見出し画像

アサイゲルマニウムと痛み

鎮痛作用研究

昨2022年末にアサイゲルマニウムが痛みを緩和するメカニズムについて、近畿大学薬学部、山形大学医学部、浅井ゲルマニウム研究所の共同研究成果が論文発表されました。アサイゲルマニウムに関する痛みの研究は過去に多数行われてきて、たとえば神戸女子薬科大学(現:神戸薬科大学)で研究された内容は1983年の文献で見ることができます。非常にきれいなデータで、ラットやマウスを用いた実験により鎮痛作用があることを示されています。この文献のイントロダクションには臨床研究の場で痛みが抑制されているので研究を行ったという記述があります。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/bpb1978/6/11/6_11_814/_pdf/-char/en

モルヒネとの強調作用が認められてきており、この実験系ではアサイゲルマニウム単独では鎮痛効果がほぼ出なかったことが記されています。他にも多くの研究が行われているのですが、明確な作用メカニズムはこれまで未解明でした。

自身のアサイゲルマニウム鎮痛作用の体験

さて、今回の近畿大学との研究がなぜ始まったのか。それには25年ちょっと時間を戻します。ぼくが浅井ゲルマニウム研究所に入社した年に、入社後すぐに腸内細菌研究について研修に出た日本甜菜製糖株式会社の研究所で無菌操作を行っていた際、ぼくの不注意で手に噴霧した消毒用エタノールに火炎滅菌用の炎から引火してしまい、左手が炎に包まれてしまいました(汗)
慌てて火を消しましたが、時すでに遅く、手のひら・手の甲がジンジンと痛み始め、どんどん痛みが強くなりました。やばい状況です。まずは冷やすべきだろうということで、直ぐに水道水で冷やしたのですが、どんどん痛みは増していきます。これはまずいことになった・・・と直感した時に、浅井研の上司から聞いたことのあったアサイゲルマニウムの火傷の痛みに対する効果について思い出したのです。実験用に作ってあった超高濃度のアサイゲルマニウム水溶液を手にかけたところ、ものの一分ほどで痛みは退いていきました。またしばらくすると痛み出すので、2、3回この操作を繰り返していたところ、痛みは出なくなりました。この経験は衝撃的でした。過去にやけどを負ったことは何度かありましたが、状況的には最もひどかったこの時が、一番痛まずに済んでしまったからです。結局、水溶液がかからなかった部分の指の裏側に水膨れが少しできただけで、痛みもせず、皮も剥けず、皮膚の変性(ひきつれ)なども起こらないまま終わってしまい、ぼくの中に何故なのかという強い探究心が生まれました。

ATPと痛みとアサイゲルマニウム

函館研究所が完成し、ぼくが最初に取り組もうと思ったのが、この火傷の痛みについて調べることでした。火傷の痛みは何なのか、痛みの書籍を読んで調べましたが、当時はカリウムイオンが痛みを惹き起こす、とかサブスタンスPというものが痛みの原因などと記されていてピンときませんでした。このようなものが痛みの原因ならアサイゲルマニウムで痛みが抑制されるのは何故なのか???
この頃にATPという細胞エネルギー分子がアサイゲルマニウムと結合性をもつ可能性があることを知り、ATPが痛みを伝達するなら生きている細胞が壊れている情報として丁度いいのではないかと思い付いたのですが、これを上司に相談したところ、完璧なタイミングでATPは痛みのシグナルとして機能しているという研究が行われているという紹介をされている総説を見つけて教えてくれたのです。ATPとアサイゲルマニウムが結合性を持つことを化学的に証明し、15年近くかかって細胞実験も含めて論文にすることができました。ここにはアサイゲルマニウムが作用を示す生体の重要分子について記しています。

さて、やっとATPと痛みについてメカニズムが分かってきました。ということで、とある国立大学の研究室に相談に行き、証明する実験を行ってもらうことになりました。実際に動物での研究では確実に効果を確認できたのですが、細胞を使った実験を実施してみると思った結果になりませんでした。結局、この研究室で様々な実験を行って下さり、もしかしたら硫黄が関係しているかもしれないということを見つけていただきました。そして近畿大学で詳しく研究されている川畑教授に相談に行ってみることを勧められたのです。たしかに、硫黄化合物とはアサイゲルマニウムが弱く作用することが浅井ゲルマニウム研究所の研究で分かっていました。

硫化水素とアサイゲルマニウム

そんなわけで、近畿大学薬学部に相談に行ったのですが、ターゲットは硫化水素なので、アサイゲルマニウムと硫化水素との作用を確認して示していただいたなら検討してみましょう。という話になり、函館に戻ってから博士研究員の島田くん(現研究部長代理)にお願いして作用性の化学反応についての実験をお願いしました。硫黄化合物とは弱く作用すると前段に書きましたが、驚いたことに硫化水素については(THGP)が極めて強く反応して、これまでに明らかになっていた”どの物質よりも強く結合する”ことがわかりました。そのデータをもって再度近畿大学に相談に伺い、これなら!ということで共同研究が始まりました。みるみる成果がでて、そしてメカニズム解明に至り、論文掲載になったのがこちら。
A hydrolysate of poly-trans-[(2-carboxyethyl)germasesquioxane] (Ge-132) suppresses Cav3.2-dependent pain by sequestering exogenous and endogenous sulfide (nih.gov)
Redox Biologyという科学雑誌、かなりハイレベルな研究雑誌で簡単には掲載にならないのですが、投稿から非常に短期間で掲載になったのは近畿大学の川畑先生の研究室での緻密なデータと、山形大学での速やかな追加実験の対応をしていただいて島田氏が山形に行った時にすぐに実験させていただいたことがあって達成できたので、感謝しています。
アサイゲルマニウムは食品に分類される素材で、主にサプリメントなどに用いられている訳ですが、硫化水素が関わる膵臓痛や膀胱痛といった内臓痛に対して作用する明快な証明がなされたというわけです。
個人的には、Fig.4にある細胞実験でパッチクランプという電気シグナルを観る研究により、硫化水素に起因するシグナルをTHGP(アサイゲルマニウムの水に溶けたときの分子)が濃度依存的に抑制し、高濃度ではほぼ完全にシグナルが消失していたというのが感激しました。
痛みの抑制のメカニズムが全て分かったわけでもなく、ATPとの関りでの鎮痛作用についてはさらに別の検討が必要だと思っていますが、アサイゲルマニウムが痛みに対して間違いなく抑制作用を持つことが証明されたのは非常に大きな成果だと感じています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?