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3年目の振り子 ~北海道からの沖縄移住記 2020年10月~

 スマホの地図アプリに自分のロケーション履歴が残されている。ランキング形式のそれを見ると、旭川市と当麻町で住んでいた地域が最も訪れた場所となっており、次にくるのはもう今借りているマンションと、今の会社になっていた。沖縄では観光地もだいぶ行ったし、いくつかの街に友達もできた。日本の北の端と南の端しか知らない私の地図の中で、沖縄という小さな島は訪問履歴の点で赤く埋め尽くされそうだった。沖縄に移住して二年がたとうとしている。
 この10月、国家試験である通関士試験を受けた。3ヶ月前のこの記事の中で、そのために時間を割くなら絶対合格したいとタンカを切ってしまったけれど、文字にして誰にともなく約束させてもらったおかげで、最後まで頑張れたような気がする。勉強期間中は夏まっただ中で、友達も増えた時期だったので、海や山で遊ぶことをほとんど我慢しなかったけれど、なんとかメリハリをつけて取り組んだ結果、合格点を超えることができた。
 台風シーズンが去り、ギラギラした夏も去ってしまって、朝晩は途端に涼しくなったけれど、決めたことをやり遂げた喜びが、温泉のように湧き上がり私をあたためてくれている。試験を受ける前と後では、自分を見る目も変わった。空いた時間をどう使おうか、そして沖縄の3年目はどうしようかということも、今まで以上に考えている。ここへきて初めて、今の状況を、日本という島国の南の端っこに立っている自分を、高いところから冷静に見おろしている感覚だ。あなたはこの先どこへ行きたいの? そこにはどうやって行くの?
 仕事や生活や台風に慣れようとしていた去年とは異なり、この夏は国家試験勉強と、友達と遊ぶことに夢中になってあっという間に過ぎた。過ごしやすくなったこれからは、大好きな緑の中の散策と、内省の季節だ。2年前と今とでは、大事にしているものが笑えるくらい違う。まるで北海道と沖縄の隔たりのように極端な振り子が私の中にあるけれど、いつまでも揺れ続けていたくはない。選択。これが3年目のキーワードなのだろうか。


あさひかわ新聞2020/10/20号「沖縄移住記24 果報(カフー)を探して」掲載

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