美容院の話


ここ数年通っている個人経営の美容院がある。
それまで電車で別のところに行っていたが、どこか寄り道をするわけでもなく、毎度終わったら家に直帰タイプであるからして
もはや近所にないのかと探し始めて見つけたところだ。

歩いて20分、ちょうどよすぎる。
だいたい朝イチで予約を入れるので昼過ぎには家に帰れる。タスクを終えた休日はなんとも言えない多幸感がある。

担当してくださっている美容師さんはかなりベテランのようで、今のお店を始める前は都内の有名美容院にずっといらっしゃったらしい。たしかに、強めのクセと扱いにくい毛量、そして完成形ビジョンのなさはピカイチだと自負している私のぼんやりとした「おまかせします」に毎度あの手この手を尽くしていただき、素敵にしてくれる。

明るくハツラツとした性格で、ぼそぼそしゃべる私に距離感近めで話しかけてくれる。
そういった対応が苦手な方もいらっしゃるだろうが、ずっとしゃべっているわけでもないし、私はむしろそれでスパスパ物事を進めてくださるのであればありがたいと思っている。


ただ、最初のほうに少し「ん?」と思った違和感が、最近現実味を帯びてしまっていてちょっと行くのが億劫になっているところがあるのだ。

担当の方のお母様も一緒に働かれている。オーナーを譲り受けた形になるのだろうか、もうお年も召されているのでそろそろ引退させたいとおっしゃっていた。いかんせんそのお母様への当たりが強い。指示を出す側であるということと、親族だからなのか言葉がかなり強いのだ。お母様がどのように受け取っているかはわからないが、聞いていると正直疲れる。
さらに2人だとかなり手一杯のようで、もう1人か2人、アシスタントやスタイリストを雇うのが理想とのことで結構募集をかけたりしていると。
実際行くと初めてお会いする方がいたりする。毎度違う方がいらっしゃるのだ。つまり、そういうことなんだろうなと思う。

担当の方はあっけらかんと、雇っても根性がない、下手なことやられるぐらいだったら自分がやる、と笑いながら話されていて、こちらとしてはあ~~~~~~~~~~~と苦笑いをすることしかできなかった。

先日も新しく入ったスタイリストさんを紹介してくださった。担当の方が手が離せない間、洗った後髪を乾かしてくださっていて、話を聞くとそれなりに経験を積まれた方だったようだ。
ただ担当の方がその方のやり方に横からああだこうだと口を出している。口調はさほど強くないし、コミュニケーションの一貫として話しているともとれるのだけれど、新しい方が「そんなのまで言われなくてもやれますよ(笑)、今までの人にもここまで確認してたんですか?」と。
あ~~~~~~~~、プライド触ったんじゃねェ~~~~~の????とお2人の間にいる私はもういたたまれなくなってしまって、ただ雑誌を見つめる。さっき読んだところをもっと読む。この空気、しんどいぜ~~~~

それに対して担当の方はまた、変なやり方でやられるぐらいなら…とご自分の強い意志を語り、そのすべてはお客様に満足していただく為だとキラキラしたトーンで話す。
ちらりと新しい方の表情を見る。
曇天。
そりゃそうっスよね!!!わかる!!!あーしはあなたの言いたいことわかるよ!!!!!


美容師さんは技術者の世界だと思うので、私なんぞがモノを言える立場ではないとは重々承知している。歴があったとてそれが手腕と比例しているとは限らないだろうし、もっと磨いていけるものなのであればアップデートは必要なのだろう。
ただ最初にあった違和感が確信に変わり、頭の中で疲れたなとため息が出た。
少なくとも私はこの人の元では働けない。あまちゃんだと言われるんだろうなァ。


担当の方からすれば、私は顧客であって、仕上がりを気に入って数年通っているのだから、自分のやり方が顧客満足に繋がっていると思って当然なのだが
ただ本人の思う"お客様の本当の満足"は恐らくもっと違うところで、その点で言うと私はそういう理由では来ていないよと思ってしまう。
事実、行って疲れるくらいなら頻度を減らし、違うところに行くことも検討しているし。

接客は、求められる内容も、どうするのが正解かも、ある程度枠はあっても絶対的な答えがあるばかりではないと思うから、一概に言えないもどかしさがどうしてもあるのだけれど
私のような小心者は、出来れば従業員皆何か思うことがあれば裏で話し、経営持論もそこで語ってくれと思うばかりだ。



書いててもへにょへにょになってしまったので美味しいものを食べます。
私も私でそんなこと気にしないようなけろっとした人になりたい。

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