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[Symbolizm] 知らねば見えぬ何事も:「数と文字」

 本件は[Symbolizm] 知らねば見えぬ何事も:「神話」に続く記事です。前回は神話の根源について綴りました。ただ、現代の概念に慣れ親しんだ我々にしてみたら、女神のヌードを見ようとしたら肉体を通り越してスケルトンを見ているかのようだったと思います。ですから本件では少々肉付けした「数」を綴り、また、それらを読み解きながらカバリストの基本的な考え方も綴ります。


はじめに

 何にでも言えることですが「例え」が無ければ理解に難儀します。しかしながらカバラの例えを記している書物は限られている為、そもそもの例えが表に出ていません。故に考え方や注意事項が分かりません。そうなりますと、一つの形に多くの意味を持つ象徴を読み解く際に、正確な連想が出来ず答えに辿り着けません。

 本件ではまずカバラの最も入り口の考え方を説明し、次に「数と女神」を繋げます。最後には「数と文字」の意味を綴り、数の持つ真の意味を理解する基礎を構築してゆきます。では始めましょ〜♪


入り口

 「3と10」。この二つの数が、この世の最も根源的な理を示すと共に、カバラの基本概念の根幹です。

「3」の概念

 「3」は三つで一つになる理を示します。まずはエネルギーの流れの観点から考えてみましょう。

 エネルギーは1点では動きません。2点になると往復します。そして3点で初めて循環します3点で循環することで新たなエネルギーを生みます。

 では次に、もう少し発展させ生物で考えてみましょう。オスとメスでは往復です。父と母になり子をもうけ三つで一つになり初めて「生物としての循環」が始まります。ではスケールを変えて生物の体で見てみましょう。「右と左」と、その左右から定義される「中心」の「三つで一つの生物」という形をなします。ではさらに人間を当てはめてみましょう。「精神」と「肉体」を合わせて「一人の人間」です。今度は地球で考えてみましょう。空と海があって大地があります。または、昼の太陽と夜の月があり地球に生命が宿ります。

 このように、この世は基本的に「三つで一つ」です。これを「三位一体」と呼ぶのですが、現代では某宗教が専売特許のように使用しておりますので誤解されています。別に「父と子と精霊」だけが三位一体な訳ではありません。どこの宗教でも神話でも必ず「三つで一つ」の概念が織り込まれています。

 この世の理を知る上で最も基本的な概念「三位一体」。ですからセフィロトの最上段には「三位一体」を象徴する「三角」が据えられているのです。その三角を形成する「数1 / ケテル」ですら、分解すれば「アイン」「アイン・ソフ」「アイン・ソフ・アウル」の3つで形成されています。

この世の全ては3つで1つ。忘れないでください。


「10」の概念

 次は10の概念です。これは十進法の数学的概念に馴染みのある我々にとっては簡単に理解できますが、その概念を「自然に適用する」と言うことは考えられません。説明します。

 「個 / 1」が3つ集まり1つの「全 / 3」となります。その「全 / 3」もまたスケールを変えたなら「個」であり、3つ集まり新たな1つの「全 / 3」になり繰り返します。一の位、十の位、百の位、千の位と量的に増えては行きますが、セフィロトの樹が示しているように1〜9の後は「10=1」となり繰り返します。

 10進法では桁が変わるたびにゼロが追加され量的に増えてはゆきますが、本質は一桁と同じ1から9の繰り返しです。根本原理である三位一体を延々に繰り返し物質化する世界がこの宇宙。いくら量的に増えようが根本は一緒です。

 10進法の基本となる0から10までの数を「アレフ・ゼロ(根本原理)」の小宇宙として考えても良いだろう。なぜならばそれは無限に続くものだから。10はゼロを再導入することによって「統一」に立ち戻り、さらに進んで複雑な初級となる

アレイスター・クロウリー

 数だけで分かりづらいものは図式化しましょう。セフィロトに当てはめますとこうです。上から一の位、十の位、百の位、、、、と、延々と下に向かい桁を増やしながら繰り返しますが、本質は一の位の繰り返しであると言う事です。これが繰り返しを示す「10の概念」です。

 セフィロトの樹の理解が深まりましたでしょうか?「3と10の概念」は永遠普遍の絶対ルールですから、この世の全てが当てはまります。故に、この根本的な基礎概念を元に、カバリストはこの世の様々な事象・現象を比較分類しセフィロトに保存しました

「3の概念 = 三位一体」と「10の概念 = 繰り返し」をお忘れなきようお願い致します。重ねて申し上げますが、これは絶対であり普遍です。

 私は「生命の樹」を魔術的アルファベットの基盤として採用することにした。10の数と22のヘブル語アルファベット文字と、伝統的に培われた合理的相互対応、そしてその数値と幾何学的相関関係を考慮に入れれば、我々は首尾一貫した体系的原理を手に入れることが出来る。土台としては十分に硬固で、上部構造を増築するにも充分に融通のきく原理である。

アレイスター・クロウリー


 ついでですので綴ります。セフィロトの樹は「アイン」「アイン・ソフ」「アイン・ソフ・アウル」と言う三つの認識不能なものを認識可能にした図です。言わば根源を写し取ったようなもの。そのためカバリストはセフィロトの樹を「鏡」とも呼びます。鏡の象徴の意味が理解できましたか?また、湖面に反射する賢者がなぜ三角形を描いているのかも理解できましたか?俯瞰して見たとき、賢者の腕の六角形で「数6」が、その内側には十字で「数4」が示され、その合計は10です

 キチンと順に理解してゆけば、象徴というものは何事も的確に表現していることが分かります。見えないのは己が知らぬからに他なりません。

 では次です。ここまではセフィロトを全体的に見てきました。今度はセフィロトを形成する個別の10のセフィラについてです。


膨大な名

 カバラは最も古き学問ですから、積み上げられた知識の量が半端ではありません。故に10のセフィラと言っても一つ一つの意味が膨大にあります。その膨大な意味を元に、様々な事象・現象が比較分類され割り振られました。今回、このシリーズを綴ろうと考えた理由はここにあります。

多くの正しい”例・解釈”を知らなければ、連想が正しく機能しないから。
これは象徴を読む上で致命的です。

 基本的に象徴の元はセフィロトですから、象徴を理解したいならセフィロトを正しく理解する必要があります。例えば「数1」、セフィロトの「ケテル」を示す呼び名は以下の画像の全部です。(正確にはこれ以外にもまだあります)

5番目の呼び名は気にしちゃダメよ〜

 これらは「数1」=「ケテル」を表すために付けられた名です。わたくしが1を「点」「原始の点」「最も古き者」と呼ぶ意味が分かったと思います。いつも言いますが、わたくしは適当にこじつけや思いつきで言っている訳ではありません。きちんと例があるものを踏襲し申し上げております。


制限

 そして、この数多くある呼び名ですが、記憶することにより制限としても機能します。よく陥りがちなのは「己の知っている範囲が全てだと思い込み、その中でおかしな連想を制限なく繰り返した結果」を答えとしてしまう事。考える基盤は記憶ですから、そもそも知らなければまともな連想が出来ませんし、また何が答えか分かっていないのですから、答えが見つかるわけないのです。故に、数多くある名でもきちんと記憶し、無駄な連想をしないよう制限をかけながら正しく繋げることが、象徴解読には必要となります。



数と女神

 だからと言っていきなりケテルの20の名を全て覚えろなんてスパルタは致しません。分かりやすいものから覚えてゆきましょう。そこでピッタリなのが多くの名を持つ女神イシスです。「入り口」で綴った概念を念頭に読み進めて下さいまし。

 まずは「女性の三位一体」から。それは「月経」の有無で以下の様に分類されます。月経が来る前は「処女」、月経が来てからは「妻・母」、閉経後は「老女」で象徴し、月経による女性の体の変化を三つに分類し三位一体を象徴しました

「処女」「妻・母」「老女」 
「生」    「維持」  「死」 

 次はイシスを元にした各セフィラ(10)の象徴です。あなたが知るイシスの姿は、3・6・7・11くらいなものではないでしょうか?

  1. 叡智(パラス・アテナに類似)

  2. 物理的月

  3. 永遠の処女・オシリスの双子の妹

  4. 自然(彼女の最後の姿ネフシスによって捕捉される)

  5. 都市の建設者(彼女の頭飾りに示される)

  6. オシリスの配偶者

  7. ホルスの母

  8. 穀物および食物全般の霊

  9. 「地」全般

  10. 「水」あるいはナイルの女神。従ってワイン全般の女神でもある。彼女は酩酊の魂であり、肉体の愛の霊的歓喜を示す。

  11. 秘技伝授者。密儀の女主人。教師。

  12. 復元者(冬の後の大地の豊穣)。オシリスの残骸を拾い集める彼女の姿に示される。

 我々はこの原理を、ヌイト、テー、シャクティ、ヘー、イシス、陽性電気、空間の無限性、可能性…などなど、状況に応じて様々な名前で呼ぶ。この原理はそれ自体として把握することができないことを研究者は知るだろう。組み合わせにおいてのみ理解されるのである。ちょうど我々が、照明や磁力などの効果を観察することによって電気を理解する様なものである。ある哲学者たちはこの原理の全局面を包括する統合的象徴を構築しようと試みてきた。かくして神統学全流派中最も哲学的であったエジプト人たちは、イシスの観念の中に可能な限り多数の女性的機能を包含させたのである。

アレイスター・クロウリー

 混乱しないように付言しますが、「10」を「1」とする場合と、「11」を「1」とする場合がございます。上記のイシスでは後者の「11」を「1」とする繰り返しです。故に、実態を持たない「1 / 叡智」は、繰り返しを得た結果、地上の実態を持つ「11 / 秘技伝授者/密儀の女主人/教師」となっております。

 少し話がそれますが、前述の考え方はセフィロトを上から下った考え方です。では逆に、下から上る考え方にしたらどうなると思います?

 「11 / 秘技伝授者/密儀の女主人/教師」から学びを得なければ、「1」が示す叡智には辿り着けぬということでございます。階段は一段一段登るのが道理。焦らずコツコツ登って行きましょう。イシスが自分の顔を見せる人間とはどういう人間か忘れないでください。

 野暮で世俗的な者、不信心で無関心な者に、彼女は自分の顔を見せることはない。

セイスのイシス


数と文字

 象徴は元を知らなければ何も見えないと言うことがご理解頂けたかと思います。同様に、数に決められた文字の意味を知れば、更にセフィロトの理解が深まり象徴の解読能力も向上します。

 重ねて申し上げますが、いきなり全部を覚えろとは申しません。わたくしも全部を暗記している訳ではなく、その都度辞書のように利用しています。それを繰り返してゆくうちに自然と暗記します。覚えやすいものから頭に入れてゆきましょう。例えば「タウ」。磔と聞いてあなたがイメージするものは「十字架」だと思いますが、磔の元は「T字」であり「タウ十字」と呼ばれます。ヘブライ語のタウの意味は「殺された神」です。キチンと意味が繋がりますでしょ?また、「死にゆく神の物語」の大切さも分かりました?


邪悪と呼ばれる所以

 本件で引用した智慧は全てクロウリー先生の言葉です。あなたの住む現実では「セックスマジックに傾倒したイカれた魔術師」ですが、本件の文章を読んでどう感じましたか?わたくしにはイカれた人間がかけるような内容ではないと思いますよ。ではなぜ邪悪な男と呼ばれるか?

 エリファス・レビ真の配属を知っていたが、それを用いることは禁じられていた。こう言った秘密主義は全く馬鹿げている。公にしてはならない奥義とは、公にすることが不可能な奥義なのだ。裏切ればどんな恐ろしい罰でも受けますと誓わせておいて、彼をこっそり隠れた場所に引きずりこんでヘブル語のアルファベットを教えてやり、口外無用だぞ!…全くの不信である。

アレイスター・クロウリー

 こう言うことをバラしちゃうからなんです。そして、わたくしが先ほどヘブル語の意味を綴りましたが、それがクロウリーの言葉にある「彼をこっそり隠れた場所に引きずりこんでヘブル語のアルファベットを教えてやり」に表されている「秘密」です。それがあなたの求める秘密の言語であり奥義の一部です。よろしいですか?「33」というのはセフィロトの総数です。10の数と22の文字とダート(智慧)を合わせた合計も33です。(中世以前のセフィロトはダートが完全に秘密だったため32)。英語は26文字でありセフィロトに適応できません。ですから本来アルファベットの意味は22文字のヘブル語にあるのです。マンリー先生の本の裏表紙のマークを思い出して下さい。3角形、7角形、12角形の3種類の芒星が描かれています。全部足すと幾つになりますか?

 こう言うことに辿り着けないように、真理を表しているもの、または真理に近いものは総じて「邪悪」とされます。ユダヤ弾圧とも繋がります。ユダヤ人の経典はヘブライ語で書かれた旧約聖書。ここに書かれたカバリスティックな側面を読み解くために使用される鍵がタルムード。「ユダヤ人」「タルムード」って悪の象徴でしょ?あなたの住む現実では。そんな世界に住んでいるって忘れないで。ちなみにヘブル語の聖書を数に置き換え順に辿ってゆくと、めっちゃ綺麗な幾何学が描けます。それが真理であり神の姿です。これを最も忠実に反映している啓典の民の宗教はイスラムであり、イスラム寺院の装飾に見られます。


まとめ

 何にでも言えることですが、最も古きものを知らなければ、そこから発展したものを読み解くことは不可能です。足し算を知らずに因数分解するようなもの。同様に正しい解釈の例も知らなければ、「1+1=3」でも答えとしてしまいます。全てはセフィロトを元に語られる話であり象徴です。数学と神学は繋がっていて、どちらも大切だと言うことを忘れないで下さい。

 本件で記したことは基礎的な事ですが、現代人の我々にとっては難解な概念。故に日々コツコツと続けることが大切となります。膝をつくことなく歩き続けて下さい。きっと実ります。

 では本件はこれまでといたします。あなた様の心にわたくしのカバリスティックな智慧が届きましたなら引き続きお付き合いをお願いいたします。


お知らせ

 来週は[Symbolizm] 知らねば見えぬ何事も:「黙示録」になります本三部作の仕上げの記事となります。7頭10角の黙示録の獣は有名ですが、それが本当は何を意味するのかはご存知ないと思います。またその意味は、「知らねば見えぬ何事も」シリーズが理解できていませんと、記したとて分かりません。この意味は過去にも綴ったことがございませんのでお楽しみに〜♪


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