なめとんのか、こら! な学芸員さん。

いつのことだったか。四ッ谷にある新宿区立の郷土資料館での体験です(大きな声では言いませんが、新宿歴史博物館ですね)。たしか、高遠藩に関する展示でした。
新宿駅にほど近い新宿御苑はもともと江戸時代、信濃高遠藩内藤家の下屋敷のあった場所で、宿場町としても内藤新宿って呼ばれていたのですよね。そういうつながりで、新宿区と高遠藩内藤家は縁があるので企画された展示なんでしょう。そんなわけで、内藤家に関する古文書とか掛け軸とか、その類の古色蒼然としたものが並んでいたと記憶しています。

さてところで、独学ながら少しだけ万葉仮名が分かるので、展示されていた古文書と、その横に置かれていた釈文(くねくねと書かれた古文書の文字を分かりやすく書き直したもので、たいていは活字化されていますね。そのこと)とを見くらべたのです。ああ、これはこう読むのか、とか、自分の読解力がどの程度かわかるし、もっと読めるようになればいいな、という気持ちもありますからね。

で、ある古文書で、はたと戸惑ってしまった。というのも、冒頭の文字が、横にある釈文とつき合わせて見てもまるで一致しない。もちろん、こちらの読解力が足らなくて読めていないことも多々あるのだけれど、文章の前後、左右を見ても対応する文字が見つからない。これはどうしたことだ?
しばらくして気がついた。活字化された釈文は、古文書の4行目からしか書かれていないことが。つまり、古文書のアタマの3行分がまるまる省かれていたのです。なんで?

もしかしてこれは、活字化して読めてしまうとまずいことが書かれているのではないか。だからあえて省略したのではないか。とはいえ、古文書の冒頭部分を見ても、こちらの読解力ではパラパラとしか文字が読めない。余計に気になる。

そこで、このことを受付だったかな、の女性に話すことにしました。彼女はフツーのスタッフなので、質問には当然ながら答えられません。それで彼女は、学芸員に話してみる、といってくれたのです。待つこと20分ぐらいだったかな。どうやら担当の学芸員がいたらしく、出てきました。50凸凹の長身の男性がにこやかに。そして、笑みを浮かべながらこう言いました。
「よく分かりましたねえ」
なんだ。褒められてるのか? そして、さらにつづけてこう言ったのです。
「印刷するの、忘れちゃったんですよ」
そして
「冒頭部分、読みます? 読むならプリントしますよ」と、相変わらずにやにやしながら言うのです。
ということは、釈文はつくった。けれど、冒頭部分をプリントするのを忘れ、4行目からプリントした。それに気づいたけれど、改めて冒頭部分を追加せず、3行ないまま展示した、ということか。知っていながら修正しない。なんだそれ。どうせ観客には読めやしないのだから、いいやこれで、と思ってのことなのか。

客をなめるんじゃねえ!

とは言いませんでしたけどね。それに、読みたいので見せてくれ、とも言いませんでした。もしかしたらヤバい内容が書かれていたのでは? という疑問が解消されればそれでよかったのです。
とはいえ、学芸員の中にはこういう不誠実な人もいるのだなあ。気がつかれなきゃ、間違った状態でも平気で観客に見せていて、そこを指摘されると、あ、バレちゃったか、な感じでヘラヘラ笑って対応する。
こういう学芸員もいるので、気をつけないとね。

(2024.0618)







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