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沖縄の色と匂い

私にとって、沖縄を沖縄たらしめるもの。それは色と匂いだ。当たり障りない答えみたいだけれど、沖縄を知らずに北海道でも同じように考えただろうか。いや、北海道では間違いなく、四季の移り変わるど真ん中に暮らせることだと答えただろう。

沖縄では色も匂いもとても濃い。それでいて、どちらもいつも湿り気を帯びて五感を強く揺さぶる。
ふと風に乗って訪れる濃厚な花の香り。春の夜香木、百合、月桃、梔子。夏のプルメリア。
香りを印象に残させるのは花たちだけではない。夏も冬も旺盛に茂る沖縄の緑。特にあたたかくなりだした3~4月の"うりずん"のころ。日を追うごとに風の中に緑の匂いが濃くなるのを感じる。那覇空港に降り立つともう花ような甘い香りがする気がする、と友人が言っていたけれど、それは花と錯覚させんばかりの濃密な緑の匂いではないだろうか。

そして目に焼き付くとりどりの色。リゾート感溢れるエメラルドブルーの海もいいけれど、緑が好きな私は、凶暴なまでに生い茂る木々や植物の緑と、それらが作る光と影の中で存在感を放つ花々に目を奪われる。縦に横に枝を伸ばす大木をも覆いつくし、道端に緑の巨大な壁を作る野朝顔の鮮やかな紫。濃い緑に映える真っ赤なハイビスカスやサンダンカ、花丁子。小さな鈴がそよぐような涼しげな紫色のタイワンレンギョウ。七変化とも言われ様々な色の組み合わせを持つランタナ。南国感いっぱいのピンクが眩しいブーゲンビリア。大ぶりの黄色い花が目を引くアリアケカズラ、透明感のある黄色が美しいユウナ。薄暗い森の中で目を奪われる深紅のインパチェンス。最も寒い季節を彩る濃いピンク色の寒緋桜。

いつかきっと沖縄を離れる日が来るだろう。
これは、その日まで私の五感を通り過ぎた色と匂いの記憶だ。

PHOTO:名護市にある公園の寒緋桜

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