最近の記事

賃料増減請求の権利行使の方法

1.はじめに借地借家法が適用される土地の賃貸借及び建物の賃貸借において、賃貸借契約の期間中に、土地の賃料の増減請求(同法第11条)、建物の賃料の増減請求(同法第32条)が認められていることについては、前回ご紹介したとおりです(以下、両方を併せて、単に「賃料増減請求」といいます。)。 では、賃料増減請求の権利行使の方法にはどのようなものがあるでしょうか。 2.意思表示(1)意思表示の方法 賃料増減請求は、相手方に対する意思表示によって、行うことができます。つまり、賃料増額請

    • 立退料の算定方法

      賃貸人が、賃借人に対し、「正当の事由」があることを理由に建物の明渡しを求める際には、いわゆる「立退料」の支払が必要となってきます。 そこで今回は、その立退料の算定方法についてご紹介します。 立退料とは借地借家法上、「正当の事由」の考慮要素の1つとして、「建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出」が挙げられています。この「財産上の給付をする申出」が、いわゆる立退料の提供に当たります

      • 遺言制度に関する改正案

        法制審議会、民法(相続関連)部会は、平成30年1月16日、民法(相続関連)改正案の要綱案を取りまとめました。同要綱案の中では遺言制度に関する見直し案が提言されています。以下、この見直し案の内容について概説いたします。 1.自筆証書遺言に関する方式緩和現状、自筆証書遺言は【1】遺言書の全文【2】日付【3】氏名を自署し、押印を行うことで有効なものとなります(民法第968条1項)。 遺言書にはしばしば財産目録を添付することがありますが、これまでの制度ですと、その目録も「自署」にて

        • 改正民法における定型約款制度について

          1.はじめに ご存知の方も多いと思いますが、本年5月26日、制定以来120年ぶりの民法の改正案(以下「改正民法」といいます。)が国会で成立し、本年6月2日には官報に掲載・公布されました。明治時代に作られた法律がやっと改正されたのも驚きですが、改正項目が200項目に及ぶ大改正となっております。改正民法の施行日は、「一部の規定を除き、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日」とされております。3年間は周知期間とされているため、2020年6月2日までに施行され

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          非上場株式の評価方法

          非上場株式の評価方法 前回お話ししたとおり、非上場株式には市場がなく、そのため一般の取引価格というものが存在しません。そこで、非上場株式を売却する際には、どのような方法で株式を評価するかということが問題となります。 そこで、今回は、非上場株式の様々な評価方法をご紹介します。 1.純資産価額方式企業の純資産に着目して、企業の価値や株価などを算定する方法です。 この方法による価値の評価は、企業や株式の静的価値を表すものであるといえます。 純資産価額方式には、(1)簿価純資産価額

          非上場株式の評価方法

          知症の相続人がいる場合の遺産分割手続

          1.はじめに 日本は、平成19年の時点で、全人口に占める高齢者の割合が21%を超え、「超高齢社会」となっています。このような状況からすれば、相続人の中に、認知症となってしまっているケースも増加してくるものと思われます。 そこで、今回は、相続人の中に認知症患者がいる場合の遺産分割手続について詳しく見ていきたいと思います。 2.認知症の相続人を除外して遺産分割協議を行っても無効であること (1)相続人が認知症患者である場合であっても、その人に相続人としての権利があることには

          知症の相続人がいる場合の遺産分割手続

          相続にまつわる3つの「放棄」

          1.はじめに 相続の手続きの中で「放棄」という言葉を耳にされたことがある方も多いのではないかと思います。そこで、今回は、相続にまつわる3つの「放棄」の内容や違い、それぞれの「放棄」をする際の注意点などについて、お話しをさせて頂きます。 2.相続放棄とは まず、「相続放棄」という言葉は、みなさんも耳にされたことがあるのではないでしょうか。「相続放棄」(民法939条)とは、相続人が被相続人から相続すべき遺産(プラスの財産のみならず、マイナスの財産をも含みます。)の全てを相続

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          同族会社における支配権紛争

          1.特色について 同族会社は、親族等の身内で会社経営を行うことにより、円滑に経営を行うことができるというメリットがあります。しかし、その反面、一度紛争が生じた場合、紛争の当事者が親子や兄弟間という極めて近しい間柄にあればある程、互いに感情的になり、円満解決からは程遠い、骨肉の争いへと姿を変えていく危険性を孕んでいるといえます。 2.支配権紛争が顕在化する場面 (1)同族会社において支配権紛争が顕在化する場面はいくつがありますが、その一つが、後継者の選任が会社法その他の法

          同族会社における支配権紛争

          相続税と贈与税(親族間で財産を売買するときの注意点)

          贈与税の役割そもそも、贈与税は、相続税の回避をさせないために納税者に課す税金という側面があり、相続税を補完する役割をもっています。そのため、贈与税に関する規定は「相続税法」の中に定められています。 この贈与税の「相続税の補完機能」という性質から、贈与税は、「個人」から財産を無償でもらったときに課せられる税金となっています。会社など「法人」から財産をもらったときは、「贈与税」はかかりませんが、「所得税」がかかります。 ケース Aさんが息子のBさんに対し、不動産を相続または贈

          相続税と贈与税(親族間で財産を売買するときの注意点)

          隠し子と相続

          今回は、隠し子がいる人が亡くなった場合、相続に与える影響について考えてみます。 1.戸籍の記載には要注意 夫を亡くした妻が、その相続の手続のために亡夫の戸籍を収集していたところ、亡夫の戸籍に「認知」という欄があり、「認知日」「認知した子の氏名」「認知した子の戸籍」といった記載を発見したとします。これは夫に婚姻外の子がいることを示しています。 上記の記載が現在の戸籍にはなく、改製前の戸籍にのみに載っていることもあるので、夫の出生から死亡まで、全ての戸籍を見なければ明らかになら

          隠し子と相続

          推定相続人がいない方の相続対策

          相続において、亡くなった方に配偶者も子もなく、兄弟姉妹も甥姪もいないため、相続人がいないというケースをしばしば見かけます。 ご自身に推定相続人がいない場合には、将来の相続対策としてどのようなことを検討すべきでしょうか。 1.相続人の不存在の場合の相続手続 まずはじめに、相続人の不存在の場合の相続手続を概説します。(相続人の不存在の場合の詳細な解説については、本サイト をご参照ください。) 亡くなった方に相続人のあることが明らかでないとき 亡くなった方に相続人のあることが明

          推定相続人がいない方の相続対策

          会社の倒産について

          「倒産」という言葉は新聞やニュースでよく耳にするかと思います。しかし、ひとくちに倒産といっても法律上は多種多様です。 倒産の種類「倒産」とは、一般的に会社が経済的に破綻したことを示す言葉として広く知られているかと思います。 しかし、法律上はまず大きく分けて、破産法という法律に基づいた破産手続などの裁判所を利用する形で行われる裁判手続きによる場合と裁判外で行われる場合の2種類ございます。 裁判手続きによるものを一般的に「法的整理」、裁判所を利用せずに裁判外で行われるものを「任

          会社の倒産について

          成年後見制度ってなんだろう?

          「一人暮らしが長いけど、年もとってきたし、そろそろ、預貯金の管理をひとりでするのは不安になってきたなぁ。」 「おじいちゃんが、勧められるままによく分からない金融商品を買ってしまったらしい。悪い人もいるから、今後こういったことがないように、予防したいな。」 「息子を新しい障害者施設に入所させたいが、息子は知的障害のため自分では契約が結べそうにない。」 成年後見制度とは、こういった認知症や知的障害、精神障害等の理由で判断能力が低下してしまった方々に対し、手助けしてくれる人(成年

          成年後見制度ってなんだろう?

          配偶者保護のための相続法改正案

          1.持ち戻し免除の改正案 平成29年7月18日、法制審議会民法(相続関係)部会において、「中間試案後に追加された民法(相続関係)等の改正に関する試案(追加試案)」が取りまとめられました。その中で、20年以上の夫婦について、居住用不動産を贈与又は遺贈した場合、持ち戻し免除の意思表示の推定を行う規定を追加する案が提示されていました。 今回は、現行の「持ち戻し免除」制度の内容と改正案について説明します。 2.「持ち戻し免除」制度の内容 (1)特別受益 被相続人から遺贈や、相続に先

          配偶者保護のための相続法改正案

          寄与分と遺言

          遺産分割においてしばしば問題になるのは、被相続人のお世話をしていた方の財産の取得に関する問題です。 法律が決める相続分(法定相続分)は機械的な割合で決まっており、被相続人に対し誰がどのような接し方をしてきたか、などということは基本的に考慮されておりません。 一方で、民法は、共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供・財産上の給付及び療養看護等によって被相続人の財産の維持又は増加に特別に寄与した者がある場合は、その分相続分において考慮する制度を設けています(904条の

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          損害賠償の種類とその違い

          1.損害賠償とは 損害賠償制度は、特定の行為により他人に損害を与えた者に当該損害を賠償させる制度です。 2.損害賠償の種類 損害賠償には大きく分けて、(1)債務不履行に基づくものと、(2)不法行為に基づくものの2種類があります。 (1)債務不履行とは 債務不履行に基づく損害賠償とは、契約等に基づく債務を履行しなかったこと(債務不履行)により生じた損害の賠償を指します。 事例1(建物の火事) Xさんは、Yさんに建物(価値1,000万円)を月6万円で貸していました。 Yさ

          損害賠償の種類とその違い