「fifth season」セルフライナーノーツ
2020年11月15日に発売した、伊藤麻子の5年ぶり5枚目のアルバム「fifth season」。各曲についてご紹介します。
「fifith season」。四季がある場所での「5番目の季節」、、、どんな季節でしょう。
思いもせず世界が大きく変わった今年。
私たちが過ごしている日々は「新しい季節」なのかもしれませんね。
離れていても心と心がつながるメロディ。
新しい季節への希望を、明日へつながる安らぎを、感じていただけたらと思います。
試聴動画
1. 藍の空
いつからか暮れ行く空の、西に少しだけ太陽の気配を残した、夕方と夜の間くらいの空が好きです。
少しだけ黄色味をおびた深い青は、まさに日本の藍染の「藍色」だなぁと思います。
そんな藍色の空をイメージした曲です。
ピアノは宮川直巳さん。フルートとピアノのみのデュオ編成でこのアルバムは始まります。
実はこの曲、初演のピアノは私が尊敬し憧れ続けるミュージシャン、川村結花さんとのデュオでした。2017年の私のCDデビュー10周年ライブにゲストをお願いし、その時に新曲として作り、共演いただきました。
宮川くんのピアノには、その初演の川村さんのテイストがほのかに感じられます。初演を尊重してくれた演奏、そしてじわじわと藍色を帯びていくような素晴らしい演奏に感謝です。
2. 扉
「扉」って色々想像力が膨らみませんか?
入口かもしれないし、出口かもしれない。その先に何があるのかなぁと…
私はこの「扉」、海外配信のために英語タイトルを考えたとき、迷わず「Doors」と複数形でした。
たくさん扉がある中で、自分で選択して進んでゆく。出口かもしれない、入口かもしれない。何となく人生みたいかな・・・
この曲はアルバムに入れよう!と思った時には、「木管五重奏だ」と思っていました。でもイントロは絶対にグロッケンだったので、木管五重奏+打楽器のアレンジ。初めて木管五重奏アレンジをするに当たり、参考書を眺めつつ、慣れない移調楽器の楽譜を作りつつ…頑張りました。
今回この「扉」を奏でて下さったのは、クラシック界のトッププレイヤーの皆さま。
木管五重奏に最上峰行さん(オーボエ)、渡邊一毅さん(クラリネット)、岸上穣さん(ホルン)、前関祐紀さん(ファゴット)、
そして打楽器に服部恵さん。
初めてのアレンジで至らぬところもあったかと思いますが、美しく、かつ木管五重奏らしい温かみと抒情的な雰囲気を表現してくださいました。
3. 花びらが溶けるように
私の曲は、曲の漠然としたイメージや景色が作曲時から見えているものの、タイトルは後から付けることが多く、ライブで「新曲」として発表して、後からタイトルが決まることも何度かありました。
しかし、こちらはタイトルから決めて作った曲。
「花びらが溶けるように」は昔一緒に活動していた作詞家の友人に私の曲に書いてもらった詞の一節です。しかも歌ではなく曲間の”つぶやき”のような部分にお願いしたものでした。
作詞してもらってから十数年経った今、急にこの言葉で曲を書きたくなったのです。
薄い淡い色の花びらが水面に溶けていくような・・・そんな風景は私に3種類の違ったモチーフを書かせ、、、3番目にできたのが、この曲として完成形に至りました。(なので「花びらが溶けるように」になり切れなかった曲?が2曲)
作曲時には1人の無伴奏でも、デュオでもトリオ編成でも、、、演奏できる曲を想定しながら作りました。
そして一番「花びらが溶けるように」と感じたのがアルバムの編成です。
ピアノ:宮川直巳 ヴァイオリン:小夜子
4. 海沿いの雲みたいに
1つ前の「花びらが溶けるように」と同じ、昔書いてもらった歌詞(つぶやき)からの1節でもう1曲。と思って作ったのがこの曲です。
他にも「天空の雪のように」や「水滴が凍るように」などがあり、、、
いずれ作って組曲みたいにしたいなと思っています。
「海沿いの雲」というと、夏だったら入道雲でしょうか。きっと季節によって全然違う雲が流れているでしょうね。
最初からギター伴奏の曲として作り、ライブ初演、そしてレコーディングも越田太郎丸さんにお願いすることができました。
太郎丸さんが使っていらっしゃるのはフラメンコギター。
素晴らしく美しい音色、そして大人!な間奏ソロなどは、この曲の世界観をぐーーんと広げてくれたように思います。
パーカッション:井谷享志
5. 旅するペンギン
2018年12月東京、2019年8月長岡にて行われた写真家ハラサトコさんの「ペンギン写真展」にてコラボライブをさせていただき、サトコさんのペンギン写真からイメージして作ったのが「旅するペンギン」です。
ハラサトコさんには同2018年、2019年にアーティスト写真を撮っていただき、そして今回初めてアルバムのジャケ写も撮っていただきました!
そんなご縁のサトコさんのペンギン写真はかわいくて、面白くて、まるで物語のようで。水族館で撮られた写真でしたが、世界中を旅しているペンギンが思い浮かんでこの曲になりました。
ペンギンの動きやイメージから、これはピッコロだな・・・と思いながら作曲。正直、ピッコロ演奏はあまり得意ではないのですが・・・初めてレコーディングに挑みました!
2曲目「扉」でクラシカルなパーカッションを奏でて下さった服部恵さんが一転、ポップでキュートなカホンを中心としたパーカッションを演奏してくださっています♪
E.ピアノ:宮川直巳
6. 春近し
確か2016年のお正月、曲の「書初め」として作った曲だったと思います。
他の曲のエピソードでもよく話すのですが、私は寒いのが苦手で、冬は気が滅入りがちです。さらに、お正月が何となく苦手・・・
世の中がお祝いモードで賑やかで前向きで、、、ちょっと心がついていかない感じなのです。
そんな時にある年賀状に「迎春」でも「新春」でもなく「春近し」。
あぁ素敵な言葉があるなぁと思い、そのまま書初め曲に反映されました。
ピアノに宮川直巳さん、ヴァイオリンに柴田奈穂さん、ベース河野岳美さん、パーカッション井谷享志さんという前作アルバムでも、そして3年前の10周年記念ライブ バンド編でも演奏いただいたメンバーで、その10周年記念ライブの演奏が気に入っていたので、それをベースに作り上げていきました。
7. 鏡の森
アルバムで初めて発表、レコーディングが初演となった新曲です。
実はある歌手の方のコンペ用に書いた曲だったのですが、、、どう考えても自分っぽい・・・これはもう伊藤麻子のアルバムに入れるしかない!
と思ってしまい、自分の曲にしました。
私が作る曲のいくつかに共通して繋がっている「森」の景色・・・
自分の中で今まで「森三部作」と呼んでいるものがあったのですが、こちらは4番目。四部作になりました。
(ちなみに1番目はCDなどに入っていない、近年のライブでは1回だけ演奏した曲です)
5拍子と6拍子が少し混ざるのですが、そこが特に「鏡」っぽいかなと思っている部分。拍子が変わりますが、ごく自然に聴いてもらえるのではないかと思っています。
ピアノ:宮川直巳
8. Bouquet
2017年の伊藤麻子CDデビュー10周年ライブ バンド編の際に、この10年ライブに来てくださったり、CDで私の音楽を聴いて来てくださった方、応援してくださった皆様に感謝の花束を・・・そう思って作った曲です。
今年で13年。今回は5年ぶりと間が開いてしまいましたが、こうして5枚目のアルバムを出すことができたのも、新作を聴きたいと、楽しみしてくださった皆様がいてくださったから。
2020年、思わぬコロナで大変な年となりましたが、頑張ることができました。本当にありがとうございます。
ライブでは是非一緒に手拍子をしてほしい曲。
またライブでこの曲で「ありがとう」を伝えられる日が来ますように。
ピアノ・E.ピアノ:宮川直巳 ヴァイオリン:柴田奈穂
ベース:河野岳美 パーカッション:井谷享志
CDにはボーナストラックとして「いつもともに」を収録。
こちらのアートにエールを!のために書いた曲をアルバム用にきちんとミックスし直してもらったバージョンです。
この曲もBouquetと同じ、私の音楽を聴いてくれる皆さんへの「ありがとう」の曲です。
CD・配信情報
5番目の季節が生まれる。今までとは違う新しい季節が。
離れていても心と心がつながるフルートのメロディ
伊藤麻子 5年ぶり、5枚目のアルバム「fifth season」
オリジナルインスト9曲(配信アルバムは8曲)収録
CD通販
配信(ダウンロード、ハイレゾDL、サブスク)各社リンク集
全作曲・編曲:伊藤麻子
■■■ 参加ミュージシャン ■■■
宮川直巳(ピアノ)/柴田奈穂(ヴァイオリン)/小夜子(ヴァイオリン)
越田太郎丸(ギター)/河野岳美(ベース)
井谷享志(パーカッション)/服部恵(パーカッション)
最上峰行(オーボエ)/渡邊一毅(クラリネット)
岸上穣(ホルン)/前関祐紀(ファゴット)
■■■ その他制作データ ■■■
Produced by 伊藤 麻子
Recorded, Mixed & Mastered by 水谷 勇紀 (クラッキスイレブン)
Assisted by 草薙 美稲(TSUBASA Studio)
Recorded at Volta Studio, TSUBASA Studio, Studio Leda,
NA4 Studio (BONUS TRACK)
Mixed & Mastered at Studio Leda
Design:西村 克哉
Photography:ハラ サトコ
Photo’s Location : SOY !
Copy writing:伊藤 恭正(RISE RING)
♪「fifth season」サポーターの皆様♪
たくさんの応援をありがとうございました!
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