おいしい韓国料理8つのコツと「雨の日はチヂミ」「誕生日はわかめスープ」の理由を料理研究家キム・ナレさんに聞く
韓国料理といえば、ニンニクを大量に使い、塩分も強め。ちょっとジャンクなイメージも付きまとう。キム・ナレさん自身も、最初に日本で料理教室を開いたときは、いわゆる定番レシピを教えていた。だが、やがて体調を崩し、料理教室を続けることができなくなってしまう。
そんなとき、生徒だったという人から、一通のメッセージが届く。
「先生の教室には行けなくなってしまったけれど、先生のレシピはわが家でずっと生きています。娘たちも先生のレシピをお母さんの味として覚えてくれるでしょう。そして娘たちが大きくなって家庭を持ったら、自分の家族のためにその料理を作ることでしょう」
キム・ナレさんは言う。
「自分の料理が誰かの家庭の味になり、それが代々受け継がれるかもしれない……それはとても素敵なことに感じられました」
メッセージに突き動かされるように、料理教室の再開を決意。早く体調を戻さなければいけないと、自分を元気にするための韓国料理を作るようになったという。旬の食材を食べること。そして、体に負担をかける味付けはやめることを意識。にんにくや塩分は少し減らして、シンプルで体も心も喜びそうな健康的なレシピを目指した。これが、「ナレ式」韓国料理へと発展していった。
たどり着いたのは、「8つのコツ」だ。
ここでは、この8つのコツを踏まえたナレ式の「チヂミ」と「わかめスープ」のレシピを公開。料理にまつわる韓国の風習も含めて、味わいたい。
■雨の日に食べたい海鮮チヂミ
韓国の人たちにとって、雨の日はチヂミを食べるのがお決まり。雨が降る日にチヂミ屋さんに行くと、必ずといっていいほど満席だ。雨の音がチヂミを焼くピチピチという音を連想させて食べたくなる、と言われているが、キム・ナレさんは「私にとっては子どもの頃からの習慣。反射的に食べたくなります」と話す。そして実は「チヂミ」は慶尚道あたりで使われる方言で、ソウルでは一般的に「プチムゲ」と呼んでいるという。
[材料(2人分)]
[作り方]
小ねぎは15センチ長さ(フライパンの大きさに合わせて調節する)、えびはひと口大、いかは5ミリ幅の輪切り、にんじんはせん切りにする。
いかとえびはさっとゆでて、キッチンペーパーで水気を拭き取る。
ボウルに生地の材料としょうゆを入れてよく混ぜる。
フライパンを弱火にかけて米油大さじ1をひき、ねぎを並べて入れる。その上に3の生地の半量をかけ、にんじん、いか、えび、赤唐辛子をのせる。残りの生地を全体にかけ、溶き卵を具材がくっつくようにところどころにかける。
ねぎに軽く焦げ目がついたらひっくり返し、中火にしてねぎのまわりに米油大さじ1/2を足す。
フライ返しでぎゅうぎゅう押さえながら火を通し、下の面がきつね色になったらひっくり返し、さっと焼く。
器に盛り、たれ(好みに応じて白ごまを加えても)を添える。
■誕生日に飲むわかめスープ
「わかめスープ飲んだ?」は、韓国でよく聞かれる誕生日のあいさつだ。もし、その時点でまだ飲んでいなかったら、わかめスープをごちそうしてお祝いするのが韓国流。わかめには、産後に伸びた子宮を収縮させ、母乳を出やすくするヨウ素が多く含まれていると言われている。そのため、韓国には産後21日間、わかめスープを飲んで体をケアする習慣がある。誕生日のわかめスープには、産んでくれたお母さんへの感謝の意味が込められているという。
[材料(4人分)]
[作り方]
干ししいたけは水2カップでもどし(もどし汁はとっておく)、しぼって薄切りにする。わかめは食べやすい大きさに切る。
フライパンを弱火にかけ、えごま油を熱して1のわかめを入れて炒め、全体に油がなじんだら、1のしいたけと薄口しょうゆを加えて軽く炒める。
煮干しだし、1のもどし汁、塩を加えて強火にする。沸騰したらふたをして弱火で30分ほど煮る。
塩で味をととのえる。
(構成/生活・文化編集部 森香織)