今年の音楽10選 2022

こんばんは。今年ものこりわずかです。私の主観では半年くらいしか経ってない気がするのですが、これは歳を食ったということなのでしょうか。悲しいです。
さて、年末なので今年ディグった音楽のなかでも、「これは!!」という曲を紹介したいと思います。ちなみにあくまで私がここ一年で「見つけた」音楽で、今年リリースされた曲ではないので、そこのところよろしくお願いします。あと、今回は素直に今年聴いたものをあげていくのでネット上に音源(MVや配信、試聴など)がない曲もあります。気になる人はCD買おう!!(ダイマ)

1.長谷川白紙「o (__*) 」

これは衝撃的でしたね。シンセサイザー専門誌のFilterで横川理彦さんが紹介していたのをきっかけに知ったのだと思いますが、最初見たとき「和製スクエアプッシャーじゃん!!」と大興奮したのを覚えてます。基本的にジャズにブレイクビーツとエレクトロニクスが絡んでいる点で非常にスクエアプッシャーと作風が似ているのですが、特筆すべきは歌詞の絡み方!!非常に独特な歌詞を無理やり音程にねじ込んでいるような具合でエグミがすごいんですね。この歌のリズムも氏の魅力でしょう。こんなに貫禄がついていてまだ大学生というのも驚きです。これからのリリースも楽しみです。

2.Pizza Hotline 「EMOTION ENGINE」

これはyoutubeのおすすめに出てきたやつですね。ジャケを見れば分かりますが、ヴェイパーウェイヴ系です。近年はどうもヴェイパーウェイヴやフューチャーファンクと、ブレイクビーツを絡ませるのが流行ってきているようで、これもwindows95(このチョイスがまたヴェイパーウェイヴっぽい!)の起動音をまんまサンプリングしてブレイクビーツを載せた曲。著作権の関係で、Spotify等では配信されていないというwww(確か元の起動音はブライアンイーノ作曲だったような気がします)。ただ、単にサンプリングして載せてるだけではなく、きちんと自分で作ったシンセリードやベースと絡ませたりしていてなかなか心地いいです。PizzaHotlineはたまにBandCampとかでアルバムの無料クーポンとか配ってるので(大体即使えなくなってますが)、機会があれば音源をゲットしてみるのもいいと思います。ブレイクビーツといっても派手派手じゃなくて、ヴェイパーウェイヴにはあるまじき爽やかさがあるのも特徴的ですね。いや素晴らしい。

3.Astrophysics 「You're killing me」

詳細はこちら参照、今年一番のお気に入りです。

4.ぱちぱちコズミックコンピューター「🏩こんなコズミックは嫌だ🏩」


(色々とエグいので閲覧注意)
衝撃度で言えばこれが今年一番。見たときは思わず「日本のサブカルはまだ死んでない!!」と叫びました。これこそサブカルアングラ最前線ではないかと。ロリータ趣味から派生した近年の地雷系ファッションとインターネット、サブカルの病みと闇と性をそのまま、モザイクをかけることなく容赦なく描写するリリックと、浮遊感のあるトラップのトラック。そして、明らかにvaporwaveの流れに乗っかった無駄に平成感の強いMVの演出。同様の傾向のある音楽には一昔前のアーバンギャルドやその周辺の白塗りニューウェーブ系のバンド(メトロノーム等)などがあると思うのですが、それらが一種の文学性やインテリ性、批評性などを醸し出している(P-MODELや筋肉少女帯の影響でしょう)のに対して、彼女らは全くその辺りの影響を受けていない、インターネットと強く結びついた現代サブカルの暗黒面の「ネイティブ」な香りが非常に強いです。この暗黒面に「ネイティブ」な香りというのは、アメリカのダウンタウンの路地裏で生まれたヒップホップの本来の形にも通ずるものなので、ヒップホップの派生であるトラップとの親和性も高いのかもしれないですね。このような容赦ない尖った表現をkawaii文化の皮を被ってやってしまうそのセンスには畏怖の念すら抱いてしまいそうです。


5.新宿ゲバルト「表現者たち」

(試聴用音源等なし)
はい神。イントロのサイレンと戦前のラジオのようなアナウンスはもはやお家芸。その後の突き進むようなリズムに、様々に変調された八分音符の矩形波のリフが面白いし、そこからの戸田さんの歌が最高。詩と曲の世界観が最高にマッチしてる。「心では満たされない腹が生活を選ぶ」「お願い私を殺して二度と置いていかないで正しいとか絵や歌なんて全部どうでもいいから」「繰り返した命懸けが命乞いに見えてしまうわ」など極限状態の創作者の苦悩が、悲痛の唄として響いてきます。こういう歌詞が書けるようになりたい。このデカダンで退廃的な雰囲気なのにピコピコで意外とキャッチーなのがまさに新宿ゲバルトの真骨頂という感じですね。

6.Mitaka Sound 「Neon light」

今年はテクノ(クラブミュージックの方)もかなり漁りました。特に今まで名前は知ってたけどちゃんと聴いたことなかった人の音源を買ったりすることが多かった気がします。このMitaka Soundさんも以前からたまにSoundCloudに上がってるLive音源を聴いたりなどしていたのですが、今年になってM3で音源を買いました。使用機材としてElektronのAnalogRythmやmoogのDFAM等があげられている通り、かなりリズム隊がアナログ音源の暖かい音色で特にトムなどの脇役的な音色(おそらくDFAM)の使い方がうまいなと感じました。また、全体的に軽くダブテクノっぽい傾向があるアルバムの中でもこの曲はメロディがはっきりしていて、リバーブの深くかかったアンビエントのなかでもアナログっぽい暖かいリードの音色が堂々と響いていて、ネオンライトの題にふさわしいサウンドスケープが展開されています。ただ、曲単品で聴くよりもアルバム通して聴いた方が個人的には好みかなと思ったり。

7.福間創 「Sistina」

今年の元旦に亡くなった元p-model、ヤプーズの福間創さんの曲です。福間さんはクラフトワークフォロワーで作品のなかにもクラフトワークの影響が多く見られ(ex:衛星Alone(p-model)のシーケンスなど)、同じクラフトワーク好きとして(勝手に)シンパシーを感じていて、氏の1stソロアルバムも高校生の頃に入手したのですが、今年で公式通販が閉店してしまうということで、急いで2ndソロアルバムやEPを買いました。そのなかでも一番好みだったのがこの曲です。まだリズムのはっきりしていたエレクトロニカ~テクノポップ的なFlowersから完全にドローン~ミュージックコンクレート的なアプローチになったThis is our musicへの過渡期な雰囲気で、調性音楽と音響作品ぽい雰囲気のバランスがとてもちょうどいいのです。また、前半はアンビエントっぽい感じで後半でリズムが入ってきてノリがよくなるのも好き。音色もピコピコというには少し有機的な、とてもかわいらしい音色なのも素敵。福間さんの作品は現在WEBショップが閉まっていて公式通販では入手できませんがおそらく中野のショップメカノでは(在庫があれば)まだ入手できるので、欲しい人はメカノをチェック!

8.G-schumitt「Cathedral Junky」

一気に趣向が変わりますが、これも今年たまたま聴いた曲で、良かった曲です。サンプラー(あるいはテープの切り貼りか?)を使った左右振りの激しい金属音のシーケンスにパンク的な繰り返しを元にしたベースとギターリフに、ボーカルのsyokoさんのどこか尖ったようなボーカル、そしてゴシックな風貌は、後の時代に登場するアリプロジェクトを彷彿とさせます。また、途中スピードアップして別のパートに入ってから戻る構成などは(その歌の内容も合わさって)P-MODELのpotpourriを強く意識しているような気もします。いかにも80年代後半な硬質なlinndrumのようなドラムも好みです。ただ、G-schmittの他の曲を聴くと意外と明るいパンク調の曲が多く、こういう暗くてゴシックぽいポストパンクな曲は少ないみたいですね。また、G-schumittの音源は現在入手困難のプレミアものでこれを聴いてCDを買おうとしたら万単位の値段がついててびっくりしましたね…再発してほしい…

9.ムーンライダース「9月の海はクラゲの海」

これは名前は聞いたことあるけどちゃんと聴いたことなかったシリーズですね。ムーンライダースはニューウェーブに分類されることも多いのですが、やっぱりベースにあるのはビートルズとかフォークだなぁ…と思いますね。ただ、ロックバンドとして少し異質なのがアコギやエレキなどの他にヴァイオリンの入っている点ですかね。また、前述のG-schmitt同等サンプラーを用いたリズムのシーケンス(冒頭からのゴーッゴーンという不思議な音)が特徴的で、ちょっぴり現代的な音色を用いた古きよきフォークという具合ですね。落ち着いたおじさまの風格のようなものが感じられ、また決して気取ることのない態度がなんだかちょうど良くて今年何回も聞き直しました。

10.primal code 「Junkan」

最後に一週間ほど前に見つけた曲を紹介します。最近私のなかでアンビエントテクノが結構流行りつつあって、元々イタリアのvoices from the lakeとか元祖ダブテクノのBasic channelなどは聴いていたのですが、その周辺を掘っていて見つけたのがこのprimal codeというテクノデュオです。こちらもイタリアのユニットで、808系のドラムをさらにクリック感を強くしたようなリズム隊にアンビエントが絡むのですが、このアンビエントがちょうどメロディがありそうでない感じですごく心地よく、テクノのリズムと共に良い感じにトリップできるんですよね。Basic channelほどダークでもローファイでもない感じですし。同じ系統だとminilogue(シンセではない)とかも作風が近いと思うのですが、minilogueよりももっともわっとしてて、かつvoices from the lakeほど妖しさみたいなものはない感じでしょうか。最近のお気に入りです。タイトルは多分日本語の「循環」なんでしょうね。ぴったりなタイトルだと思います。

以上長々と今年聴いたなかで印象的だった音楽について書いていきました。来年は自分のなかでは多分アンビエントテクノが来る気がしますね。世間的には何が流行るかは全く分かりませんが。ただ電子音楽に限って言えば、今回取り上げたPizzaHotlineやAstrophysics、今回取り上げませんでしたが今年来日も果たしたDJkuronekoなどのヴァイパーウェイブ(あるいはアニメのサンプリング等)×ブレイクビーツの波が確実に来ているので来年も世界中のDJがアーメンブレイクを刻んでシンセウェイブやらシティポップやらに乗っけるんじゃないのでしょうか(適当)。ではみなさんよいお年を。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?