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【イベントレポート】サーキュラーエコノミーが目指すこれからの都市アムステルダムで今、起きていること。

NPOグリーンズさんが主催するイベント、サーキュラーエコノミー勉強会に行ってきました。オランダ在住で現在日本に一時帰国している安居昭博さんがオランダのサーキュラーエコノミーについて、リアルタイムの現状をお話ししてくれました。実はアキさんのトークイベントには半年前にも参加したけど、この半年間の間でも、情報が最新・リアルタイムのものにアップデートされていて、一分一秒でも聞き逃すことは出来ない、中身ぎっしりの勉強会でした。

ゲスト:安居昭博さん
アムステルダム在住サーキュラーエコノミー研究家 / サスティナブル・ビジネスコンサルタント / 映像クリエイター。

オランダ、アムステルダムってどんな街?
・オランダアムステルダムは若者が多い街。在住者の平均年齢39歳(東京45歳)
・中央地区、建物の70−80%が17−18世紀に建設された。

▷世界的人口増加と従来型ビジネスモデルの限界

1760年(産業革命初期)の世界人口…7億人
2020年の世界人口…73億人

260年前は、ゴミを出しても地球への負荷は大きくなかった。
260年間で人口が10倍になったのにも関わらず、経済・生産のシステムは変わっていない。だから同じようにゴミを出していたらゴミが増え続ける一方。

一方通行型経済モデル(ライナーエコノミー)
→大量のゴミ、汚染
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循環型経済モデル(サーキュラーエコノミー)
→廃棄物をなくすことが最終、究極目標。
自然界にはもともと廃棄物はない。

*2015年頃からでてきた新しい経済モデル。

*サーキュラーエコノミーは一言であらわすのは難しい。
リサイクルビジネスと同義ではない。

*サーキュラーエコノミー≠CSR
植林などのCSR活動は事業の1%にすぎない。サーキュラーエコノミーは事業の99%が環境に配慮している活動。つまり事業の根幹でゴミを出さない環境に優しいビジネス。CSRとして植林やゴミ拾いやっていることはサーキュラーエコノミーを実践しているとは言えない。

*一方通行型のベースとしてきた考え方の上で生まれたのがGDP
GDPとは一定期間(一年間)に一国内で生み出された付加価値総額。
長期的予測が不可能
外部不経済(環境汚染)や資源枯渇を無視
GDPの永続的成長は不可能!
GDPの向上≠幸福度の向上
→短期間に大量生産・大量廃棄を行う一方通行型経済が基本に
→経済が中心とした考え方・生き方にとらわれてしまう。

*「5分類」を超えたサーキュラーエコノミーの現在

5分類のビジネスモデルとは?
1.  サーキュラー型のサプライチェーン
2.  回収とリサイクル
3.  製品寿命の延長
4.  シェアリングプラットフォーム
5.  サービスとしての製品

オランダでは、もはや「5分類のビジネスモデル」を議論のメインテーマとして扱うことはなくなってきた。次のステップへ。

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▷サーキュラーエコノミー化に向けた6ステップ

①世界的潮流を読み解く。
世界のサーキュラーエコノミー企業
・Philips: CE事業だけで全体収益の約10%をすでに獲得済み
・Apple: Mac book airを100%リサイクル
・ Uniliver: 2019年は非サステナブルな同社ブランドを全て売却すると発表
・ IKEA: Sustainable living Project。3年間で売上3倍。

★オランダ政府「2050年までのサーキュラーエコノミー計画」の公表
・補助金の再整備(sustainability, Agriculture, Innovation, International Business)
→民間がサステナブルなビジネスをした方が補助金が出やすい。
・行政と民間からなる組織。行政と民間との距離を狭める。官民一体で
・オランダ国内の電車とトラムは既に100%再生可能エネルギー。
・アムステルダム市は2030年は市内へのガソリン車の立ち入りを禁止すると公表。
・地域の生ゴミコンポストの設置を開始。by民間企業
・ドーナツ経済
経済の大きさを輪っかで示している。環境の上限を設けている。ある一定以上は経済的成長を求めないで維持する。
・Learning by doing やりながら学んでいこうという行政のポリシー。
前例があるかないかではなく、今後の社会をよりよくするという基準でプロジェクトを進めていく。

アムステルダム市サーキュラーエコノミー2050年プラン
想像してみてください。
洗濯機を購入する代わりにか率ことができる。
建物は全て解体することができて、新しい土地にそっくりそのまま再び建てることができる。
捨てられるはずだったコーヒーの搾りかすを使って育てるマッシュルーム。
ほとんど使われない車を各家庭で一台ずつ購入する代わりに、地域の住民と一緒に数台の車を共有する。

*GDP以外の国際指標形成>>幸福度指数、ジェンダー指数などで社会の価値を図るべき。

②マテリアルフローアナライシス(資源の流動分析)を行う。(自社の分析)
・自社の製品の資源や材料がどこからきているかわからない。
→自社で取り扱っているモノの資源がどこからきているか、そしてどこに行くのかを分析するためのメソッド。=マテリアルフローアナリシス

●アムステルダム市が廃棄物を調査
・4分の1が建築業界から出ていることがわかった。
    →建設業界から出るゴミに注力。
・プラスチック、生ゴミ、建材がゴミとして多いことがわかった。
    →この3種の資源を減らすことに注力。

●DGTL(アムステルダムのミュージックフェスティバル)のMaterial Flow Analysis

イベントで使われた全ての資源がどこからきていて、どこへ行くのかを調査。

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Living Labo: フェスティバルやイベントが実験場となっている。

FAIRPHONE
自分で分解が可能。バッテリーの取り換えも可能。
世界中でフェアフォンが捨てられることを避けることを理念として掲げている。
消費者もデポジットとしてフェアフォンをリターンすることができる。
全てのサプライヤーが一般公開されている。トレーサビリティ。

③「3R(Reduse>Reuce>Recycle)」を基にした優先順位の決定(優先順位)
MUD Jeans
月750円でリース。ほつれたり、サイズが合わなくなったら交換。
他社ジーンズからの受け入れも可能。
品質の良くないジーンズが流通するようになり、80%のジーンズは購入から1年で捨てられている現実。
>>それならジーンズは所有されなくて良いじゃん。
この世からジーンズが捨てられることをなくすことをビジョンとして創業。
アキさんが履いているジーンズは…
 リサイクルコットン:40%
 新しいオーガニックコットン:60% でできている!

*MUD Jeansが行った3Rを基にした優先順位の決定
<Reduce>背部の革ラベルを使わない、が最も効果的なアプローチ。
<Reuse>ファスナーはないと困る(Reduceが不可能)>ファスナーではなくボタンにすれば繰り返し使える。
<Recycle>ジーンズ本体はReduce,Reuseも不可能だからリサイクルをしよう。

④ビジネスモデルの抜本的改革
●FAIR PHONE
使用済みスマートフォン返却へのキャッシュバックシステム。
全ての製品が自社に戻ってくることを前提として設計。
他社製品も20ユーロで買い取る。

NOTHING NEW
アメリカのスニーカー

●Philips x Schipol Airport
照明器具の「販売」から「リース」モデルへ。
MRIの「販売」から「リース」モデルへ。

⑤ビジネスの透明化の推進
「世界の消費者の66%がサステナブルな商品でも問題ない」(Nielsen 2015)
「サステナブルな製品には定価より10%多く支払っても良い」(Sustainable brand index2018)

FAIR FOOD
コーヒーにブロックチェーンを導入
コーヒーパッケージにQRコードを導入。農薬の情報までわかる!

⑥パートナーシップ2.0の構築
●Excess Material Exchange
ある企業で捨てられる資源を他の企業で利用できないかを探ることができるパートナーシップ
Ex.) ABN AMROで使われている窓枠はPhilipsで使われていた窓枠
行政もこういった取り組みに参加。行政が使った草や土壌を民間企業が繊維にして、他の企業が断熱材を作る。など

▷他事例

INSTOCK
スキポール空港と提携。
スキポール空港内の滑走路にいる鴨を処分しなければいけない→その鴨をフライドチキンとして提供。

●AMSTERDAM ECONOMIC BOARD

●De Ceuvel
サーキュラーエコノミーの実験場を行政が公募を行ったところ、民間企業De ceuvel。もともとは造船場。
船の上にオフィスを立てて、スタートアップが集まる。
レストランで出た廃棄物を魚の餌に。魚の糞を畑の肥料に。
コンポストトイレで肥料化→植物の育成
ここで出るゴミはゼロに。

DE HALLEN
もともとトラムの車庫だった場所をフードコートや映画館にリノベーション

FARALDA CRANE HOTEL
クレーンホテル

NDSN
もともと造船場だったところを都市開発プロジェクトによりクリエイターが集まる場となる。

De School
レストランやカフェ、イベントの場。

SCHOON SHIP
フローティングハウス。EUも資金援助。
フローティングハウスに住んでいるコミュニティの繋がりも。
市も特別に実験の場として許可をして、民間企業が運営。

Floating Farm
水に浮かぶ農場。

▷質問

Q. オランダはなぜこんなに積極的にサーキュラーエコノミー成功してるの?
A. オランダ政府がある時にGDPから脱却する方針転換をした。
短期的利益を求めるビジネスと、長期的利益を求めるビジネスのモデルは全く違うものになる。
サーキュラーエコノミーの方向に目指すコンセンサスが取れている。
何もしないことがリスク。すでにコットンなどは高くなっている。

Q. サーキュラーエコノミー宣言をしているオランダ・アムステルダムはどのような文脈でなっていったのか。
A. オランダももともと輸入資源に依存していた国→資源枯渇のリスク。
自国内で資源循環をしていく必要性があった。

Q.誰がサーキュラーを引っ張っていったのか。
A. サーキュラーエコノミーは1960年代ごろから言われていた。環境面
アクセンチュアとマッキンゼーがサーキュラーエコノミーは環境面だけでなく経済面でもメリットがあると提唱。
→オランダを代表する他企業が追随。
コンパクトな街だから、行政と民間の距離感が小さい。「誰かが」引っ張っていったわけではない。
企業が、民間が、政府が、というよりも、みんなで一緒にやっていった。

Q.オランダ人のメンタリティーはどんなもの?
A. 世界初のプロテスタントの国として独立したものの、当時からカトリック、ユダヤ、他の宗教、宗派も受け入れる柔軟性。
ビジネスや経済的利益、社会構造を重視していた。
オランダ形成後すぐにオランダ黄金期を迎える。
新しい考え方にオープン。
王様がトップダウンで作り上げた国ではなく、みんなで、ボトムアップ型。
日本人は困難に直面した時に仕方がないと受け入れがち。
ヨーロッパは困難に直面した時や合わなかった時に移住しながら、その場から逃れてきた国。

Q.日本の企業人に響くポイントは?
A. 今後10年を見越した時に、新しいビジネスを模索している企業が多い。
サーキュラーエコノミーは環境面でなく、ビジネス面でのメリットもあることに気づいている。

Q. 日本で新規事業立ち上げで共創を作っていく時に、自社でどう利益を得るかに引っ張られてしまう。どうすれば良いだろう?
A. 同じマインドを持った人たちが集まっているコミュニティから始めていく。

・『オランダが先進国』『オランダが進んでいる』というわけではない。
日本にも先進的なアイディアはある。日本でもサーキュラーエコノミー化へのシフトは行われつつある。

・オランダはビジネスの見せ方、マーケティングがうまい。


あと勝手に宣伝しちゃうけどアキさんは、Earthhackersというメディアでもっと分かりやすく情報発信してくれています。
ヨーロッパの有名なスタートアップ企業やYoutuberなどインフルエンサーのインタビュー取材などもあって、とっても面白い。そして何より映像が素敵。

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