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18.アイとルビーにとっての「嘘」の意味(前編)

「嘘はとびきりの愛なんだよ?」

星野アイを象徴するようなこのセリフ。「嘘は愛」。なぜそのように思うようになったのでしょうか。

推しの子第1話より

それは、斉藤社長の「嘘で良いんだよ」という言葉がターニングポイントになっていると思われます。

推しの子第5話より

アイ「嘘でも愛してるなんて言って良いの?」と言うときの表情が、「愛してる」という言葉を言いたかったが、「愛する」がわからないから言えなかったのではないか?と考えさせられます。

推しの子第5話より

それを感じ取った斉藤社長は、その言葉につなげてアイの気持ちに入っていきます。

斉藤社長「皆愛してるって言ってる内に、嘘が本当になるかもしれん」

この言葉はどれだけアイにとって魅力的だったのでしょうか。これまで満たされなかった「愛する」「愛される」ということが、アイにとっての動力源だったのでしょう。アイは元々容姿に恵まれていたものの、逆にそのせいで不遇な目に遭ってきました。そのことから、自分に向けられる感情についても「愛」なのか「性欲」なのか「推し」なのか、はたまたそれらはただのモノ的に見られているだけなのかが、わからなくなっていたのではと想像します。

推しの子第5話より

愛を手に入れるための「嘘」

名前がアイというところからも、そこは意識して名付けられているように思えます。ずっと愛を求めつつも与えられなかった、あるいは受け止められなかったことから、アイドルになることでの与え・与えられる愛を求め、子どもの母親になることによって、与え・与えられる愛、それを探し求め続けていたのがアイの人生でした。

推しの子第5話より

「嘘」が本当になる事を信じて「愛される」自分を作ってきた、演じてきたのが星野アイなのでしょう。そうしなければ、愛にたどり着けなかった。そう、その代償がいつか訪れることがあっても、それは譲れないことでした。

推しの子第5話より

アイにとっての「愛」は、ほしいけど手に入らない愛。その愛を手に入れるための手段としての「嘘」

愛されるということは、何を指すのか?

でも、アイは実は母親に愛されていました。アイが幼少期のうちからあまりに魅力的だったため、当時アイの母親(あゆみ)と付き合っていた男も、アイに色目を使い始めました。母親は、我が娘に嫉妬してしまう気持ちを抑えられず、その気持ちがアイへの虐待へと駆り立て、アイと距離を離さざるを得なかったと話しています。

推しの子第131話より
推しの子第131話より
推しの子第131話より
推しの子第131話より

なぜ、アイは嘘をつかなければならなかったのか?ルッキズムという闇

以上のように、アイが「嘘」をつく理由は「(本当の意味での)愛」を感じるためだったのではないでしょうか。芸能界に限らず、「ルッキズム*」が跋扈しているこの世の中では、「ルッキズム*」は容姿の良い人にとっても、特別容姿が良いとはいえない人にとってもよいと言われない人にとっても、色んな悪影響を与えます。
*ルッキズムとは、外見至上主義のことで、見た目で人間を判断することを指す。

アイは容姿に恵まれましたが、そのことによって、アイの母親の彼氏(義父)に性的な目で見られ、きっと嫌な思いをしたでしょう。また、母親からは嫉妬や怒りを向けられ、それが結局虐待へとつながってしまいました。母親にとっても、娘(アイ)が特別容姿に恵まれていなければ、娘を虐待することはなかったでしょう。これは、誰が悪いという問題ではなく(義父は色目を使っていたのであれば、悪いのかもしれませんが作品内ではほとんど描かれていません)、ルッキズムというものが引き起こした連鎖といえるかもしれません。

さて、本題に戻りましょう。アイにとっての「嘘」は、そのような恵まれた容姿と、ある意味で恵まれなかった環境で十分得ることのできなかった「愛」を得るための手段であったと考えられます。
母親が娘(アイ)に愛情を持っていたとしても、それが家庭内で虐待といわれるほど歪な状態になっていれば、アイは幼少期に受け取れなかったことが想像されます。

ルビーにとっての嘘の意味は?

ルビーも、転生する前の天童寺さりなとして生まれた人生においては、長い期間を病院のベッドで過ごし、12歳で亡くなってしまいました。しかし、アイとルビーにとっての嘘の意味は異なるように描かれています。

次回、後編では「ルビーにとっての嘘」について中心に取り上げたいと思います。


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