公式の供給が20年以上も途絶えていたのに突然日本でも公開されたモータルコンバットをずっと追い続けてきたオタクが君たちに映画を見て欲しくてあれこれ書いた

はじめに

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みなさんこんにちは。かつてモータルコンバットがきっかけで洋ゲーの魅力に取り憑かれた、バーチャルなんとかの朝霧きいねです。映画の俳優推しや著名人の絶賛コメントといった日本でのプロモーションに一抹の不安を覚えた私が、モータルコンバットについて知ってもらうために記事を書きました。

この記事を読んだあなたはモータルコンバット沼、もとい穴(The Pit)に落ちて穴底でTechno Syndromeを歌いながらライデンガンバレー!!と裏声で叫び色違いの忍者装束を纏うことになるでしょう。

モータルコンバットってなあに?(Test your Might!!)

モータルコンバットとは1992年から続く格闘ゲームの長寿シリーズであり、本作の武術大会の名前です(以下、長いのでMKと略します)。

エルダー神(Elder Gods)によって作られた6つの世界、その世界同士の存亡をかけて太古より行われてきた戦いがモータルコンバットトーナメントです。地球(Earthrealm)は魔界(Outworld)に9連敗しており、あと1敗すると支配されてしまうというのが前置きです。Gガンダム世界とガンダムファイトのような関係ですね。Outworldを魔界と呼ぶのはかつての日本語ローカライズの名残りなのですが映画関係者の本気度を感じて古いファンとしては嬉しいです。

そんなMKの魅力はなんといっても、中国拳法や忍者に怪物、流血や身体欠損を伴う残酷で過剰な暴力表現といった、子供が大好きな(そして親御さんが目を覆うような)要素全部乗せなところ。

ごった煮のアジア観をベースとした何でもありの世界に残虐表現、それがMKなのです。

浅野忠信や真田広之が目当ての方は魔界といった世界観に面食らうかもしれません。映画公式サイトで雰囲気を予習しておくのが良いでしょう。
https://wwws.warnerbros.co.jp/mortalkombat-movie/

ところで、俳優推しや著名人の絶賛コメントといったプロモーション手法…もしやワーナーブラザースジャパンはこの映画をアベンジャーズのようなスーパーヒーロー物として売りたいのではと勘ぐってしまうのですが、実際のところどうですか。そう考えればグロいシーンはあれど、世界中から忍者や映画スターが集まって地球の脅威と戦うので実質アベンジャーズだという気がしてきます。MKのことはグロいアベンジャーズだと思って楽しんでください。

グロはさておき、アクションやVFX、世界観は素直にかっこいいので、ビビっときた方は是非見ていただきたいです。コメディリリーフのカノウ(35か国で指名手配になっている犯罪組織のリーダー)も良い味出してますし、かわいいよ。でじこのように目からビームも出ます。

浅野と真田と映画の人(You will die mortal!!)

浅野忠信のライデンは白目です。ゲーム原作の映画で更に白目のキャラなのによくオファーを受けてくれたと思います。1995年の映画版のライデンはフランス人だったのでようやく元に忠実なアジア人になった。ありがとう浅野忠信。

真田広之の演じるスコーピオンはサブ・ゼロと1、2を争う人気のキャラクターです。サブ・ゼロに妻子を殺され復讐のために蘇る、ほぼニンジャスレイヤーのような人です。元々ゲームの主人公はリュウ・カンというブルース・リーのような拳法家でしたが、アメリカ人は忍者が好きなのでサブ・ゼロとスコーピオンが大人気となりリュウ・カンは殺されてゾンビになりました。映画でも2人の忍者が中心でリュウ・カンは脇役です(かわいそう)。

でも何だかんだでみんなに見せ場があるのでそこは安心して欲しいです。心臓を引っこ抜くしアッパーは重要だし地球を一周して背後に回るし帽子はホーミングして手元に返ってくる。おなじみの技がいっぱい出てきてゲームの映画化としてとても正しい。

あと大事なのが主人公のコール・ヤングです。この人は映画のオリジナルキャラクターです。コールに対して周りがあれこれ説明してくれるのでMKを知らない方にも優しい便利な役柄です。

ゲームは日本以外で大人気(Let's Mortal Kombat begin!!)

第一作目は1992年、ストリートファイターIIの翌年にリリースされました。日本ではプレイステーションのMKトリロジーを最後に販売が途絶えているためもはや知らない方も多いかもしれませんが、MKは世界的には大人気で世界で1番売れている格闘ゲームなのです。

MK人気に脅威を感じたカプコンUSAはブランカがMKのカセットを握りつぶすCMを作りました

最新のナンバリングは11で、スト2ダッシュのようなアッパーバージョンやスピンオフ、携帯機のアレンジ移植なども含めると20作以上にも登る長寿シリーズとなっています。3DOなどの一部のハードを除き、発売時のほぼ全ての機種で出ていることからも人気の程が窺い知れます。

日本でも売られていた頃のMKは実写取り込み、残酷なフィニッシュ、アジアをごった煮にしたような奇妙な世界観とBGM、怪鳥音を叫ぶキャラクター、ライデン、ゴローといった日本風のネーミング、Fatalityを究極神拳と訳す一風変わったローカライズなどからイロモノ扱いされていた方が大多数だと思います。でも実は実写取り込み時代からコンボゲーの側面があったり、PS2時代は3種類の格闘スタイルを切り替えるシステムがあったりと、格闘ゲームとして出来がよく、意欲的なシリーズなのです。MKの流行に乗じた実写格闘ゲームが成功しなかったのは、ゲーム性をおろそかにしたせいかもしれません。

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みなさんの覚えているMKはこんなのだと思います

イロモノ世界観も徐々に垢ぬけたのか洗練されたのか普通にカッコよくなり、初期シリーズのストーリーは同時代の他の格闘ゲーム同様に合って無いようなものでしたが、それも今では壮大なストーリーが繰り広げられています。最新作ではとうとう時空も超えるようになりました。かつての敵との共闘や和解、リュウ・カンが死んだりゾンビになって蘇ったり敵になったりキタナと結婚したりといったキャラクターの遍歴も目が離せない要素です。

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最新作のMortal Kombat 11。垢ぬけました

ストーリーを彩る多様なキャラクターたちは大きな魅力となっています。例えばMK2では少林拳、少林拳、忍者、忍者、忍者、神、米軍特殊部隊、魔界の遊牧民族、ハリウッドスター、魔界のプリンセス、プリンセスのクローン、少林寺の破戒僧と実に様々です。なんだか偏りを感じますがおそらく気のせいです。なお上記に加え隠しキャラ3人がおり、うち2人は忍者となっております。

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昨今の多様性にも配慮されたキャラクターたち

このようにシリーズを通して人気なのが忍者キャラクターで、なんと20キャラもいます(忍者だけでKOFができそう)。アメリカ人は忍者が好きなので忍者キャラの少なかったMK3は不評となり、短期間で作られたアッパーバージョンのUMK3で大量の忍者が追加されました。しかしヤケクソのように忍者を増やしたUMK3で加減しろ莫迦と言われたのか、MK4では4人に減らされました。やはり加減を知らないようです。

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ポケモンが言える子でもMKの忍者を覚えることは難しい

なお、サブ・ゼロは当初は中国忍者でしたが途中から中国に忍者はいないと気付いたのか、暗殺組織のメンバーという事になりました。これ以外にも死んだキャラが続編でしれっと生きていたり設定の変更や矛盾、後付けはいつものことなので素直な気持ちで変化を楽しみましょう。ちなみに、上のキャラクターセレクト画面ではサブ・ゼロが3人います(兄が2人で弟が1人)。

他にも、ジョニー・ケイジの金的、対戦相手と和解するFriend Ship、アーケード筐体を落として殺すリュウ・カンのフェイタリティ、バグを隠しキャラだと言い張って生まれたErmac(名前の由来はerror macro)、アッパーをすると画面右下に現れるトッシーおじさん(Dan Forden)、製作者2人(Ed Boon、John Tobias)の名前を逆さ読みにしたNoob Saibot、モーションキャプチャーのおじさんをプレイアブルにしたMokapといったユーモラスな部分も欠かせない要素です。残酷さだけではなくユーモアも兼ね備えたのがMKなのです。

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Mokap

映画を見て興味を持ってくれたあなたに(Choose Your Destiny!!)

ゲーム本編を遊んで貰いたいところですが、もうずっと国内未発売ですし、国内で販売されていた中古の旧作を探すのも難儀です。ただ、映画については1995年版とその続編がAmazonプライム・ビデオで配信されていますので、2021年版の映画が気に入った方ならそちらも楽しめると思います。

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1996年のコミックボンボン夏休み増刊号に掲載された読み切り。映画は13歳以上対象だけど…漫画の最後にセガサターンのMK2完全版を読者プレゼントにしていたので完全に駄目でした。

主人公は当時のゲームと同じくリュウ・カンです。香港の新聞に日本語が出てきたり、中国人のリュウ・カンがかつて修行した光の寺院がどう見てもタイのそれだったり、モータルコンバットの会場に「至命格斗」と書かれたのぼりがたくさん立っていたりと、間違ったアジア観だった頃のMKを見ることができます。

サブ・ゼロやスコーピオンのアクションの迫力は今見ても色褪せませんし、ゲームそっくりの魔界の美術、VFXや3DCGを使った映像は当時基準でも相当力の入ったものだと思います。名曲Techno SyndromeをBGMにしたバトルシーンは否応なしにテンションが上がります。

ストーリーは2021年版と同じくゲーム版MK1と2のアレンジなのですが、後付け設定が盛られる前で比較的ゲームに忠実な内容になっています。やはりFataliryやFlawless Victoryといったゲームの台詞をしゃべる演出もありますが、シャン・ツンが言う点でよりゲームに忠実です。MK2でラスボスのシャオ・カーンがラウンドコールをするオマージュになっています。

モータリアンの悲しみの歴史(Prepare Yourself!!)

日本でのゲームはPSのMKトリロジーを最後に20年以上も発売されておらず、PS2の5作目(Deadly Alliance)がコーエーテクモ販売で発売リストに上がったこともありましたが、Fataliryの身体欠損が許されなかったのかいつの間にか立ち消えになっていました。

映像作品についても1995年と1997年の映画はビデオリリースされたものの、テレビドラマのMortal Kombat: ConquestがT-Xというタイトルに改題されるという悲劇がありました。これはターミネーター3で女ターミネーターを演じたクリスタナ・ローケンの登場回をまとめて関連作品と混同するようなタイトルにして売るという酷いもので、国内のMKの知名度を考えれば仕方のないことだったのかもしれませんが…それにしてもアルマゲドン2007みたいなパチモノタイトルにする必要ある…!?

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ターミネーターっぽいタイトルロゴでは隠し切れない魔界の雰囲気

と、国内におけるMKの供給は長らく途絶えており、だからこそ開発会社がワーナー傘下になったおかげか、できの良い新作映画が作られて日本でも公開されたというのは奇跡のような出来事なのであります。映画が好評のようなので再びゲームが出る日が来るのも期待してしまいます。

秋葉原で北米版のゲームを探したり、2サークルくらいしか出ていないコミケに行っては同人誌を買った冬の時代はもう終わりにしたいのです。

子供たちの間で脊髄引っこ抜きが流行るような社会現象にならないかな。

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