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麻雀の本質⑧ 金がない人はなぜ勝てないのか


「金がない奴は麻雀勝てない」


 これは公民の教科書にも載っているありがたい言葉です。「金がないやつは勝てない」「金持ちは強い」これもよく言われる言葉です。

 なぜ金がないと勝てないのでしょうか?それは「マネープレッシャー」があるからだと私は思います。金欠の状態では精神状態が追い込まれて「負けられなくなる」という状態異常にかかるわけです。

 たとえば麻雀に使えるマネーが10万円ほどある人なら、ピン東南1-2の店でも気楽に打つことができるでしょう。1ラス6000円の支払いだとしても16ラス分ほど負けないとパンクしませんし、パンクしても少し働けばすぐ元通りです。

 ではこれが、給料日まであと3週間、本来なら麻雀に使えるお金なんてない生活費込み2万円という窮地だったらいかがでしょうか?
 この場合だと点5なら8ラスでパンク・・・などと考えるまでもなく少し負けたら生活がパンクします。絶対に負けられません。

 そういった自分に足枷をはめたような状態では、「ミスを減らして期待値を追い続けるぞ」とポジティブに打つことはとても難しいでしょう。
 「絶対に負けないようにしよう」「負けはじめたら少しでも抑えないと」とネガティブの塊になってしまうことは想像に難くありません。


 これは行動経済学で「プロスペクト理論」と呼ばれるものと性質が一致しています。

 要するに、利益が出ているときはその利益を確実なものにしようとし、損失の機会はできるだけ回避しようとする人間の心理のことです。リターンとリスクを査定した結果、リスクを実際よりも大きく見積もってしまうわけです。1000円を得る喜びと1000円を失う悲しみを比較すると、後者の方が3倍から4倍ほど大きくなるとまで言われています。
 ちなみに「少しの利益を確実なものにしようとする行為」は我々の界隈では「温泉に浸かる」と表現されます。
(例)「休憩したいので抜け番します」→「少し浮いたくらいで温泉に浸かるな」


 この心理的作用は、一般的な社会人と比較するとマネーがなければない人ほど強烈に当てはまります。

 1000円を得ても現状から脱却することはできませんが、1000円負けたら破産にまた一歩近づきます。
 これはプラス値の評価が「脱却できるかどうか」で、マイナス値の評価が「破産に近づくかどうか」という極端なものになっていることが原因だと推測できます。わざわざ自分を天鳳の十段坂(pt配分90-45-0-180)に追い込んでいるようなものですね。


 さらに、こういったマイナス面は心理的な部分にだけでなく、麻雀というゲームの分散性にも大きくのしかかってきます。

 たとえば0.5東風2-5を打つとき、そのプレイヤーの実力にかかわらず、激しい分散によってスタートから逆噴射し200ポイント負けることは十分にありえます。ただ、そのまま続ければマイナスを小さく抑えたり、場合によってはプラスに転じることもあるでしょう。

 では、同じレートを10000円の資金で打つとどうなるでしょうか?200ポイント負ければ資金はゼロになりパンクします。資金がなければ挑戦できませんから、パンクしたらそこで試合終了です。下限のハードルが低くなってしまうことで、軽い下振れにも耐えられなくなるのです。


解決策 その1


 この問題の解決策の一つが「バンクロール管理」です。

 たとえば勝って1000円・負けて1000円で勝率60%の勝負をする場合、期待値は+200円になるのでどんどんやるべきでしょう。こういった勝負でさえ、マイナスを必要以上に大きく見積もることでミスしてしまったり、破産の恐怖に耐えかねてパニクってしまうことがあります。
 これを解消するにはレートに対する適切なバンクロールを知り、マネープレッシャーのかからない状態に自分をもっていくことが大切です。

 麻雀における必要なバンクロールは、あるレートで長期間以上打ち続ける前提で、40~50ラス分のバンクがあれば安心して打つことができるでしょう。フリー雀荘へ遊びに行く程度なら10ラス分もあれば十分だと思います。
 もちろん相手が自分より弱いことが確実にわかっていれば、長期間の勝負でも30ラス分程度あれば問題ないでしょう。

 例えばピン東風2-5の祝儀1k-2kを長期的に打ちたい場合、ハコラスなら祝儀込で13000円ほどになるのでその40倍、50万円ほどバンクを用意すればマネープレッシャーを抑えやすくなります。

 さらに例えば麻雀に使えるマネーが1万円の場合、打てるフリーのレートは1ラス1000円まで、つまり点2のウマ1-2程度が限度になります(例外として相手が「負けたらいくらでも貸すよ」と言ってくれる場合は思う存分に胸を借りると良いでしょう)。



解決策 その2


 解決策はもう一つあります。それは「座学」です。

 マネープレッシャーによって実害を受けるシチュエーションといえばやはり「リーチや仕掛けに対する押し引き」になるでしょう。
「普段なら押しているけど、マネープレッシャーのせいで押せない」という経験をしたことがある人は世論調査によると70%程度いることがわかっています。先述の「損失回避」の心理も合わさり、なかなか押すことができないのでしょう。私も学生時代にはよく経験したものです。

 こういった問題は当人の中で正解がわかっていないことが原因の一つです。絶対に押したほうが得だとわかっていれば、負けたら破産だとしても怖がりながら押すことはできるでしょう。

 現代ではインターネットをはじめ、様々な方法で麻雀の考え方を学んだり、自分のプレイを修正することができます。

 例を挙げると、牌譜解析によって副露時の放銃率が高すぎることから押しすぎまたは無理な副露をしている可能性を発見したりだとか、放銃時向聴数が大きすぎることから相対速度の認識不足やリターンに見合わない手で押している可能性を発見できたりというケースがあります。
 こういったことは、上位プレイヤーの牌譜解析結果と照らし合わせて乖離している項目に注目すれば、わりと簡単に意識して軸を直すことができます。

 また、最近ではソフトの発達にともなって場況を含めた最善手を導きだせるケースも増えてきています(例:NAGAなど)。

 ただし、ソフトの場合は彼らの解析結果による「正解」だけが提示され、その理由までは詳しく解説されません。これは将棋界などでも同じ状況ですが、人間にはソフトの示す手を分析して、なぜその選択をするのか?どういった損得計算をしているのか?を理解・言語化する努力が求められます。


 こういった技術はどんどん進歩していき、現代の最新戦術も数年後には隙だらけの弱小戦術になっていることは十分考えられると思います。技術の進歩をうまく取り入れて研究し強くなっていく人はこれから増えていきます。

    ただでさえついていくことが難しい状況で、さらに資金面・精神面にビハインドを抱えていてはとても勝つことなどできません。

 資金面や精神面などは麻雀戦術とは直接関係ありませんが、非常に大切な要素であることは間違いありません。技術があってもこれらが不足していては賽の河原の積まれた石のようにすぐ崩れてしまうことでしょう。なにごとも土台が大切だということです。



まとめ

【 金がないとどうなるか?】
・破産に怯え、正確な損得計算ができなくなる。
・マイナスを必要以上に大きく見積もってしまう(プロスペクト理論)。
・麻雀の下振れに耐えられなくなる。

【 解決方法 】
・長期なら50ラス分を用意する。
・遊びのフリーでも10ラス分は用意する。
・座学を徹底的におこない、正しい選択を自信を持ってできるようにする。


このノートがあなたにとって有意義なものであったらとても幸いです。