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半沢直樹になれない、99%の会社員、 「超氷河期入社」の半澤くんへの手紙 エピソード#1『会社、辞めようかと思う』

友達の半澤くんからLINEをもらう。
『会社、辞めようかと思う』

「半沢直樹」がヒットしたのは、
あんなこと、普通の会社員にはありえない世界だから。
99%の、半沢直樹になれない、フツーの会社員が
あの虚構の勧善懲悪のドラマを楽しんだのだ。


会社を辞めくなる時なんて、会社員は年中あるはずだ。
定期的に襲う、感情の波のようなもの、だと思う。
珍しいことでも、特別なことでもない。


ところが、

半澤くんとLINE電話をして、あれからずっと考えている。頭の中がグルグルしている。
なぜ、彼の話が私の心に刺さっているんだろうか。
それは半澤くんが「会社を辞めたくなった理由」を聞き、
同世代の人間として、腹が立ってきたから。


半澤くんは、大手の手堅い銀行に勤務している。
一度転職をして、二社目だ。


ある日面談に呼ばれ、過去の査定の「ダメだった部分」を
チクチク言われ始めた。
ほじくりかえしてきた、感じた。
何か、陰険な、いやらしさを感じた。
この銀行は、人員整理をしたいのかもしれない。


辞めさせることはできないから、外堀を埋め始めた、ということだろう。
私が会社員だったころ、先輩から
「会社を信じ過ぎちゃダメだよ」という忠告も聞いたことがある。
会社なんて、ドライなところなんだから。
私の代わりなんて、いくらでもいるんだから。
私のことなんて、考えてないんだから。
それでも、
仕事もおもしろく、のめりこんで、情熱をもって仕事をしていたら、
中堅になったら、
自分は人員整理の対象になっていた。
TV局で言ったら、ずっとADのような下働きをしてきて、
やっと自分の裁量で仕事ができる!と思っていたら、
時代はTV を必要としなくなった、といったところか。

 
銀行も、これから大変だと言われていたが、
そうなのだと思う。
半澤くんは、超氷河期、
バブルがまさにはじけた後に銀行に入り、
新人の彼は、嫌な仕事(債権回収)もさせられたという。


私も超氷河期に入社した人間だ。
バブルのことは全く分からず、
先輩に「バブルの頃はさ~」と言われると、
自慢にしか聞こえなかった。


貧乏くじのような時代に入社した同世代として、
半澤くんの話が他人事ではなかったのだ。
「何だかな~」 と思った。


私たちは、「バブルのうまみ」を知らず、
不況のツケを一身にかぶり、そしてこれから、
日本の膨大な天文学的な数字の日本国債も、
背負うのだろうか。


もうちょっと上の世代は、もうすぐ定年で
『逃げ切る』ように見える。モヤモヤする。


半澤くんは、これからどうするのだろう。
それでも、この会社にいる、という選択肢もある。
自分で決めることだ。
それでも、私が言った言葉は、
「今の会社にいながら、他を探したり、外に友人を作ること、
じゃないかな。
辞表はいつだって出せる。
その間に、とにかく、自分は何をしたいのか考えたり、
次の就職先を探したらいいと思う」

最後はね、半澤くん。
「尊厳の問題」だと思う。
感情的に会社を辞めるのは、反対だ。


でも、こんな会社に時間を使うのが嫌だと思うなら、
人間としてもう嫌だと思うなら、
あなたのプライドの問題、だと思う。


ちょっと先に会社を辞めて思うけど、
いろんな生き方があるんだな、と思う。
あの時、会社にいた時に見えていない景色が見える。
まだまだやり直せる世代なんだ。
仕事で学んだことは、全部頭の中に入っているから
会社を辞めても「ポータブル」にどこにでも持っていける。


逃げ切れる世代は、逃げ切ってください。


でも、
私たちは、ここから、あなたたちにできないものを作っていくのだ。
半澤くんと話しながら、私は何かのスイッチが入った。

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