俺独自のゲームワールド[俺独ゲー]3-2

「!!エルガゴーム…!!」
エルガゴームとは先日出会った殺戮の魔人の名前だ。奴に一度俺達は敗北している為、因縁が深い相手である。エルガゴームに不意を突かれて気を失っていた俺は知らなかったが、その時、時空の魔人が救援に来てくれてキースとミランは助かったのだという。
「?エルガゴームを知っておいでで?」
ビュッフェは驚きを隠せないといった表情で見てくる。
「あぁ、俺達は一度エルガゴームに負けてる。」
「何っ!?エルガゴームは殺戮の魔人だと分かってて言っているのか!?魔人に敗北したのに死ななかったというのか!?」
シュバルツが驚愕の表情で俺を見る。
「時空の魔人に助けてもらったんだよ。」
「「「はぁ!?」」」
今度はミラン以外の全員が驚いて俺に詰め寄る。
「時空の魔人に会っただと!?なぜ君はそんなに魔人に出会ってるんだ!?やはり精霊憑きなのは本当なのか!?」
「どういう事ですか!?時空の魔人に助けられるとは!?時空教の信者なのですか!?」
「魔人の私がいうのも何ですがどんな人生歩んでるんですか!?」
いやビュッフェ、俺だって聞きたいよ。ゲームの世界に連れてこられてこんな事になってんだわ。
「それで?話を戻してくれ。」
ビュッフェが慌てた空気を落ち着かせ、咳払いしながら続ける。
「ええ、それでそのエルガゴームの直属の配下ベルジュは残りの配下2人と共に、このハマリングの街周辺の界域を統治しているのですよ。」
「なぁ、俺さっきから気になってたんだけど界域って何だ?」
するとシュバルツが俺に顔を向けて言った。
「それには僕が答えよう。この国エザーサン王国では5つの地方に別れていて、それぞれ特有の[界域の守神](かいいきのまもりがみ)がいる。そして[界域の守神]は火、水、風、土、金の5属性の精霊の力がある。つまり、守神とは強大な精霊の一種というわけだ。」
「ほうほう。」
「僕たちのいる王都、エザーサンがあるこの地方はママル地方。火の界域の守神[サラマンダー]。」
マルクスが後を継ぐ。
「そして残りの地方である、海に囲まれた大陸、フィッシュ地方の水の界域の守神[ウンディーネ]、常に風が吹いている精霊の都、バード地方の風の界域の守神[シルフ]、山が険しい山岳地帯、レプタイル地方の金の界域の守神[ドワーフ]、モンスターの群生地が多数ある、アンフィビアン地方の土の界域の守神[ノーム]。この5体の界域の守神が存在します。」
「おおうおう。(情報量多いな…)」
そして最後にビュッフェが締める。
「この界域はその地方全域に力が及んでいるのですが、界域の精霊の力が溢れてしまうと大地のエネルギーの流れが変わり、地殻変動や、自然災害が起きてしまいます。その為各地方の力を持つ者が界域の制御、統治をする事で精霊の力を抑えているのです。」
「おおおおお?」
「ダメね。ケイゴがショートしてるわ。」
「すまん。情報量が多すぎてショートしてしまった。」
「すみませんね。では簡潔に言うと[強い奴が力を抑える事で環境を制御してる]ってことですね。」
「よし。分かった。」
「いや、ほんとに分かってるの?」
でもそこで一つ疑問が生まれた。
「あれ?でもそれって大丈夫なのか?倒しちゃったら制御する奴がいなくなって大地がおかしくなっちゃうんじゃないのか?」
「ええ。なので彼ら王都騎士団の方々が常に界域を制御してくださっているのです。強者の魔力が存在する事が界域を制御する方法ですから。まあそれ以外にも好きで制御している魔人の方々もいらっしゃいますが。」
じゃあある意味魔人も界域を制御をしてくれてるのか。
「ちなみに私達王都騎士団が、魔人が討伐されたらすぐに新しい魔人を補充するのもそれが理由だったりしますね。」
「それ言っていいのか?」
「いいでしょう、別に隠さなくてはいけないものではないですからね。」
マルクスはそう言って、ケイゴを見る。
「おそらく殺戮の魔人エルガゴームがベルジュに命令しキースさんと溶解の魔人を連れ去ったのでしょう。溶解の魔人を連れ去る意味は分かりませんが。」
「多分そういう事だろ。俺たちには一度逃げられてるから狙ってきてるのかもな。」
「それならば私がベルジュの元へ皆さんを送りましょう。早くキース殿を助けなくてはいけませんしね。」
ビュッフェが皆の目を惹くように全員の真ん中に立ち、マルクスを急かす。だがマルクスは困った顔をしていた。
「ええ、ですが…私たちが洞窟に入る前に私達の団のサットマー騎士団長率いる部隊が洞窟に入っているのです。しかし何故か騎士団長らの足跡がどこにも見つからない。騎士団長の行方がわからないまま移動は出来ません。」
シュバルツも同様に道導のランプで辺りを照らしているが足跡は見つからない。
「よし、マルクス、お前はここで部下と共に騎士団長を捜索しろ。僕は合流できたらベルジュの元に来て応戦を頼む。」
「ええ、分かりました。皆さんお気を付けて。私は[道導のランプ]で足跡を追います。」
「ああ、マルクスさんも気をつけて。」
そこで俺達とマルクスさんの部下達は別れた。

ケイゴ班(キース救出班)
・ケイゴ ・ミラン ・シュバルツ ・ビュッフェ

マルクス班(騎士団長捜索班)
・マルクス ・20名程の騎士

――――
ベルジュの支配する界域に向かう道中、俺とミランはどうやってベルジュからキースを助け出すか話し合っていた。
「やっぱり俺が檻かなんかに攻撃ぶつけてぶっ壊した後にミランがキース回収じゃねーか?」
「いや体力的に私がキース回収は無理よ!私魔法使いなんですけどー。男1人を持って走れるわけないでしょ。」
「いやそれはそうなんだけどさ…キース痩せてるくせに筋肉あるから重いんだよなぁ…。」
「男は文句いうなぁ!!」
(ゴスっ)
「ぐへぇ!」
「君たち。緊張感が無さすぎるんじゃないか?今から敵の根城に向かうんだぞ?」
俺達が小突きあっていると冷たい目でシュバルツが睨んできた。
「それは分かってるけどさ、なんていうかキースが簡単に捕まるとは思えないんだよな。」
「それはどういう事でしょうか?」
「いやキースは[逃走本能]っていう一度見た攻撃を一回だけ確実に避けられるスキルがあるんだ。それを使っても避けられなかったのか?って思ってな。何か相手がしてきたのかもと思って話し合ってたんだよ。」
「いや僕は話し合ってた事ではなくイチャイチャしてた事について言ったんだが…」
するとビュッフェが
「……!皆さん!お下がりを!!」
突然空から弾丸が飛んできたのだ。それも十数弾。
「敵襲か!?」
「おやおや、敵はどちらでしょうかね?あなた方は勝手に界域に侵入してきたのですよ?文句を言える立場でしょうか?」
前方の茂みからそう言いながら出てきたのは全身紫色の肌をした魔族らしき男と、金髪に大きな角を生やした2丁の銃を構えた少女だった。
「魔族の方のようですね。あなた方はもしかしてベルジュ殿ですかな?」
ビュッフェが問うと、男が答えた。
「ええ、我こそがエルガゴーム様忠臣、百戦錬磨のベルジュ。」
「デュアピス。」
少女もそのまま答えた。つまり彼女もエルガゴームの忠臣なのだろう。油断はできない。
「あなた方、もしや銀髪の青年のお仲間で?」
「「!!そうだ(そうよ)!」」
「それならば彼に会わせてあげましょう。デュアピス、騎士は任せましたよ。」
「そのつもり。」
するとビュッフェが、突如
「まずい!皆さん避けて!」
そう叫んだ時には俺達の周りに無数の黒い穴が生まれ、俺たちはバラバラに吸われてしまった。
「うわぁー!!!」
――――
「(っ、ここは?)」
ミランが転送されたのは地下部屋のようなジメジメとした場所だった。地下牢のようだ。
「?ミラン!!」
「え?あっ!キース!!」
何とそこにはキースがボロボロになって捕まっていた。手には手錠に鎖が付いていて逃げ出せそうにはない。
「大丈夫!?直ぐに出すから…」
「まて!後ろ!」
「っ!!?」
後ろを振り向くとさっきいた奴らとは違う前髪が長くガスマスクをしている青年が階段に座っていた。
「俺こんなことしたくないんだけど…」
「え!敵!?」
「エルガゴームに頼まれてんだ。ちょっとやられてくれないかい?」
そう言って毒ガスを振り撒いた。
――――
(ドスン。)
「いててて……」
暗くてホール状になっている空間に出た。ここは…どこなんだ?みんなは…
「(ブゥン)さて、あなたはどれほどの力を持ってらっしゃるのでしょうか。」
ベルジュが黒い穴、多分[空間魔法]を使ってこの空間にテレポートしてきた。
「分断したのか…!」
「ええ、あのままだとキツイのでね。」
「でも、向こうに3人も任せて大丈夫か?」
「いやいや、我らにはデュアピス以外にも仲間はいます。全員1vs1(ワンブイワン)ですよ。」
「じゃあまずはお前をぶっ飛ばしてキースを助けるか…!」
「全力で…参ります…!」

ケイゴ達は果たしてこの界域にてキースを助け出す事は出来るのか!?

3-2  完

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