作者の人そこまで考えてないと思うよ案件

2023/07/23 
 「作者の人そこまで考えていないと思うよ」というセリフを知っているだろうか。これは、元のネタは椿いづみ先生の「月刊少女野崎くん」に出てきたセリフである。主人公は漫画家で、この主人公の意図とは違って、読者が作品中の描写をあれやこれやと作者の心情や内情を考えて話すシーンに、このセリフがツッコミとして入る。実際にこのツッコミを入れたヒロインは、主人公が意図せず作ったシーンだということを知っているからこそ、いえるセリフだ。
 私は現在大学3年生で、日本文学ゼミに所属している。ゼミ担当の先生はとても素敵な人柄で、この大学に入って良かったと心から思える理由の1つである。日本文学を扱っていると、ある。「作者の人そこまで考えていないよ」が。あるのではない、あったのである。
 現在は入院しているが、本来ならば私は佐多稲子の「水」という作品を読んで、後半部分を考察してゼミ内で発表しなければならない課題があった。やはり好きな先生の授業だけあって、頑張るぞ!という熱意ある気持ちで佐多稲子の話が載った本を大学図書館から片端から借りた。参考文献にできれば良いと思った。が、そこで、見つけてしまったのである。佐多稲子は、こういうことを言っていた。(引用ではなく、完全な雰囲気になって申し訳ない。気になる人は読んでみてほしい)
 「自分の作品を取り扱った高校の授業を見て、驚いた。作者の私も意図していなかったことが、発表されているではないか。作者の自身が、逆に納得する考察だった。」と。
 私はこの文章を、タリーズでハニーミルクラテを飲みながら吹き出しそうになった。これあれじゃん!「作者の人そこまで考えていないよ」案件じゃん、と。同時に私がやってることって……とちょっと落ち込んだ。しかし、すぐに思い直した。むしろこのセリフを言わせるということが文学の研究なのかも。まあ、多分違うと思うけど。
 高校生の頃の国語はまあまあ成績が良かった。理由は分からないが、国語だけ偏差値が30くらい上がって担当の教師に驚かれたこともあった。要約するのが苦手だったなと思う。国語の問題でもたまにある。「作者の気持ち(意図)を述べよ」。どうするんだ、全然そんなこと思ってなかったら。締め切りぎりぎりで徹夜3日目でどうにでもなれと担当編集に送り付けた文章かもしれないんだぞ!!私はこういう問題の時、いつも△がつけられていたのを思い出した。一方で、いつも成績の良かった男子生徒はこういう問題も◯が大きくつけられていたことを。彼もそんなこと思っていたら、少し面白いなと妄想した。

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