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ほんの記事

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2021年6月の記事一覧

真夜中のファミレスでだれにも言えない悩みに耳を傾ける鴻上尚史という存在

 新刊が出る度に、広告を作り、POPを作り、チラシを作る。宣伝課のしがないスタッフが、独断と偏見で選んだ本の感想文をつらつら書き散らす。おすすめしたい本、そうでもない本と、ひどく自由に展開する予定だ。今回は、『鴻上尚史のますますほがらか人生相談』を嗜む。  真夜中のファミレス、窓際のボックス席。こっそり好意を抱いていた女性から、妻子ある男を愛してしまい、もう立ち止まることができないと相談される。答えに詰まり頬張ったフライドポテトとぬるいコーヒーの苦み。窓を叩く雨音。もう20

差別は「感染症」が生み出す…黒死病から新型コロナまで“魔女”が生まれる理由

■黒死病の流行と差別が魔女イメージへ結晶化した背景  魔女狩りが猛威をふるった16世紀後半から17世紀前半の魔女のイメージは、この時代に突然生まれたわけではない。それは中世以来、被差別者の様々なイメージが蓄積され、作り上げられたものだ。この融合を引き起こした重要な原因が1346年から1350年頃にかけて大流行した黒死病(ペスト)である。  黒死病はネズミ類の病原菌であるペスト菌が、ノミを介して人間に伝播して発症する。患者からの飛沫、また皮膚や粘膜からも感染する。急性の感染

SNSに慣れすぎて文章はもう3行しか書けない!という人でもスラスラ長文が書けるようになるコツ

 SNSに慣れすぎたせいなのか、「3行くらいしか文章が書けない」という人がいる。気の利いた文章を書く以前に、人に伝えるための文章をどう書いていけばいいのかが、わからないというのだ。  朝日新聞元校閲センター長で、現在、未來交創株式会社代表の前田安正さんは、3行しか書けなくても、それを5行、10行にする方法があるという。前田さんの著書『3行しか書けない人のための文章教室』から、とっておきの方法を紹介する。 「文章を書くときには5W1Hを使えばいいんだよ」。そんなアドバイスをし

親は、何を教えるかより、何を教えないか、を考えるのがいい

「親は、何を教えるかより、何を教えないか、を考えるのがいい」  こう話すのは、『子どもの地頭とやる気が育つおもしろい方法』(朝日新聞出版)の著者、篠原信先生だ。篠原先生は、学習塾を主宰し、不登校児や学習障害児、非行少年などを積極的に引き受けて、生徒全員の成績をアップさせた経験を持ち、科学の視点で子育てにかかわる活動を続ける、異色の科学者。長年、子どもたちの指導だけでなく、育児相談にも関わってきた篠原先生が、子どものやる気を伸ばす「驚くだけ」の子育て法を紹介する。  私は、赤

第三舞台に憧れたかつての演劇青年が、20年の時を経て鴻上尚史さんとちょっとだけ関わりを持った話

 新刊が出る度に、広告を作り、POPを作り、チラシを作る。宣伝課のしがないスタッフが、独断と偏見で選んだ本の感想文をつらつら書き散らす。おすすめしたい本、そうでもない本と、ひどく自由に展開する予定だ。今回は、『鴻上尚史のますますほがらか人生相談』を嗜む。 「朝日のような夕日をつれて」「スワンソングが聴こえる場所」「ハッシャ・バイ」「天使は瞳を閉じて」「ビー・ヒア・ナウ」「スナフキンの手紙」……  これらはすべて鴻上尚史さんが書いた第三舞台の上演台本を書籍化したものだ。高校

子どもの言語能力が格段にアップする「見たもの実況中継」とは

 学習塾を主宰し、不登校児や学習障害児、非行少年などを積極的に引き受けて、生徒全員の成績をアップさせた経験を持ち、その後もボランティアで育児相談や子どもの学習指導、親や教育関係者らと活発に意見交換をするなど、科学の視点で子育てにかかわる活動を続けている、異色の科学者・篠原信先生が著書『子どもの地頭とやる気が育つおもしろい方法』(朝日新聞出版)の中で明かした、子どもの言語能力が自然とアップする方法を、ここで紹介します。  勉強の苦手な子は、単語でしかしゃべらないことが多いです

5万人が処刑…「魔女狩り」に異を唱えた実在の医師が根拠とした病気とは?

 社会で「常識」として信じられていることに異を唱えることには大変な勇気が必要だ。それも現在のSNSの投稿で見られるように匿名によってではない。実名で公然と自分が正しいと信じる見解を述べ、そして実際に行動を起こすのである。  魔女狩りが猛威をふるった今から450年前のヨーロッパに、「常識」だった魔女狩りに異を唱え、魔女とされた人々を救おうとした一人の勇敢な男がいた。現在SNSでも話題の歴史漫画『魔女をまもる。』(槇えびし著/朝日新聞出版)の主人公、医師のヨーハン・ヴァイヤーであ

「ともかく人を褒める」をやめると人間関係が円滑になる

『やめる勇気――「やらねば!」をミニマムにして心を強くする21の習慣』(朝日新聞出版)の著書がある、産業カウンセラーで職場のメンタルヘルスの専門家である見波利幸さんは、ともかくストレスにつながることはすべて「やめる」ことを推奨しています。今回は、人間関係を円滑にしようとついついやってしまう「とりあえず褒める」の上手なやめ方をご紹介します。  職場で信頼し合える人間関係をつくることの大切さを、ほとんどの人は実感しているでしょう。  私のクライアントの中に、「できるだけ人を褒

※終了しました※【試し読み】窪美澄『朔が満ちる』第一章・第一節を期間限定一挙公開!

「だいぶヒリヒリした物語です。――窪美澄」  父よ、母よ、この憎しみが消える日は来るのだろうか――  さまざまな家族のかたちを模索する窪美澄が挑む問題作『朔が満ちる』。  今回描くのは、『暴力』によって家族を毀損された男女の、それぞれの「決別」と「再生」の物語です。(タイトルデザイン:大島依提亜)  このヒリヒリした切実さこそが、著者・窪美澄さんの真骨頂と感じている読者の方も多いと思います。ぜひこの機会に、この物語に触れてください。 物語の冒頭・第一章 第一節を6月8

隣に座るだけで子どもの集中力が格段にアップ! その理由とは

 学習塾を主宰し、不登校児や学習障害児、非行少年などを積極的に引き受けて、生徒全員の成績をアップさせた経験を持ち、その後もボランティアで育児相談や子どもの学習指導、親や教育関係者らと活発に意見交換をするなど、科学の視点で子育てにかかわる活動を続けている、異色の科学者・篠原信先生が著書『子どもの地頭とやる気が育つおもしろい方法』(朝日新聞出版)の中で明かした、子どもの集中力が自然とアップする方法を、ここで紹介します。  遊んでばかりだった男の子が、お父さんから次のように言い渡

「ねえ、なんで、歴史が好きなの?」部長のどストレートな問に対する答えと、明治維新と戊辰戦争の真実

 新刊が出る度に、広告を作り、POPを作り、チラシを作る。宣伝課のしがないスタッフが、独断と偏見で選んだ本の感想文をつらつら書き散らす。おすすめしたい本、そうでもない本と、ひどく自由に展開する予定だ。今回は、週刊朝日ムック『歴史道 Vol.15』を嗜む。 「ねえ、なんで、歴史が好きなの?」    わが部署の新部長が放った着任早々のどストレートな質問。前任者もそうだったが、この部署の上司は速球が得意な本格派が多いようで、変化球にヤマを張りがちな私は少々苦にするタイプだ。しかし

職場の課長が休職することになり、復帰まで課長代理を務めることになったAさんの話

 ストレスを感じやすく心が折れやすい人には、共通点があるといいます。産業カウンセラーで職場のメンタルヘルスの専門家である見波利幸さんが著書『やめる勇気――「やらねば!」をミニマムにして心を強くする21の習慣』(朝日新聞出版)で紹介している事例から、ストレスを軽減させる方法を紹介します。  職場の課長が休職することになり、復帰まで課長代理を務めることになったAさんの話です。  Aさんにとってマネージャー職は初めての経験でした。しかも、自分の本来の仕事に加えてのマネジメント業