見出し画像

「六人の嘘つきな大学生」を読んで10年前の就職活動を思い出した

最近はもっぱら育児と家事の合間を読書に充てて現実逃避を楽しんでいる。ただ、時間を決めていて、睡眠を惜しんでまで読みふけるということはしないようにしている。なぜなら、翌日のパフォーマンスに影響するからだ。

でも、今回読んだ一冊は、久々に寝ることも忘れて没頭してしまった。朝倉秋成さん作の、『六人の嘘つきな大学生』である。

結局一晩で読みきらないと気が済まなくなってしまい、就寝時間を大幅に過ぎて深夜になってしまったけれど、読後があまりにすっきりしていたので爽快に寝付くことができ、寝起きも素晴らしかった◎ありがたや。

ミステリーは読むとハラハラドキドキして体力使うのでしばらく読んでいなかった(どれだけ体力ないんだ)。そんなわたしがこの本を手に取ったきっかけは、学生時代お世話になった先輩がこの本の制作に関わっていることをSNSで知ったことだった。「就職活動」「グループディスカッション」といったキーワードになつかしさを覚え、ふと手に取ってしまった(kindle上ではあるが)。

この本では、ミステリーとして最っっ高におもしろいことはもちろんのこと、日本のおかしな就職活動(中でも新卒一括採用)に対する著者の思いが込められている。

舞台は2011年の就職活動――この時代設定はドンピシャで自分の世代である(著者の朝倉氏のプロフィールをみたところ、なんと同学年の方だった)。

何を書いてもネタバレになってしまう気がするので内容については記載を避けるが、本を読み進めながら、就活生だったときの異常性をありありと思い出すことができた。

ちょうど10年前のことである。大学入学と同時にサークル活動に没頭していたわたしであったが、ちらほら同学年の友人たちがスーツに身を包むようになったのが大学3年生の秋頃だっただろうか。夏時点でインターンから内々定を手にするような猛者もいた。

わたしはサークル活動が多忙を極めていたので、色々と提出書類が横展開できそうな金融業界を中心に、説明会を回ったり先輩の話を聞きに行ったりした。その一環で、「●●社の元役員を紹介するよ」なんて言われて年配のOBにオトナなお店に連れていかれたりしたな…就活ハラスメントなんて言葉が近年取りざたされていたけど、今思うと割と自分も渦中にいたのかもしれない(当時は必死だったので鈍感だったなと反省)。

若干当時のファイルが残っているが、「自己分析」を通してできあがった塗り固められた自己PR、友達3人くらいで取り組んだウェブテスト(時期になると、大学構内には複数人でPCに向かってウェブテストに取り組む学生がわんさかいたな…)、OB・OGへのインタビュー、びっしり会社情報について書きこまれた就活メモ…。今振り返ると、「その活動で自分の・会社の何がわかったんだろう」と思う。

自分のことも、他人のことも、会社のことも、自分が見えてると思っているのは本当にごく一部に過ぎない。SNSやネットニュースを見ると、誇張や断定的な表現が躍るこの世界の中で、忘れかけていた大事なことを思い出させてくれる一作だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?