水野美紀 例え雨合羽がパンツだけでも、自分は濡れても我が子は濡らさぬ…雨と親たちの戦い
雨だ。
ママたちは天気に敏感にアンテナを張っている。装備が増えるからだ。
子供を抱っこして、びしょ濡れで移動しているママを見たことがおありか。ないと推測する。それは、ママがアンテナを張って、
「あめ……来るわ!」
と事前に察知して、しっかり武装しているからである。
私もママチャリのチャイルドシートとカゴには常にカバーを装着し、保育園バッグの中には子供の雨合羽、玄関には大人用雨合羽を準備している。
我が子との移動では、傘をさすという選択肢はない。傘で片手を塞がれては、子供と荷物を抱えられない。ベビーカーだって、片手では押せない。
少し前なら抱っこ紐で傘、という選択はあったが、10キロ超えの現在、それで保育園まで送り届けると、あちこちにダメージを受ける。
だから、母になってから私は、初めてマイ雨合羽を買った。
雨の日の保育園の送り迎えの選択肢は3つ。
ママチャリ
ベビーカー
車
一番大変なのはチャリだ。
チャイルドシートにカバーをつけてあっても、子供に雨合羽を着せてから乗せる。保育園の駐輪場には屋根がないから、降ろす時に濡れてしまうのだ。
玄関で我が子にカッパを着せ、自分も着込み、長靴を履いて、まずは我が子を玄関でちょっと待たせて、荷物だけ先に積む。
それから我が子を抱えてシートに乗せる。
保育園まで移動して駐輪場で我が子を降ろし、建物入り口でカッパを脱いで、脱がせて、拭いて、畳んで、我が子を預けて、建物を出て、カッパを着込んで、再びチャリで戻る。
ちなみに、カッパはパンツもはかないと、漕いでいる間に膝がびちゃびちゃになる。
ああ、書いているだけでも面倒くさい。
雨の日の送り迎えは大仕事だ。
カッパって、脱ぐ時に結局、あちこち濡れるし。
一度雨の装備をうっかり忘れて、お迎えに駆けつけてしまったことがあった。
仕事先から保育園に向かう途中に雨が降りだした。保育園に到着する頃にはもう本降り。
私は傘も持っておらず、保育園にはベビーカー。雨カバーなし。
焦った。
保育園近くのコンビニに飛び込んで、雨合羽を探したところ、子供用のものはないが、大人用の雨合羽を見つけた。
それとビニール傘を一本購入して、保育園へ。
ベビーカーにはひさしがついているから、それがある程度は雨を防いでくれる。
大人用の雨合羽で足先までくるんで乗せれば、何とか濡らさずに帰れるだろうと思った。
玄関で買ったばかりの雨合羽を袋から取り出すと、それは上着ではなくてパンツだった。パンツのみ。
痛恨のミスである。
仕方がないのでそのパンツを我が子に履かせて、脇の下まで引き上げて、ひさしを降ろし、さらに傘でカバーしながら必死に帰宅した。
それからは、天気予報アプリを入れて、しっかりチェックするようになった。雨雲レーダーで雨雲の大きさや動きもチェック。送り迎えの時間にさえ降らなければいいのだ。
だから、朝起きて雨が降っていたら、すぐに雨雲の動きをチェック。10分後に止みそうならば10分ずらして出掛ける。
私一人でふらっと出掛けるなら、
「あら、やんだわ」
程度に思うだろう。
しかし、バタバタと大変な準備をして出かけた途端にやんだら、
「嘘だろおい!!!! ちっきしょーーーー!!!!」
と空に向かって叫びたい気持ちになる。
逆もしかりで、
「あら、降ってきたわね」
なんて冷静じゃいられない。
「いやあああああああ!!!! やーーめーーてーー!!!!!!」
と血眼でチャリを漕ぐ。
もうちょっと大きくなったら、一緒に傘を差して、歩いて登園できるようになるだろう。
そうなったらそれも楽しそうだな、と思う。
でも今はまだ、雨が恨めしいばかり。
今朝は夫が、車を出してくれるというので本当に助かった。
夫が我が子をチャイルドシートに乗せてくれて、私は荷物を持って、我が子の隣に乗り込んだ。
とたんに固いものが背中にぶつかって「ぎっ!!!」と声が出た。
庭の柵をDIYしようと夫がホームセンターで購入した材木が積んであって、後部座席の方に突き出していたのだ。
「あ、そうだごめん、それ降ろすわ」と夫。
「今日雨だし、明日は晴れるみたいだから明日降ろせば?」
「でも、雨の日に降ろしても、ぶつけたとこは腫れるだろ?」
「腫れる」と「晴れる」とをかけて、うまいこと言ったとしたり顔だ。
いつもならイラッとしそうなもんだが、今朝に限ってはまったくしない。
「うまい! 上手いこと言った!」
と返すと、不安そうな顔を返してきた。
なんでだよ!(さまーず三村さん風に)