「イノベーション・スキルセット」刊行記念トークイベントレポート(Takram田川さん × THE GUILD深津さん)
ラッキーなことに、こちらのイベントの参加権を得まして、参加してきたのでレポートいたします👐
この記事を書いている自分はシステムエンジニアあがりの(?)UIデザイナーでして、ビジネス・テック・デザインの越境という内容には興味があったこともあり、発売日に購入し一度読み終えたという状態での参加です。
本の内容について
はじめの30分では、本書の目次に沿って本の内容を紹介されていました。
1.第4次産業革命の読み解き
2.イノベーションを加速する人物像:BTC型存在
3.デザイン戦略に取り組む世界の企業
4.デザイン経営宣言
5.デザイン経営の効果
6.デザイン導入の経済効果
7. BTCの最強人材:CXO(チーフ・エクスペリエンス・オフィサー)
本を作った目的
世界に新しいものをつくっていきたい
→どうすればそういうものを作り出せる人材・組織になれるのか?
→めまぐるしく変動する時代で、どういうタイプの人が新しいものを作り出せるのか?
これらの解として、「BTC型人材・組織」を定義
本のターゲット
Business系・Technology系のエキスパートの方
「BTC」について
「Design」と「Creativity」という言葉を明確に分けて使っている。広告デザインなどを行う人は、「Designer」と自身を考えていない場合が多い。そういう人材も含めるために「Creativity」という言葉を使っている。
BusinessとTechnologyの領域はお互い合意をとっていきやすいがCreativityについては考え方が異なる(合理的ではない部分があったり)場合が多いのでコミュニケーションに難航することが多い。
CXOについて
BTC人材の最終的なキャリアが「CXO」というポジションと考えている。そのあたりについても書籍の最後に触れている。
第6次産業革命期はどんな時代なのか?
物理とデジタルが融合する時代。デジタルで完結せず、「モノ」が関わってくるため、クラシカルデザインの力が必ず必要になってくる。
デザイン経営宣言におけるデザインの分類
①ブランド構築に資するデザイン(Creativity)
②イノベーションに資するデザイン(Technology+Creativity)
田川さん・深津さんの対談
後半1時間は、peice of cakeにてCXOを実際にやられている深津さんをお迎えしての対談でした。事前に募った質問をベースに、それについて語っていくという流れでした。
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CXOってなんだっけ?
(深津さん) ユーザ体験の最高責任者。デザインやユーザ調査の責任者と思われることもあるが、もっと広い。サービス全体のエコシステムをしっかり設計する人。職務上はデザイナーなので、実際にWFをひくこともあるが、基本はそのあたりの実作業はデザイナーチームにおまかせしている。BとT、BとTとCの間をつないで翻訳・混ぜ合わせる仕事がメイン。
(田川さん) ピースオブケイクさんが深津さんをCXOとして迎えられたきっかけは何だったんでしょうか?
(深津さん) 別の仕事をもともと一緒にやっていて、そこからnoteの仕事を持ちかけられた。最初はCDOとしての提案だったが、もっと広い部分を根から変えていきたい思いがあったので、ラベリングはCXOとしてもらった。
(田川さん) 重要な話。CXOは他のチーフ職の人と一緒に仕事することが多い。また、CXOやデザイナーの特殊スキルとして、「ユーザに憑依する・自分がユーザ代表になる」というのがあるように思う。
(深津さん) 自分がヘビーユーザーであり、初心者であるという心をデザイナーとして持ち続けている。
(田川さん) メルカリのCXOチームは、「UI/UX構築」「ブランド構築」「デザイナー組織管理」の3つに明確に分けている。全体で50人くらい。Takramが外部サポートで入っている。
(深津さん) 人数多くて羨ましい…。
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BTCスキルの磨き方・道順を教えて下さい!
そもそも1つの領域勉強するだけでも大変なのに…それぞれどれくらいの深度、順序で学べば良いのか?
(深津さん) 自分はTとCを交互→Bという順序。もともと大学のときに「テクノロジーでどう世の中が変わるか?」を学んだ上でロンドンに渡り、プロダクトデザインを学んだ。TとCを交互に学び、独立したあとにBを学んだ。中村勇吾さん率いるTHAでTとC(Flash)を学んだ。またiPhoneアプリを作ってそれが非常に売れたのが、Bを学びはじめたきっかけ。(ユーザーサポートや広告など色々はじめた) 若い人によくおすすめしているのが、早いうちにコミケでもデザフェスでもいいので自分プロダクトを作り、売り切ること。
(田川さん) 深津さんと順序は同じで、TとC→B。僕の師匠は山中俊治さん。山中さんが作り出す高クオリティなスケッチを実装する、ということを5年くらい修行した。ここでクリエイティブスキルが磨かれたように思う。
(深津さん) 本当はTとBに軸足がある人のほうが、Cの領域に広げやすいと思うが、途中で諦めちゃう人も多いかも?「美味しい料理を作って人に振る舞う」というところからはじめてみるのもおすすめ。料理自体のクオリティのほか、環境や音楽なども気遣って作るだけでも勉強になる。
(田川さん) 料理のたとえはわかりやすい。お金をかければいいというものでもないし、凝ったものを作っても味見をしなかったら失敗するとか、「美味しい」という評価はあまり数値化できず、曖昧なものというのもいい。
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BTCを増やす環境・場作りのコツを教えて下さい
(深津さん) ワークショップ形式などで、がやがや作り上げていくのが良いと思う。いろんな役職の人が一同に介すことで、多角的な視点が得られる。
(田川さん) いいプロダクトを作る時に「自分ごと」になってない人が多いとあまりよくない。最初の意思決定のときに、「なぜこれが決まったのか?」見えている方がいい。
(深津さん) ピースオブケイクでは、はじめ率先して自分でファシリテーションしていたが、最近は役割を譲渡していっている。
(田川さん) ピースオブケイクにおけるBとTの越境とかはどういう感じですか?
(深津さん) キーパーソンが自ら越境していろんなことをするよう意識してもらっているが、ほっておくとみんなエキスパートになりがちなので、なにかと呼びかけていっている。
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日々の鍛錬ってどうされていますか?
(深津さん) できる限りやったことのない趣味を年に一回やってみる。他分野のものの作り方を見ていく。金属工芸、カメラなど…。やってみた上で、共通項を見つけていく。たとえば金属工芸、普通にやっていると手がすごく痛くなってしまうが、ハンマーを手の力ではなく重力を使って叩くことで回避できる、強い力ではなく弱い力でたくさん叩いたほうが円に近づくなど。こういう経験をサービス設計にフィードバックしていく。
(田川さん) 一個やって極める、それをメタ知識・一般化し、法則化する。ABテスト的にいろんなことを試していくような人が多いかも。
(深津さん) 怠惰の法則というTakram Castの回がある。人間は怠惰な方向に進化していく。ここに逆行すると流行らない、という理論。
(田川さん) 深津さんは法則化し、その上で個別にみていく、ということをよくされている印象です。
(深津さん) 美術系・美大のひとはデッサンから学べることが多い。デッサンは、まずはよく観察することにすごく時間をかける。そのあと全体を見てアタリをつけ、詳細にうつる。逆行するとバランスの崩れた下手な絵になる。この考え方はサービスデザインに生かせる。
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大きな組織で良いプロダクトを作りうるのか?
(深津さん) プロダクトリーダーが決済権をもち、BTC型でプロダクトに責任を持っているならばいいが、このリーダーの上に判子を押す人が3人位いるような組織だと厳しい印象がある。一緒に仕事をしている日経さんは風通しが結構良い印象。
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大企業にCXOは必要か?
(深津さん) 難しい問題。いきなりCXO設置しても幹部と喧嘩になり大変そう…。創業者レベルの人がやらないと厳しい。技術部の下とかだと、影響力をふるいにくい。
(田川さん) 坪田さんと話をしたんですが、CXOはときにCEOのように動く必要がある場合があるので、それがかなわないのは結構厳しい印象がある。「どの部門に置くのか?」はとても重要で、色々勉強したり試した結果、「経営企画室」「社長室」あたりに置くのは良さそうな感触。経営企画長・CXOのタッグとか。Appleは前まではすごく特殊で、アイブ一強という体制だった。今後いろんなチャレンジが出てくると思う。
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今まで最も良かったこと・修羅場だったできごとはありますか?
(深津さん) 人生における修羅場だと、THA時代の納品前…。CXOだと、直接的なものづくりをしなくなっていく。ピタゴラスイッチのように、間接的なものづくりで結果うまくいった!のようなとき、目論見通りにいったときは楽しい。THE GUILDはフリーランスの集まりということもあり、BTC型の人材が多い。
(田川さん) THE GUILDでリーダーとしてどういう組織づくりをされているんですか?
(深津さん) ときおりノウハウ共有をしているくらい。メンバーの中ではこばかなさんは実験的な接し方をしていた。一子相伝・知識の継承のような。キャリアパスとして、THE GUILDから他の企業のCXO、みたいな道筋はどんどん生まれてほしい。そのうえでノウハウ共有ができれば、特殊な意識として育ちそうでいいなと思っている。
(田川さん) TakramにもCXO人材を創出する動きがある。Takramでは櫻井さんなど。坪田さんのところのBasecampにもそういう流れができている。BTC人材になるには、こういう組織で勉強する、もありだと思う。
フロア内の質疑応答
BTCのなかでは現在ビジネスデザインに近いことをやっている。クリエイティブとロジカルでかち合うような場合、どう対処すべきか?例えば、UX的にはこうしたほうがいいが、ロジカル的には成立しない(意見が合わない)場合
(深津さん) 目的レイヤーがずれているので、ワークショップ・喋り場・壁に書くなどで共有するなどするといいと思う。レイヤーに分けて整理する。世界観レイヤー・究極の一手のレイヤー・使ってもらうための三本柱レイヤー・三本柱の具体レイヤーを全体で共有していれば、いいかも。これができていないと、細かい話でぶつかる。
(田川さん) それを話せるための文化・環境も必要。
BTC人材が育ちやすい環境、方法論として落とせそうなのか、それとも人依存なのか?カリキュラムは作れるものでしょうか
(田川さん) ロイヤルカレッジではBTC人材を育てるカリキュラムを30年くらいやっているところがある。1年間かける、割とハードなプログラムだが、そこからスタートアップやBTC人材が多く創出されている。
(深津さん) やることは4つ。MBA的なこと、タマビでやっているような授業の入門パート、テクノロジーの入門パート、インテグレーション的な部分。これをカリキュラム化をできればいい。
(田川さん) 大学院とかでこれを教えるのは難しい。まずは社会に出てBTCいずれかの知識を一通りやっている前提が大事。
(深津さん) テックエキスパートになったが、ビジネスやクリエイティブで壁を感じたような、1つの分野でエキスパートになった人が、学ぶのが良いと思う。
UX全体を考えたとき、意思決定が大変な印象がある。リスクを抑えながらやっていく方法はあるか?例えば求人サイトの、既存サイトの全体改善・新規サービスの場合。
(深津さん) 求人サイトの目的は「職につけるかどうか。」それがずれていなければ、ボタンやクリックの話はdetailの話。サービス根源issue、正しい金の設け方を社長とコンセンサスをとる、無理だったらもう会社に見切りをつける。
(田川さん) 深津さんと話していると、結構こういう感じでハードルが高い話になることが多いです。笑
告知
Takram Castについて
(田川さん) TakramでPodcastをやっています。深津さんが出ているのは「怠惰の法則」「スマートじゃない家電」「CXOってなんだっけ」「XI(eXperience Identity)について」など。
メルカリでUI/UXデザイナーを募集しています
(田川さん) 越境人材として活躍したい方はぜひ!
21_21 DESIGN SIGHTで「秘展」をやります
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かなりボリュームのある、貴重な時間でした!
最後、田川さんに軽く質問をさせていただくことができました。「今回の本はBとTを主軸とする方に向けた本かと思いますが、Cを軸足としてBTC型人材になっていく場合のポイントなどあるのでしょうか?」というような内容を伺ったのですが、「またやり方が違うので別途書きます!」と回答をいただきました。楽しみです📚
本も改めて読み返そうと思います。貴重な時間ありがとうございました。
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