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ふと思い出す彼のこと

昨夜眠りに落ちる前、彼のことをまた思い出していた。
20歳の時にバイク事故で死んでしまった、小中学校の同級生の彼のことを。
あれから10年経っているのに、未だに思い出す。

彼と私は特別仲が良かったわけではない。
そうは言っても小中合わせて6年間同じクラスで時間を共にしたから、彼が亡くなったと聞いた時は衝撃だった。
彼はかなりのいじめっ子で、特に中学3年間は色んな人を標的にしていた。
だからなのか余計に彼の死が信じられなかった。

彼が亡くなった時、私は全くそれとは関係ない事情で実家に帰省していた。
地元住みの同級生たちが彼の実家に行くというので、私も慣れない喪服を着て遺体を見に行った。
綺麗な死に顔だった。
こんなに簡単に人は死んでしまうのか、と思ったのを覚えている。

あれから10年が経った。
私や他の同級生たちはみんな30歳になった。
同級生たちの近況はほとんどわからないが、それぞれ人生の駒を進めているはずだ。
私も、この10年でうつ病になったり結婚したりした。
自分が進めているのかどうかは微妙だが、少なくとも彼よりは進んでいる。
生きているから、進んでいる。

人はあっけなく死んでしまう。
彼が生きられなかった10年間を、私は生きてきた。
そう考えるとなんだかよくわからない気持ちになる。
本当に、なんと言葉にしたらいいのか。
彼の分まで生きる、みたいな気持ちはない。
死にたいと思う時もある、たくさんある。
でも私はここまで生きてきた。

人というのは儚い存在で、いずれみんな死ぬ。
だから何というわけではない。
これからも私は、たまに彼のことを思い出すだろう。
そしてなんとも言えない気持ちを繰り返すのだと思う。

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