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映画館で上映するためのDCP制作について


1)映画館で上映するDCP(デジタル・シネマ・パッケージ)プロジェクターは1秒間24コマの静止画ファイルが映写されています。正確には、JPEG2000という静止画の連番ファイルからなるデータです。

2)なぜ1秒間24コマなのかは、35ミリフィルム上映が1秒間24コマの静止画の上映フォーマットだったからです。
フィルム映写機の仕組みはこちらの漫画をご覧ください。

https://note.com/ohutondetai/n/n764cb5166c0d

フィルムの映写機では、1コマを瞬間的に一旦止めて、その止めた瞬間に2度光を当てていますが、DCPプロジェクターでは、静止画に常時光を当てています。一つの静止画が、次の静止画に変わる間隔は10万分の1秒です。


3)ビデオカメラで撮られた撮影データは、よく1秒間30コマだとか言われたりしますが、正確な表現ではありません。まず、ビデオカメラの撮影データで、フィルムの一コマを表す「コマ」という言葉は使わない方が映像の仕組みを理解しやすくなります。ビデオ撮影された映像の場合はフレームというのが一般的ですので、この場合は30フレームというのが正しいです。ただ混乱するのは英語でFrame というとフィルムの一コマのことも指しますし、ビデオのことも指します。従って、DCPのデータを24フレームというのも静止画の連番ファイルですが間違ってはいません。モニターで見る映像は、左上から、右下へ流れる走査線です。決して静止している映像ではありません。
モニターに映っている映像を超スローモーションカメラで捉えた実験の記事をご覧ください。

https://gigazine.net/news/20180121-how-tv-works/

モニターの映像が、静止画ではないことがよくわかったことと思います。

4)DCP変換とは、走査線からなる映像データを静止画である、JPEG2000の連番ファイルに変換する作業のことです。
従って、DCP変換のデータのベストは24fpsで編集されたデータです。なぜなら24P(24fps)の映像データが24コマのDCPに変換された際に最も近いからです。

5)では、撮影はどのフレームレートで行えばいいのか、DCP変換を行う側からすると、それはどんなフレームレートでもよく、編集して、DCPに変換するデータを作成するときに24Pにしてあれば問題ありません。撮影素材が、フレームレートが23.98fpsの素材であろうが、29.97fpsであろうが基本は編集時に24Pに変換されていれば問題ありません。映画によっては、スローモションのシーンを挟む場合もあるでしょうし、その場合はハイスピード撮影を行います。また撮影監督によっては60fpsの画質を好まれるかも知れません。全編60fpsの撮影データを、24P編集する場合、任意のシーンを画質を落とすことなく少しスローモーションをかけることができます。劇場公開を考えて映画を撮影するのなら24Pで撮影するというのが標準的な選択肢です。とにかく、繰り返しますが編集を行いDCP変換のデータ納品時に24Pであれば問題ありません。ただ、編集ソフトで23.97fpsを24fpsで変換した場合約0.1%時間が短くなります。詳しくは(7)を参照ください。

6)DCPプロジェクターでの上映は1秒間24コマのJPEG2000の連番ファイルで上映すると述べましたが、実際の映画館のサーバーでは、24コマだけでなく、3D上映の場合、1秒間48コマの静止画を映写するので、48コマのDCPデーターも受け付けます。また、ヨーロッパのテレビ方式PALは25フレームですので、25コマとその倍の50コマのDCPデータを受け付けます。さらに日本やアメリカのテレビ方式NTSCは30フレームですので、30コマ、60コマのDCPデータも受け付けます。

7)23.98fpsで編集されたデータを弊社にDCP変換の依頼された場合は、弊社で、24コマのDCPデータに変換します。ただし仕上がりの時間が0.1%短くなります。2時間の映画で7.2秒ほど短くなります。音で言えば少し高くなりますが、440Hzが440.44Hzになるということで、余程の絶対音感をもった人でないと気づかないでしょう。これは他社でDCPを変換しているスタジオにも確認しましたが、現在DCP制作会社では許容範囲としています。(5)で申したように、制作サイドで24Pのデータにして確認された上で、DCP変換を依頼されることがベストです。ただ、先に申した通り、プレミアやファイナルカットプロで24Pで編集すると0.1%時間は短くなります。そうしないためには、プロのスタジオでフレームレート変換を依頼することになりますが、コストはかかります。どうしても23.98fpsで編集した実時間とDCPデータの上映時間を揃えたい場合は、音声と映像を別々にして納品してください。映像は23.98fps、音声は0.1%スピードを遅くしたデータを準備ください。その際、音データはファイル頭で映像の開始点とシンクロするようかき出して下さい。DCPに変換するソフトで、映像と音声の別データを取り込み、24で変換すると、23.98編集した時間と同じ、24コマのDCPが出来上がります。予告編などは短いので時間差は無視して問題ないです。この方法の方がプロのスタジオで絵と音全部をフレームレート変換するより簡単でリーズナブルです。DCPソフトのアルゴリズムがきちんと働くので、24コマに変換された画質も問題ありません。

8)では29.97fpsで編集されたデータの場合、選択肢は3つあります。① 制作サイドで24Pのデータを制作する。そのデータを24コマのDCPにする。② 弊社で30コマのDCPデータに変換する。その場合、作品の時間が0.1%短くなる。1時間の作品がDCPで上映すると3.6秒短くなる。それを理解した上でDCP変換を行う。③ 30コマのDCPで29.97で編集した時間と同じにする。そのためには、29.97の映像と、音声を0.1%遅くしたデータを分けて納品ください。29.97fpsのデータを24コマか30コマのどちらでDCP化するかは監督、撮影監督などと相談して決めて下さい。ただし30コマのDCPを受け入れているかは上映劇場に確認してください。受け入れていない劇場もあるそうです。

9)24コマのDCP上映と30コマのDCP上映はどう違うか、30コマは24コマより1秒間に4枚静止画が多く映される違いです。感覚的ですが、24コマの方がフィルムっぽく、映画っぽいという人がいるかもしれません。30コマの方がビデオっぽいと見えるかもしれません。DCPサーバーは技術的に60コマのDCPデータも受け付けます。24コマと比べると2.5倍も静止画の枚数が違うので、速い動きの場合、また60コマ/秒で作られたCGなどの場合、24Pと比較すると動きが滑らかに映写されます。実写映像の60コマだと24コマよりはっきりとビデオっぽい映像になります。聞いた話ですが、大手シネコンではシネアドは30コマのDCPを指定されるそうです。テレビCMの29.97のフレームレートを30コマのDCPに変換した方がいいからかもしれません。

10)多くの劇場のDCPサーバーはスペック的には、24,25,30,48,50,60コマのDCPデータを受付けプロジェクターで上映できます。実際、サーバーへインジェスとするデータとして受け付けてるかは確認してください。映画撮影の場合、24Pでの撮影が常識で、撮影監督は、他のフレームレートで撮影することはないとおもわれます。
ただDCPを変換し、映画館を運営している立場で映画上映の映像表現のクリエイティブということだけでいうと60P撮影、60P編集、60コマDCP上映という選択肢もあるということだけをここでは申し上げておきます。80年代にダグラス・トランブルが提唱した70ミリフィルムで撮影し60コマ/秒の映像、ショー・スキャンが今ならコマ数に於いてはインディーズでもできるということです。かつてハリウッド実際にショー・スキャンの映像をみましたが、その映像のリアルさへの没入感は忘れられません。オンリンピックやF1レースなどを60Pで撮影し、その映像をそのまま映画館のスクリーンで映すとどう見えるのかその映像体験に興味はあります。ちなみにDCP変換ソフトでは100コマというのもできますが、劇場側のサーバーが対応していないようです。

11)映画館でかける本編上映前の予告編は多くの映画館はDCPフォーマットの一つであるフラットというサイズの中に納めます。そこでは、16:9(1:1.77)と1:1.85の画面比率で撮影された映画が天地左右黒味無しの状態でスクリーンに上映されます。ちなみに「映画泥棒」は1:2.35のシネスコの画面比率で作られていますので、フラットなかに入れると天地に黒味がある状態となります。

12)映画館で上映するために映画を制作する場合、映像はデスクトップで完成する事ができますが、音声のダビングは予算がかかりますがプロのスタジオで仕上げる事をお勧めします。映画館のスピーカーから出てくる音は空気のある空間を経て観客に届きます。ベストは映画館の空間に近いダビングステージで仕上げを行う事ですが、インディーズの制作ですとテレビやDVDの音の仕上げを行うMAスタジオになると思います。ダビングステージとMAスタジオでは部屋の大きさが全然違います。それでも自宅で行うクオリティと全然違うのでMAスタジオで音をミックスする予算は組まれた方が作品の質を上げるのでぜひ考えてください。

13)映画館のスクリーンの裏にはスピーカーが設置されています。左、右、そしてセンターの3つの位置にあります。客席にはサラウンドスピーカーを目にする事ができます。多くの映画作品が前方3つののスピーカー、劇場内のサラウンドスピーカーを左の壁のスピーカーと後ろの壁の左側を1として、右壁側を1として合計で5、さらに低音の出るサブウーファーのスピーカーを0.1として5.1の音場の設計がされています。テレビの大きさなら左右のスピーカーだけで画面センターの絵の音もカバーできますが映画館の大きさとなるとセンタースピーカーの音は無いといわゆる中抜けの音になります。さて、DCP変換の依頼でドキュメンタリー作品などでは音声がステレオのデータが持ち込まれます。DCPデーターをステレオで制作することもできるのですがお勧めしません。スクリーンの裏にはスピーカーが左右センターに設置されていると先程説明しましたが3つのスピーカーで一番活躍しているのはセンターのスピーカーです。台詞はセンターのスピーカら聞こえるようにダビングの際に調整します。左右のスピーカーからしか音が出ないと映画館の前の方に座った場合、センターからの音がない状態となります。ドキュメンタリーの場合だとサラウンドの音は無くとも映画館で上映するのなら音は左右センターに振り分けることをお勧めします。それでもステレオの素材でDCP制作の依頼があった場合はDCP変換の際に左右の音声をそれぞれー3db音を下げてセンターにミックスし、上映時に左右センターのスピーカーから音が出るDCPデーターを作成します。

14)弊社のDCP制作ソフトは「ドルビーCineAsset」を使用しています。フリーソフトでDCPデータを作ることもできますが、DCPサーバー側のアップデートに対応していない場合は、上映中にストップすることもありますのでご注意ください。アップリンクの映画館で実際そのようなトラブルが発生したことがあります。弊社ではDCPに変換したデータはDCPサーバーにインジェストしてそのサーバーから出力し全編チェックを行った上で納品しています。

15)2021年度年内には事務所内に変換したDCPデータのチェックを行え、さらにDaVinciResolveを導入しカラーコレクション作業も行え、Pro Toolsも導入し5.1サラウンドの静音のできるDCPプロジェクターを設置した小さな試写室を作る予定です。

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アップリンクではDCP制作を行っています。

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浅井隆 ASAI Takashi(UPLINK)

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