この上なく惨めな夜⑤完結

一杯ずつ飲んで、食事を平らげたとき、みんながなんだかとても満たされた顔をしていた。
おいしい料理は偉大だ。
「次どこいく?」
鶴の一声。池田が言うと、満場一致で15時から開いている駅前の居酒屋へ、飲み直しに行くことになった。
絵梨花は毒気を抜かれたようで静かについてきた。一つには、あたしと加本さんが付き合ってないことがわかったからだ。また、デートでなく三人でご飯を食べていただけとの理解ができ、重要なのが、自分が加本さんから避けられているわけじゃないということが分かったということだろう。
四人でぞろぞろ歩いた。私は池田の隣。加本さんの隣は絵梨花に譲ってやった。けど、二人は特に何か話すこともなく黙って歩いていた。

18時45分。
待ち合わせは19時だから、早く来すぎたかな。まだ誰も来ていない。
18時50分。
ケータイをいじっていたら、まず最初に絵梨花が来た。
「えーー、まだ誰も来てないのー?早く飲みたいのにぃ」
あたしは軽く頷く。
「ねーねー沙織、聞いてよー。今度異動になって来た人の話したでしょ?今度飲みに行くことになってーー」
「そうなんだ」
またか。何人目だ。
「もう、めっちゃかっこいいのおー。加本さんなんか目じゃないんだからー」
「はいはい。あ、加本さん達きたよ」
「加本さんーー。一ヶ月ぶりー。会いたかったあー」
「え?俺、その…」
「やっだあ、冗談よ!もう好きな人くらいいるんだからー」
加本さん、真面目に受け取りすぎ。ほっと胸を撫で下ろしている。
「ちょっとー、僕もいるんですけどーー」
「あ、ごめーん池田くん。加本さんしか見えてなかったー」
やれやれ、この二人がいると騒がしい。ふふ。騒がしいくらいが楽しいかな。

あれから半年。
私達四人は、あの日意気投合して、なんと月一で呑みに行くことになったのだ。
加本さんと絵梨花は、今はすっかりおともだちだ。
私は、と言えば、加本さんとも池田とも付き合うことなく、やっぱり「おともだち」している。
この年になっても、友達っていいものだ。ううん、この年だからこそいいものなのかもしれない。
「沙織ー、席空いたよー」
「はーい」
こんな関係が、この先何年も続けばいいな、とあたしは思った。


☆了☆


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期待を裏切っちゃってゴメンナサイ!

源さんは、予想まで書いてくださってたのに……。単勝も連単もあったもんじゃなかったですね…本当にスミマセン(^_^;)

連載にしようと思ったときから、大団円エンドは頭にあったので、思い通りに終われた感じです。

ブレたり、いきあたりばったりだったりしましたが、最後までお読み頂いて、ありがとうございましたm(_ _)m


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