妄想物語 [ M/星が瞬く夜に ]
Mは一枚の切符を手に入れた
何やらこの列車は光へと進むらしい
地下へと降りる階段の先には汚れた列車が止まっていた
Mは怖めず臆せず乗り込んだ
しばらくして扉は閉まり暗闇の中を列車は走りだす
Mは前方の景色が気になり前の車両へと足を運んだ
自分以外にも数人の女性がこの列車に乗っている事は分かったが景色が見れる事はなかった
薄汚れた窓には不安なMの顔が映っているのみだった
スピードを落とす事なく暗闇をひたすら走り続ける列車
どのくらい時間が経過したのだろう
終わりなき闇の旅が続くような感覚だけがMを押し潰していった
光?それはどこ?次の駅は?
先の見えない闇の中でMは涙した
降りたい……そんな言葉が聴こえてくるかのように
しばらくしてから女性が声をかけてきた
ただ一言
『それでいいの?』
優しい言葉なのか突き放す言葉なのか分からないままMは顔を横に振った
それから二人は他の女性とも合流し何度も何度も会話を重ね互いを深めあった
『ねぇ先頭車両行ってみない?』
誰かの声に対しMは行ったところでここと変わりはしないという気持ちからか目を合わせられず窓の方に顔を移した
『ねぇ行こうよ、ねぇねぇ』
肩を叩かれ一瞬驚いたMであったが、希望を探る明るみのある声にも反応して心臓も更に高鳴り、暗い気持ちが晴れていくように窓には若干照れたようなMの笑顔が綺麗に反射していた
『うん わかった 行く』
希望を持てたのはここに集まった仲間がいたからなのか、何か景色が見えると信じてるかのように皆ではしゃぎながら先頭車両に向かった
そして最後の車両の繋ぎめのドアに来た
『なぁなぁ目を閉じて行くってのはどう?』
笑いながら誰かが言った
『うん、いいね』とMは答えた
彼女達は目を閉じながらゆっくりと歩みを進めて先頭車両の一番前までたどり着いた
しかし誰一人として直ぐ様目を開けれる者がいない為に沈黙がしばらく続いた
そんな沈黙をMが破った
『一緒に開けよう……いくよ!せ~の!』
『……………………』
目を開けた瞬間に答えが出た
そこは暗闇だった
溢れんばかりの光があるなら目を閉じていても瞼で感じるはずだと皆わかってはいた
それでも光を信じた
私達はそこへ向かう列車に乗ったのだからと
悲しみと闇が皆を包んだ
その場に座り込む者、列車の中で天を仰ぐ者
皆が肩を落とした
『ちょっと待って……違う……違う!皆ちゃんと見て!』
Mが窓際まで前のめりになり騒ぎたてた
そして皆もMに重なり合うように外を眺めた
そこにはちゃんと景色があった
地下のトンネルをただ走ってる景色ではなかった
夜の暗闇でハッキリと見える訳ではないが地上の景色の中を列車は走っていた
見上げると夜空には 星が瞬いていた
現在のMは小さな体に光を浴び
最高の景色を眺め立っている
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