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砂浜の感触はこんなにも柔らかかった【毎日note】#73

この土日、例にもれず沖縄北部の水辺を釣り歩いた。私にはじめてマトフエフキと出会わせてくれた浜辺に行って、わかってはいたものの愕然とした。数100メートル続く砂浜を信じられない量の軽石が埋め尽くし、薄茶色の天然の砂は半分以上が見えなくなっていた。おそらく、先週よりずっとひどくなっている。

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潮が満ちたり引いたりしても、波打ち際がどこなのかわからない。軽石が、海水を吸い込むように埋め尽くしている。サンダルで海に向かって歩いていくと、徐々に軽石が浮き上がり、下に海水があることがわかる。

水面を埋め尽くした細かな軽石の上を、うっかり乗りあげてしまったのだろう、ウミヘビの赤ちゃんが、陸のヘビのように這っていた。このまま海水に戻れず軽石の上をさまよったら、干からびてしまうのではないか。そう思うと同時に、軽石で水中が見えない海辺を歩くのは、どこに危険な生物がいるかもわからず、怖いものなんだと分かった。

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海から浜に戻る。軽石は大きなものと小さなものが交互に筋になって砂浜の上に積みあがっている。その上を歩くとザクザクと音が鳴り、まるで溶けかけたシャーベット状の雪の上を歩くような感覚だった。サンダルと足の間に軽石が挟まって痛いので、サンダルを脱いで裸足で歩いた。

誰かが集めてどこかへ運んだのだろうか、一部、不自然に軽石が取り除かれ、元の砂が見えている場所があった。そこに裸足の足を下ろすと、ゴツゴツじゃりじゃりした感触から突然、ふんわりと包まれたようなやさしい肌触りに変わった。小さな軽石よりもずっとずっと細かなベージュ色の砂は、やわらかく、きめ細やかで、とても気持ちがよかった。

海辺にはいつも、釣りをするために訪れていて、足裏をしっかりと保護してくれるKEENのサンダルがおともだったから、長いこと裸足で砂の上を歩いていなかった。砂って、こんなにもしっとりとやさしい感触だったんだ。

私たちが軽石によって、一時的だとしても、失ったものは計り知れなかった。それが、やわらかな砂を踏みしめた足の裏から実感として押し寄せ、しばらく呆然と立ち尽くした。




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