イチョウの木
眠い。かなり眠い。
これも秋の感じだァと思いながら布団の中で目だけ開けるのだが身体が動かない。
寒い。かなり寒い。
もう何日も外に出ていない。
身勝手に秋を感じていながら
外の景色が如何に変わったかなどは知る由もない。
ベランダから見える大きなイチョウの木は、あの子の好きだった色に染まっているのだろうか。
「季節が変わる時ってにおいがするでしょ、風が自分の身体を通り抜けるみたいに吹くとき。あの感じもすごく好きだけど、変化が目に見えるのがわかりやすいってのもいいよね。秋の入り口とかさ。私、すごく好き。」
目を閉じる。浮かび上がる。
すぐそこの窓を開ければあるはずだが、身体が動かない。
はっきりしない景色のまま
それしか、できない。
においもいらないし、見たくもない。
きっとそのせいである。
そう考えるられるだけの立派な頭で
すべてを忘れ、冬が来たら
また目を開けたくなるのだろうか。
眠い。
寒い。
あたたまった心はどこだ。
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