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「幸せになりたい男子」が集まる居酒屋~強い女と、強がっている女の違い、の巻。

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ここまでのあらすじ。
その居酒屋は、町はずれにある。
その婚活男子たち4人は、カウンターで
猫背でハイボールを飲み、
婚活の愚痴を言う。
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「もしかしたら、この女性を、あの居酒屋に連れてくればいいのではないか。
もしかしたら、この中の一人ぐらいと、気が合うのではないか。
居酒屋に電話をして、誰かを呼び出せばいいのではないか。」


あの4人を思い出していた。
あの居酒屋のカウンターには、いつもこの常連の婚活中男子4人がいる。
長男
次男
三男
四男  のようなもの、だ。
この居酒屋の店主は、兄貴分でいつもこの4人の愚痴を聴いている。
「いやー、やっぱり長男から幸せになって欲しい」という。
「ところてん方式」のように。


もうこの際、「順番など」どうでも良い。
三男は、そろそろゴールインか、と言われているので、
他の3人から選んでもらってもいいのではないか。
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ある女性が泣いていた。
女性は、私がジムで出会う人。


ジムで出会う仲間、というのは不思議なもの、だ。
お互いの苗字も知らないこともある。
彼女の苗字を知らなかった。
仮に、真美さんとしよう。
30代後半だろうか。
さすがに鍛えているだけあって、素晴らしい体形を
維持している。
明るい女性だ。


この女性は、ストイックに、水泳、バイク、エアロ、
あらゆるエクササイズをやっている。


いつもいつも、ジムの廊下や更衣室で会うため、
世間話をするようになった。
真美さんは、いつもジム閉館までいることもある。
エクササイズが好きなんだろうか。


明るく頑張っているんだけど、
彼女は、何か、ストイック過ぎる。
何か、ちょっと無理を感じていた。
ある日、私は
「毎日ジムで遅くまで鍛えててすごいですよね。
何かの大会とかあるんですか?」

と聞いてみた。
ただ、体を鍛えているだけ、にしてはストイック過ぎる。
「仕事のこととか、いろいろ、忘れたいの」と言った。


私の知っている真美さんは、強い女子、だった。
ストイックに、体を鍛えている人。


そんな真美さんが、先日泣いていた。
ジムの女子更衣室で。
あの強い、明るい、真美さんが。
ジム仲間のおばさんが、話をうんうん、と聞いていた。
「ごめんなさね。でも、涙があふれて、、、」
ワンワン泣いていた。


私も、わけが分からず、肩をポンポン、と叩いた。
彼女は、堰を切ったように、嗚咽しながら話し始める。
「私、派遣社員なんです。
 今日は、新しい派遣先に初めて出社する日でした。
 緊張したんです。
 母は、派遣社員ってことに、理解がないんです。
 バイトとか、それぐらいにしか思ってなくて。
 緊張しながら、私なりに頑張っているのに、
 母は理解してくれない。
 早く結婚しなさい、とか、
 そんな不安定な仕事してないで、とか。
 口論になったんです。
 なんか、とてもやりきれなくなりました。」


真美さん、あなたはなぜそんなにストイックだったか、
理由が分かった気がした。
家に帰りたくなくて、何かを忘れたくて、
このジムに居るのだね。
苗字も知らない、この女性が、急に近い人に思えた。


ふと、
「婚活男子たちよ、今こそ、彼女を慰めに来い」と思った。
あの「婚活男子」は優しい。
優しすぎるので、不器用で、何かうまくいっていない。
でも、きっと優しく、話を聴いてくれるはず、だ。


強い女と、強がっている女は違う。
真美さんは、「強がっている」しかないのだ。


「今、だよ!」
長男、次男、四男に、出動命令を出したくなった私。
いつもの店にいる彼らと、
このジムにいる真美さん。


距離にして、1kmも離れていない。
「愛の不時着」を思い出してほしい。
愛があれば、軍事境界線・38度線ですら、超えられるのだ。


真美さんを、あの居酒屋に連れていくか。
あの、最近ふられたらしい次男に
「ジムのタダ券あるんだけど、来ませんか?」と誘うか。


強がっている女、は攻略法がある。
ハッキリ言って、簡単だ。
それは、私が伝授するので、任せて欲しい。
追ってPDFで送ろうじゃないか。
こんな弱って泣いてしまっている真美さん。


詐欺師のような男が来てしまうぐらいなら、
うちの男子たちを派遣したい。
軍事戦略家のような気分の夜。

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