験、その素晴らしさは代えがたく・・・ついに購入を決意しました!

まずは半分くらいですが・・・(笑)
本日、ついに自分のものになりましたっ!

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借り物の時はムラマツとのジョイント部分は仮で調整していたのですが、しっかりと合わせていただき♪
ヘッドコルクも交換、そしてクラウン(一番上のキャップみたいなところ)を4g重いものに・・・というマイナーチェンジを。
これが・・・意外なほどに吹奏感が変わるのです。元が繊細なアキヤマの頭部管だからこその変化らしいのですが、びっくり。
ちょっと吹奏感が重くなった分、高音の密度が高くなったような吹きやすさがありました。不思議です。

これから改めて、この頭部管と共に精進していきたいと思います。
何よりこの頭部管の良さは生で聴いていただきたい!
早く色々な場所で、生演奏できるようになりますように・・・
その時は是非聴きにきてくださいね!

すっかりアキヤマフルート宣伝隊☆
少しオマケしてくれないかな~(笑)

次は胴部管・足部管も欲しくなってしまうのだろうか・・・

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作曲家・フルート奏者。 作品についてなど、ブログには長文かなぁと思うようなことをこちらに書きたいと思っています。