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【人気記事取得・文面作成の自動化etc.】Google Apps Scriptを用いてGLOBE+メルマガ配信を業務改善してみた

今回のテックブログは「メルマガ配信作業の効率化」についてのお話です。Webメディアに人を呼び込むためには欠かせないメルマガですが、配信にかかる手間は悩みの種。そこで誰でも導入しやすいGoogle Apps Scriptを活用し「約2時間の作業を10分に短縮」、「配信頻度を隔週から毎週に増加」できたという事例をご紹介します!

はじめに

メディアデザインセンターの山本剛史と申します。普段はWebメディアのアクセス解析や、ABテストによる改善検証など、サイトグロースを担当しています。

朝日新聞社のWebメディアとしては朝日新聞デジタルが有名ですが、それ以外にも多様なWebメディアを運営しています。

そうした多種多様なメディアの運営を行っているのがメディアデザインセンターです。今回、私が担当しているGoogle Apps Scriptを利用したGLOBE+というメディアでのメルマガ配信の業務改善事例を紹介します。

Webメディア運営業務におけるメルマガ配信とは

メディアデザインセンターで運営しているメディアの1つにGLOBE+があります。

GLOBE+は「世界の今日は私の明日につながっている」というコンセプトのメディアです。SDGsや社会問題などの世界的なトレンドを分かりやすく発信し、多くのビジネスパーソンに読まれています。

GLOBE+のWebメディア運営の主な業務は日々Webコンテンツを発信することです。
しかし、Webコンテンツは単に配信して終わりではありません。発信したコンテンツを流通(デリバリー)させて、多くの人に届けることが大切です。

コンテンツのデリバリーの1つに、昔ながらのメールマガジン(メルマガ)があります。GLOBE+に興味を持ってメールアドレス登録してくれた読者にメルマガを送ることで、配信した記事を読んでもらうことができます。ただ、コンテンツデリバリーにおいて重要なメルマガ業務は、意外と手間のかかる作業です。

1.メルマガで配信するテーマを決める
2.テーマに沿ってメルマガタイトルとリード文を作成する
3.テーマに適した記事を選別する
4.各記事の見出しを必要に応じてメルマガ用にカスタマイズする
5.各記事の概要についてメルマガ用に分量を調整する
6.アイキャッチ画像を各記事ごとに準備
7.メルマガのデザインに用意した素材を設定し文面を完成させる
8.メルマガ配信サービスを設定してメルマガをユーザーに送付する

1本のメルマガを配信するために、これだけの作業が必要になり、編集者の作業負担も大きいです。そこで、Google Apps Scriptを活用したメルマガ業務の省力化に取り組みました。

Google Apps Scriptとは

Google Apps ScriptはGoogleが提供しているスクリプトサービスです。Windowsでいうところのマクロのようなもので、簡単なプログラムを書くことで処理を自動化できます。

Google Apps Scriptの最大の魅力はサーバーレスアーキテクチャである点です。クラウド環境のIDE(スクリプトエディタ)があり、ブラウザでJavascriptベースのコードを書いて即実行できます。トリガー実行によって、一定間隔で実行したり、毎日特定の時間帯で実行する、毎月1日に実行するといったスケジュール実行もGUIで簡単に設定可能です。何よりもGoogle Apps Scriptは制限はあるものの、無料で使えるので費用を気にしなくてもいいのが助かります。

これまでもGoogle Apps Scriptを活用し、レポート自動生成ツールや、Slack通知ツール、Twitter自動投稿ツールなど、編集部の意見をヒアリングしながら、プロトタイピングで作成してきました。

Google Apps Scriptで記事取得を効率化

まず、GLOBE+メルマガ業務で編集部の負担が大きかった記事情報取得の効率化を進めました。

メルマガ配信作業では配信する記事を選んだあとは、その記事のタイトルや概要、アイキャッチ画像、URLが必要です。編集部によるメルマガ業務では、選んだ記事ページにアクセスして情報を取得する、またはCMSから記事に設定したアイキャッチ画像をダウンロードする作業を行っていました。

そこを効率化するためにGoogle Apps Scriptを活用し、メルマガ配信用記事ページをスクレイピングします。

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記事ページのHTMLソースを取得し、メタ情報からタイトルや概要(ディスクリプション)、アイキャッチ情報を取得します。

さらに、スプレッドシートに出力する際には、URLにメルマガからのアクセスと識別可能なパラメータを付与して書き出しています。

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そうすることで、いちいちタイトルや記事概要、画像、メルマガ用URLを編集部で準備する手間が省けます。さらに、スプレッドシートに入力されたタイトルや記事概要は編集することができるため、メルマガ用に少しカスタマイズすることも可能です。

メルマガの文面を自動生成

メルマガに必要な素材がそろったところで、実際に配信するメルマガを生成する部分も自動化します。

GLOBE+はHTMLメルマガで配信しているため、スプレッドシートの情報をHTMLデータとしてアウトプットする必要があります。
そこで、あらかじめ用意しているメルマガ用HTMLテンプレートに、スプレッドシートのタイトルやディスクリプション、画像URLとメルマガ用記事URLを入力したものをGoogle Apps Scriptで自動作成します。

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スプレッドシート上にGoogle Apps Scriptのスクリプトを実行するボタンを用意しています。ボタンを押すと、スクリプトが実行され、スプレッドシートに記載されたメールアドレス宛てにHTMLメルマガのソースファイルが送付されます。あとはHTMLメルマガのソースをメルマガ配信ツールにセットし、配信設定すればユーザーにメルマガを送ることができます。

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メルマガ配信で必要な作業1~8のうち、2~7の作業を大幅に省力化する支援ツールができました。

メルマガ配信頻度を増やすためさらなる効率化を検討

先ほど紹介したGoogle Apps Scriptによるメルマガ作成の効率化によって、メルマガ業務はかなり効率化されました。

ただ、まだまだ編集部でメルマガ作業でテーマを考え、記事を選出する作業、そしてメルマガ用に文言を編集する作業などの負担があります。そうしたメルマガ業務の負担から、配信頻度は2週間に1回でした。
メルマガ配信を毎週行えるようにさらなる効率化ができないか検討し、考案したのが人気記事の紹介メルマガです。

人気記事のランキングを紹介するメルマガを自動生成

人気記事を紹介するメルマガは、前述のメルマガ作成支援ツールをさらに発展させたものです。

先ほどのメルマガ作成では、メルマガに掲載する記事は、GLOBE+編集部が選出していました。この部分の負担が大きかったため、GLOBE+でよく読まれた人気記事を自動取得するようなツールを追加開発しました。
具体的には、アクセス解析サービスに用意されているAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を利用して、Google Apps Scirptでよく読まれた記事のURLを取得できるようにしました。

あとは前述のメルマガ作成支援ツールと同様に、記事URLからタイトルやディスクリプション、画像URLを生成します。よく読まれた人気記事をアクセス解析サービスから自動的に取得することで、編集部が記事を選ぶ必要がありません。

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人気記事を紹介するメルマガは、タイトルやディスクリプションもそのまま利用するようにしています。そのため、編集部で必要な作業はツールを数回クリックしたあと、メルマガ配信ツールで配信設定するだけで済むようになりました。このようにメルマガ業務の業務改善を進めた結果、配信頻度を隔週から毎週に増やすことができました。

Google Apps Scriptを使った業務改善の効果

今回Google Apps Scriptを使った業務改善の事例として、メルマガ作成の業務支援ツールを開発しました。

最初に準備したメルマガ作成支援ツールでは、記事データ取得とメルマガHTMLソースを自動生成する部分を自動化しました。それによって、これまで2時間近くかかっていた作業を10分に短縮できたとGLOBE+編集部から報告を受けています。

さらに、編集部の作業負荷上、2週間に1回配信するので手一杯だったのを、読まれた記事ランキングのメルマガを配信することを提案しました。
これは、アクセス解析ソフトのAPIを利用して、人気の記事を自動で取得する機能を用意し、先ほどのメルマガ作成支援ツールに組み込むことで、記事選択から記事情報取得、メルマガHTMLソース生成まで自動化しています。ボタンを2回押すだけでメルマガの文面が生成され、あとはメルマガ配信ソフトに設定するだけでメルマガが配信できるよう効率化しています。
その結果、2週に1回だったメルマガ配信を、1週に1回送ることができるようになりました。作業効率化した人気記事ランキングのメルマガもメルマガ読者の方によく読まれており、サイトのグロースに寄与することができました。

GLOBE+のメルマガは世界のトレンドを学べる面白い記事が配信されているので、オススメです。

私も毎週楽しみに読んでいるので、ぜひご登録ください。

(メディアデザインセンター・山本剛史)