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映画「ドクタースリープ」

①あらすじ

主人公ダンは、亡き父と同じくアルコールの問題を抱えながらも、
引っ越し先で親切な友人に恵まれ、ホスピスで働き、禁酒の会に通って
人間らしい生活を取り戻していました。

そんなとき、ダンと同じく「シャイニング」と呼ばれる超能力を持った少女アブラと出会い、「行方不明の少年の居場所を知っている」「手伝ってほしい」と頼まれます。

度重なる児童誘拐事件には「真の絆」というサイコ集団が関わっており
一度は「余計なことをするな。やつらに見つからないように隠れろ」とアブラを追い返したダンですが
自分の守護霊に言われて、アブラに手を貸すことにしたのでした。


前作「シャイニング」のキャラクターを引き継ぎ、ホラー要素も確かにあるのですが、私は今回の作品は「能力者と能力者が闘うファンタジー」として観ました。
楽しいホラーファンタジー♪という感じの映画です。


②長く生きてよく食べる♪トゥルー・ノット

トゥルー・ノット「真の絆」という集団がおもしろかったので、まとめてみます。

ヴァンパイアファミリーのような一族で、不死身ではないですがとても長生き。かなりゆっくりとしか年を取りません。

人の苦痛と恐怖を捕食するのですが、特にシャイニングを持った子どもを大きなエネルギー源として好みます。

彼ら自身も「ある程度の年まで生き延びたシャイニング能力者」でありますから、ようは共食いであり、若手を潰す害悪のような感じでもありますね。

この苦痛と恐怖のエネルギー(ドライアイスのような白い煙で表現されている)を採取するため、キャンピングカーで各地を放浪しながら子どもを誘拐・惨殺を繰り返します。

一応(ローマ帝国時代からの?)最長老のお爺さんがいるものの
実質的には「帽子のローズ」と呼ばれている、仲間内で最強の女性が集団をまとめています。

密閉ボトルにエナジーを溜め込んで保存・管理できるのは彼女だけのようです。

このローズというのは残忍な悪役なのですが、なかなか魅力的なキャラクターでもありますね。

ホラーファンに対して皮肉をつきつけるかのような「苦痛と恐怖をエネルギー源とする」という設定がまた、
否応なく「今まさにホラー映画を美味しく頂いている自分自身」というものに対峙せざるを得ず
つねに飢えて獲物を探し求める「真の絆」たちの姿は他人とは思えないところもあります。

このような設定になった経緯は知りませんが、
あるいはエロ同人描きが「貪欲にエロだけ求めてくる連中」と対峙せざるを得ないように、
ホラー作家であったスティーブン・キングもまた
「常に残虐さを求めてくる貪欲な読者たち」や人間のサディズムと向き合わざるを得なかったのでしょうか。

もうひとつ思ったのが、「なんかうらやましくないわー」ということでした。
私の好きなヴァンパイア映画に「アンダーワールド」や「ブレイド」シリーズがあるのですが
「真の絆」には、ああいった貴族的な華やかさがまったくありません。

「彼らは金持ちでコネもあるから警察に行っても無駄だ」というセリフが登場しますが
たしかにあれだけの人数の大人が仕事もせずにキャンピングカーで旅行しているわけだから
まあ金があるといえばあるのかもしれませんが、派手に遊んでいるようなシーンは一切なし。
外見やファッションも地味で庶民的で古臭く(長生きすぎて流行に疎くなるのはわかるが)どうも貧相な感じがします。

彼らは趣味や生きがい、「長生きしてこれをやりたい」というような使命を持っているのでしょうか?

そんな「あんたらその生活楽しいの?」とききたくなるような虚無感が漂っているわけですが
ローズだけは獲物を探し求めたり仲間を統率したり
パワー溢れるフレッシュな若手&頓智のきいたおっさんと闘わなきゃいけなかったりで、
なかなか充実しているように見えました。


③テーマ

この映画のテーマの一つに「人の死」があります。
シャイニングを持ったダンは、ホスピスの仕事で老人を看取るさいに、
不安や恐怖をやわらげ彼らの心に寄り添うことで
その力を生かす道を見出します。

敵対する「真の絆」でも、途中で長老が死ぬのですが、何世紀も生き続けた彼らでも、いやそんな彼らだからこそ、死ぬのは嫌だったり心残りがあったりするのでしょうか?
そこでローズが、ダンと同じようにしっかり看取ってあげているのがおもしろいなと思いました。


イラストbyありしゅ





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