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ジョンとジョシュ レッチリ考 ~前編 ジョシュの成し遂げたこと

あけましておめでとうございます。

新年の書き始めは、今年ジョン・フルシアンテが復活する、レッド・ホット・チリ・ペッパーズについてです。

みんな(私も)「レッチリにジョンが戻って来た!!!」と喜んでいますが、これまで10年の長きにわたり彼の不在を埋めてきたジョシュ・クリングホッファーの仕事も評価すべきものがあります。

前編ではおもにそんな話をしようと思います。

昨年12月末日までレッチリのギタリストとして頑張って来たジョシュ。

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00年代にStadium Arcadiumツアーに帯同してきたときから、あるいはジョンのファンは彼がジョンのソロワークのサポートを始めたときから、女性の一部は「なかなかイケメン!」「独特なおしゃれさん」と目を付けてきたようです。ジョンは、その風貌も含めてファンが本当に多かったですが、正式なメンバーになってからジョシュの風貌があまり話題にならなかったのは地味に残念です。

彼は「I'm With You」と「The Getaway」の2作、10年間にわたってレッチリのメンバーとして活躍してきました。また、レッチリとの絡みはもっと以前に遡り、ジョンが最初の復帰をしたCalifornication期からライブに顔を出して関わっていたというのです。そうするとレッチリとの関係は20年近くと、ジョンより長くなります。

この2作を振り返ってみましょう。

今、何度か聞き返して私が思うことは、「レッチリとはかくあるべきだ」から自由な感じになっている(特にThe Getaway)という感想です。

レッチリとはミクスチャーロックから始まり、マッチョで、バンドサウンドで、あるいはメロディアスで。それらの前提から自由で、柔らかで伸びやかな音を鳴らしている印象があります。

ラジオなどでThe Getawayの曲は本当によくかかっており、一定の成功を収めたアルバムといえると思いますが、今聞き返すとI'm With Youもそんなに悪くはないと思いました。レッチリらしさがやや強く残っていて、ジョン期からの過渡期としては自然に聴けます。

特徴としては、誰か一人のプレイヤーに支配されず、全員が伸び伸びやっているという印象を受けること。一人で何でも仕切りがちだったジョンと比べ、ジョシュは皆を自由にやらせている穏やかな先生のようです。誰か一人や何か一つのパートが過剰に引き立つことが良くも悪くもありません。

ジョシュのいいところは、人を引き立てて空気のようにまわりや相手になじむこと。これはジョンのソロワークを手伝って多大な貢献をしていた頃からいえることです。この特徴が在籍時の2作にも色濃く出ていたことになります。やはり、レッチリはギタリストの色が濃く出るバンドのようです。

この時期の弱みもいくつかあり、まず、ジョン期に比べてキラーチューンが少ないこと。次に、BGMとして流れていってしまい、じっくりと曲や演奏を楽しみたい、堪能したい、フレーズを追いかけたい、という強い興味関心をもちにくいこと。あとはメロウな曲が少ないこと。また、ギタリストであれば思わずコピーしたいフレーズやリフに欠け、物足りないと思われます。

ちなみに、私個人の見解としては、「なんかレッチリらしさがどんどん消えていく」と感じて、少しずつバンドを深追いすることをやめていったし、動画でライブを見たりも全然しませんでした。嫌いではないし、レンタルでアルバムはチェックしたけど、どこかになくしてしまって、特にそれを聞き返そうとも思わない。iTunesにあれば充分。そういう認識でした。


問題は「ジョシュはなぜ、やめたのか」。この如何によって私はバンドの今回の決断を応援できるか、残念に思うか変わります。たぶん次のライブか次のアルバムでフリーが話してくれると思うけど。

・ジョシュもまた、ジョンのように、ソロキャリアを突き詰めたいので、友好的にやめる場合

私はこちらではないかなーと(良い)想像をしています。ジョシュもDot Hackerなど、様々な形態で自分の活動を繰り広げています。それに、彼はもう40歳。オリジナルメンバーより20歳近く離れているとはいえ、かつての20代のワカモノとはもう違うのです。

・ジョンが「戻って来たい」と言い出したので、じゃあ今いるジョシュはやめてもらおうか、となって追い出される場合

ここまでジョンは押しが強いか?と疑問で、私はあまりイメージできない選択肢ですが、事務所とかが考えそうです。これだったら本当に可哀想。あとは「セールスを出せていない」とか(でもThe Getawayはそれなりに売れた印象があるけど?)「アンソニーと喧嘩したから(ほぼすべてのレッチリのギタリストが通る道)」とかはやるせないですね。

「プレイヤーとして物足りない」これはありそう。自分がフリーやチャドだったらこれが考えられます。ジョシュは何でもうまくこなせるマルチプレイヤーだけど、ギターをメチャクチャ極めているわけではない。でも他の3人というのは自分の楽器やプレイを今までずーっと極め尽くしているのです。もしこの理由でジョシュが去って、ジョンが来た結果すばらしいアルバムやツアーができたら、一番今回の決断を応援できます。

それにしても、ジョン以外でレッチリに10年も居続けられたメンバーは他にいません。彼はすごいことを、充分やり遂げたと思うのです。史上一番のレッチリのギタリストがジョンだとしたら(オリジナルメンバーのヒレル・スロヴァクもいますが、ちょっと業績が少なすぎる)少なくとも2番目のギタリストなんじゃないかなって思います。

Josh Klinghoffer vs John Frusciante - Can´t Stop

カッティング一発のキラーチューン「Can't Stop」での二人の演奏を比較する動画です。どちらがいいか悪いか、好きか嫌いか、絶対的な答えなんてものはどこにもありません。ただ自分自身の好み、そしてメンバーが出した答えがあるだけ。「どっちもいい」それで充分じゃないかと思います。ちなみに私は原作者であるジョンの方が好きかな。でも、ギターも、コーラスも、歌もできないといけないなんて、ジョンの後にレッチリに入るのは本当に本当に大変だってわかります。

ジョシュ、今までありがとう。おつかれさまです。これからの活躍を祈っています。Stadium Arcadiumツアーみたいな「5人目のメンバー」だったり、ジョンのソロの手伝いだったり、またそっとレッチリを支えてくれる日を待っています。でも、ひとりの新しい道でも、もちろん応援します。


後編はもちろんジョンの話。ジョンの戻ってきたレッチリに望むこと、ジョンに望むことを書いていこうと思います。





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