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見えざる女帝(2) 傀儡の男

これまでのあらすじ
みえざる女帝(1)

※LINEのスクリーンショットは匿名化していますが、インタ君の発言は電球 or 電灯で統一しています。
※それ以外の左側の吹き出しはすべて長い夢氏、右側はすべて私です。



「いんたは嫌だ、いんたは嫌だ、」と組み分け帽子を被らされたポッターのようにごねるインタ。それにふざけて乗っかる長い夢氏。

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最初は敬語だった私とインタも、お互いにいろいろと話し合うことで仲を深め、わずか数日で敬語がなくなるほど親密になっていった。とは言っても、彼は自分のことを話すのが大好きで、おそらく今でも私のことは何一つとして知らないだろう。

とにかく、何かつらい想いをしているに違いない。
彼が望むなら、我々がアドバイスをすることによってそのつらさを取り除いてあげたいと思った。ただ、いきなり訊くのは良くない。ここは彼の生き方、これまでの人生、考え方、趣味趣向など生活の基盤を聞き出し、その上で的確に過不足なく助言しなければならない。

長いこと話を聞いていると、彼は高校を卒業して通信関係の専門学校を卒業し、その後は一切就職していないことがわかった。私と長い夢は「あさちゃんとほぼ同じやん」と彼らを重ねたことは言うまでもない。

その後はネット上で出会い厨をしており、主にインスタグラムを主戦場に本名・顔を自ら公開してきた。

数年ほど出会い厨を続けているにも関わらず、彼はそこで知り合った女性と付き合うことはおろか、対面に成功したことすらない。それどころか「顔が気持ち悪い」「オットセイ」「無職は無理、働け」など心無い言葉を浴びせられて傷付いているようだった。当然である。彼はズボンをずりおろして腰を振るような規約違反動画や、キス顔の写真など、どう考えても女性が忌避する投稿ばかり続けていたのだ。

彼は芸能人の誰とも似つかないような独特な顔の造形、表情をしており、彼と今生の親友になったとしても決してイケメンとお世辞を言えないような、すごく悪い言い方をするとハコフグのような造形をしていた。
インスタグラムの画像はその動きやセリフの気持ち悪さがnoteの規約に抵触しそうなので割愛させていただく。


それでは、彼は誹謗中傷や暴言に心を痛めながらも、なぜこんな気持ち悪い活動を続けるのか?

その真相を知るために、我々は半ば一方的なキャッチボールをこのまま続けることにした。

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この画像もネットで拾ったものであることがわかっている。
彼の彼女候補が送ってきたのか、あるいは彼自身がネットで拾って記憶を改ざんして”そういうこと”にしたのかはわからない。
ただ、ここで追及したらすべて水の泡だ。乗っかるのも嫌ではなかったので、すべてプラスの言葉を使って彼のボールを中継し続けた。

ちなみにこのサンタの画像をオナマス黒沢に見せたところ、「ん?ああこれは星野ナミだね」とAI並みの速さで回答してくれた。【星野ナミ サンタ】で検索すると同一の画像が出てくるだろう。



そんなある日、インタのほうからグループ通話で相談をしたいと言ってきた。
ついにこのときが来たか。そう思った。

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この「あいる」という女性のことはすでにインタから話を聞いていた。”彼女候補の一人”らしい。彼の中では知り合って少しでも「いいな」と思ったらすべて彼女候補になる。インスタグラムで頻繁にやり取りをしているそうだ。

だが、なぜか肝心なLINEまでは教えてもらっていないようで、この話を聞いた私は「ああ、遊ばれているんだな」「しかしこれは彼が苦しんでいる根本的な理由とは違いそうだな」と哀愁を帯びた気持ちになった。

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ちなみにこのカップルの画像だが、彼がこのLINEに貼った瞬間に検索し、普通にTwitterに出回っている画像であることが判明したのでモザイクはかけないことにする。

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「相手の男を越えるって身長の話じゃないよ」とか
「身長伸ばす薬はないよ」とか
「仕事見つかっても雇われで100億稼ぐのは無理だよ」とか
「アマゾンには何でもあるわけじゃないよ」とか
「そもそもきみのほうが子供に暴力ふるいそうだよ」とか、そういった現実を突きつけるのはよくないので、ここは素直に話を聞くのが正解だろう。

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どう考えても相手の女性のほうが現実を見ている。

その後もやり取りは続く。

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それからも彼との日常会話は続いたが、彼にアドバイスをするのはまだまだ先になりそうだ。


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我々はそんな調査を進めるうちに、彼がなぜ、インスタグラムに気持ちわるい動画や画像をアップし続けるのか、その真相がだんだんとわかってきた。

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彼がズボンをズリ下げて卑猥な動画をアップし続けていたのは、すべてあいるに吊り下げられたエサを手にするためだったということがわかってきた。

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これは彼女の言いなりになって動画をアップしたことへのご褒美の一つなのだろう。これだけでインタは完全に舞い上がっている。

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しかしこの画像を見て、ついにあの悪ノリをし続けていた長い夢がメスを入れだした。

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どうせ今回もネットで拾った画像だろうと思っていたが、案の定であった。
フェイク画像にツッコミを入れるにはここいらが最適だろう。もう十分にスルーしてきた。しかしここからインタの反応が鈍くなる。

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所詮はネットの世界で出会った一人。直接対面して話したことはない。彼に嫌われたとて他に人はたくさんいるからいい。と、そういう考えもあるかもしれない。
だが私はこの出会いを大切にしたいと思った。何千万人といるネット利用者の中で巡り合ったのはなにかの縁だ。

ヒステリックな親のようにガミガミ言うつもりはないが、彼がこのまま不幸になるのは悲しいし、なにより彼自身が盲目の文字どおり現状をまったく把握できてない。彼は霧のド真ん中にいる。
せめてこの霧を晴らして、自分がいまどういった状況にいるのか、どういう危機が迫っているのかはわかってほしかった。その上で、彼に方針を委ねたかったのだ。

我々の必死の説得により、インタは彼女に電話して画像の使いまわしについて問いただす約束をしてくれた。

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全然話を聞いていない。
不安でいっぱいだ。


見えざる女帝(3) へ続く】


このノートがあなたにとって有意義なものであったらとても幸いです。