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「異性愛の女」という名の変態性

あるときイラスト投稿サイトDeviantARTで「tied(拘束)」とタグをつけたイラストをアップした直後から、同じ特徴のあるいくつものアカウントから次々とフォローされたことがありました。

そのアカウントというのは、ざっくりいうと「M男のイラストを集める男性ROM専たち」なのですが、とにかくM男のイラストをひたすら集めてお気に入りフォルダに入れている人々です。

それはBLではなくて、あくまでもS女とM男の絵
女性の容姿は、いわゆる筋肉娘から人外から、普通のかわいい萌キャラまでさまざま
内容は、威圧的な女に迫られて恥じらったりオロオロしているような男の子を描いたものから
もっとあからさまな拷問、緊縛まで、多岐にわたります。

男性向けの絵は「美少女が単体で描いてある」「相手の男がモブ扱いになっている」というのが多いのですが
あの世界ではM男もS女も両方ともはっきりと描かれ、誰もモブ扱いになっていないという、女性向けの絵に似た特徴を持ちます。

「あーこんなニッチなニーズがあるのだな」「おそらく描き手が供給不足でねらい目」とは認識したのですが、

彼らの望みはどこか曖昧でつかみどころがなく
集められた絵を見てその構成要素を抽出し、自分の絵として応用するという作業が私はできません。

もしかすると描き手が不足していることとも関係していて、供給が少ないため贅沢言えずに
ROM専たちが多少好みではないものまで幅広くお気に入りしているからかもしれないし、

そもそも彼らの心が実際にMであるなら、確固とした意思を持って自分の好みを追及するよりも
漠然と何かを探しながら漂っている、という状態こそ自然だからなのか?わかりませんが

ゲイは違います。ゲイの望みを把握することは驚くほど簡単で、
たぶんpixivでゲイらしき人のブクマフォルダを10~20人分も見れば、誰でもそこそこゲイ向けの絵を描くことができてしまいます。

ノンケの男が好む萌絵というのもおそらく同じくらい単純で、すぐにその構成要素を割り出し応用できるのではないかと思います。

私が合わせないのは単純に自分の萌とは違うからと、すでに供給過多で迎合するメリットが薄いからで「わからないから」ではありません。

ところが「M男の絵を好む男ROM専たち」というのは本当に「なんやらようわからん人々」なのです。

この曖昧さ、つかみどころのなさにになんとなく馴染みがあるような気がして探っていくと
それは私の中で「異性愛の女性たち」に繋がってゆきます。


異性愛の女絵描きというのはある意味奇怪な存在です。

(そもそも本当に異性愛なのか何なのかわかりませんが、彼氏や夫の存在を公言している人をひとまず「異性愛の女絵描き」とします)


異性愛の男絵描きたちは、萌絵描きのみならず伝統絵画の時代から、何百年も夢の女を描いてきました。

ゲイの男もそれと同じことをします。ただ対象が同性だというだけで、ようは好みの男の絵を描きます。

単なる百合好きではない真正レズビアンの女絵描きも何人か見たことがあります。
彼女たちの絵は「異性愛の男絵描きが描く絵」に似ています。やはり好みの女を描いているようです。

(ちなみにノンケ男子が求める女性像とレズビアンが求める女性像の間には、ノンケ女子が好む男性像とゲイが好む男性像よりも、はるかに高い類似性があると感じました)

この3種の人々が好んで描き、さらにお仲間からも人気となる絵は、かなり大雑把に言ってしまうとですが
豊かな肉付き、健康的、明るさ、セクシーさ、歓迎するような雰囲気 などの共通項をもっています。


異性愛の女性だけが、これらといささか様相の異なる作品を好んで量産し、また支持するのです。


おまえはぜんぜん異なってない イケメンなんかを描いてるじゃないか、と言われればそうですし、私と同じことをしている女絵描きも大勢います。

しかしオリジナルを描く女絵描きの半数くらい、またはそれ以上が、違うことをしています。

たとえば性を剥奪されたかのような無機質な少年を描く人々
病んだようなキャラを描く人々 子どもを描く人々
そして異性愛でありながら女しか描かない女性というのも多く、これは男性に比べて驚異的な数です。

男しか描かない男絵描きというのはそのくらい少ないわけですが

ただその中にも「異性愛でなおかつ男の絵しか描かない男絵描き」も少数ながら存在します。

それがM属性の男絵描きたちです。

そして、彼が同性愛者ではないが男しか描いていないのなら、その作品は高確率でナルシスティックな自己投影です。

自己投影は異性愛の男性においてはこれほど数が少ない、いわば特殊性癖ともいえる分野なのですが、
異性愛の女性となるとむしろマジョリティに転じるという、謎の逆転劇が起こります。

でも、そうだとするとなぜ女性たちはこんなにも、理想化された幻想的アバターを必要とするのでしょうか?
それとも逆に、こんなにも多くの男性が自己投影を必要とせず
理想の異性を作り上げることにのみ注力していることの方が異常なのでしょうか?

話は逸れますが
学業における、何十年か前には男女比が大きく偏っていた分野も
先進国の多くで、その男女比は半々になりつつあるといいます。

もし社会の圧力が人の興味関心を操作して男女比が偏っていたというのなら
時代の流れとともに抑圧が消え去り、
Mの人々も男女半々 自己投影系絵描きの数も男女半々になってゆき

やがては「美しい男や少年の絵を描く異性愛の男絵描きたち」が次々と誕生・増殖してゆくのでしょうか?



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