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店主の暮らし日記③篠山で出会った手仕事に感動した話

こんにちは!雑貨屋「あるくらし」店主の絢音です。                                                                                            
(といっても、初回投稿の通り、雑貨屋「あるくらし」オープンに向けての歩みの記録をつけています。詳しくはこちらの記事に記載しています!)
 

店主の暮らし日記って?

雑貨屋オープンに向けての歩みの記録と並行して、店主のリアルな暮らしについても日記をつけています。
どちらかというと要領が悪く、「やっちまった…!!!!」なことの方が多い私。
そんな私なので、なんとか今日より明日、もう少し先の自分がちょっとでも気分良く楽しく過ごせるようにはどうすればいいんだろう…と日々模索しながら暮らしています。
そういった暮らしの奮闘記や、影響を受けたこと、時にはなんてことない事なんかも残していけたらいいなと思います。

今回は、「篠山で出会った手仕事」について。

先日篠山を訪れました。
3年前、仕事の関係で京都府の綾部市という場所で暮らしていました。篠山はそこから、車で1時間という距離だったため、よく夫と遊びにでかけ、大阪に引っ越してからも、定期的に訪れる場所です。

今回篠山を訪れた目的は3つありました。
まず、お正月に炊く黒豆を買うこと!

昨年作った黒豆。今年も挑戦に燃えてます。

昨年末、初めて黒豆炊きに挑戦して、手間はかかるものの、なんとか美味しく仕上がり、できることがひとつ増えたことに、純粋に嬉しくなりました。昨年使った豆も篠山で購入したもので、今年もよろしくね、の気持ち。そして、昨年食べきれず少し黒豆をダメにしてしまった事がとても悔しく黒豆に申し訳なく、今年は保存方法やアレンジ方法も考えながら向き合いたいぜ!とリベンジの気持ちもありました。
黒豆は、ちゃっかりあんこ炊き用に新物の小豆も併せて昨年買ったお店で購入いたしました。
 
2つ目の目的は、喫茶/宿oitoさんで行われる大久保ハウス木工舎さんのイベントに伺い、家で使用している大久保ハウス木工舎さんの木ベラをメンテナンスしていただくこと。

木ベラをメンテナンスしていただいている所です。

長野旅行で訪れたGallery senさんの店主の方に、篠山の喫茶/宿oitoさんでイベントを行うことと、大久保ハウス木工舎さんで購入した商品をメンテナンスしていただけることを伺いました。そして在廊されている日は、私が篠山に行く予定をしていた日!という偶然。嬉しくて、予定に組み入れました。

イベント会場の喫茶/宿oitoさんを訪れると、すでに大久保さんが、木ベラや匙を削っておられました。実際に手を動かされているシーンを初めてみて感動しつつ、声をかけたい所ひとまずぐっと堪え、まずは喫茶で腹ごしらえです。

アーモンドとバターってもう最高に美味しい。。

こちらの喫茶店は、昨年大久保ハウス木工舎さんの木ベラを購入したuneさんの姉妹店で、昨年も同じように夫と喫茶も利用させていただいていました。たまたま注文したメニューも昨年と同じ内容で、甘党の夫はフレンチトーストにアイスカフェオレ。私はアーモンドバタートーストとホットカフェオレ。「変わらないね。」と夫と微笑みながらいただきました。
喫茶店は、松本民芸家具さんの椅子に腰かけて過ごすことができます。以前旅行で訪れた長野県で松本民芸家具さんをお伺いした際、新しい家具と使い込まれた家具の両方を拝見することができました。重厚感のある濃いブラウンが印象的な家具が、時を経て少しずつ塗装が薄くなり、使用者の暮らしの軌跡が感じられる温かな味のある雰囲気に変化していきます。その姿が魅力的で、そんな家具と共に喫茶を楽しめる時間は贅沢でした。
お茶の時間が落ち着き、まずは木ベラと匙の展示を眺めます。そこで驚いたのは、自分が昨年購入させていただき1年間使用した木ベラと無塗装の新しい木ベラとの色の違いでした。

左:無塗装の新しい木ベラ 右:1年間使用した木ベラ

思わず許可をいただき新しい木ベラと並べて写真を撮らせていただきました。この色の差。。
普段、炒め料理をするときはほぼ毎回使用させていただいていて、あまりにも普通に毎日を共にしていたため、1年という年月でこのような変化があるとは、夫婦揃って気づきませんでした。
木ベラが敢えて無塗装で販売されているのは、木の道具がどのように変化していくのか、使い手自身が体感できるようにしていると伺いました。料理の油がしみやすい鍋に触れる部分を起点に持ち手に向かって色の濃さがグラデーションのように変化している姿を見て、1年分の暮らしが、ここに蓄積されているんだなぁと、私たちと共に暮らしてくれている仲間のような嬉しさを感じます。

メンテナンス前の木ベラ。鍋に触れる部分が1年の使用で擦れて少し白っぽくなっています。

いよいよ、木ベラのメンテナンスをお願いします。見ていただくと、目立ったキズがなく大事に使ってくれていますね、とおっしゃっていただきました。私は内心、私たちは何気なく普通に使っていて、木ベラ自身がおのずから我が家の道具として育ってくれていたのが正直な所だぁと思っていました。そして、そのように木ベラを活かされている作家大久保さんを勝手に尊敬しているのでした。鍋に面する部分が擦れて白っぽくなっていたため、そこをひと削りしていただき、食材を潰す動作に便利な先端の部分も整えていただきました。するとまた、なめらかな木肌になり、削った部分も油が木にしみこんでいて、削っていない部分とも濃さが同じ色をしていました。

メンテナンス終了後の木ベラ!擦れた部分を削っていただき、滑らかな木肌が現れました!

木ベラはやすりを使わず鉋だけで仕上げておられるのですが、とてもなめらかで持ち心地が良く、毎日の料理で心の引っ掛かりがなく、スムーズに使うことができます。使う前は少し構えて、「ダメにしちゃうのが心配…」と特別視していた所がありましたが、使うと悩みいらずで、木の道具のある暮らしを「普通」に過ごすことができました。毎日の暮らしにこうした、変化を共に重ねてくれる道具や、気づかないくらい生活に馴染み、実は快適に過ごさせてくれちゃっている縁の下の力持ちな道具はやっぱり我が家にかかせません。
松本民芸家具さんの塗装が落ちていく変化、大久保ハウス木工舎さんの無塗装の木ベラが色づく変化。変化の仕方が違えど、木材を使用した道具と暮らす生活の豊かさを感じた1日でした。
 
最後は1番の目的、so arrowさんのアトリエに伺うことでした。

昨年伺った、丹波篠山クラフトヴィレッジというイベント

昨年、丹波篠山クラフトヴィレッジというイベントに伺いました。そのイベントは参加されている工房を実際に訪問し、制作されている現場を見せていただけるものでした。その際訪れたのが、so arrowさん。イベントのパンフレットをみた時に何か惹かれるものがあり、直観でここに伺いたい!と思い、向かいました。訪れてみると、外からも展示の様子をうかがえる解放感のあるアトリエ。中に入ると窓から心地よく光が入り込み、照らされたガラス作品の煌めきに心を打たれます。
あまりにも素敵な空間で少し緊張していた所、登場した作家児玉さんの気さくな対応に緊張の糸が切れ、その後は好奇心全開で工房の見学とアトリエに展示される作品を拝見しました。

so arrowさんのアトリエ。

「これは失敗作なんですよ」と、私だと見栄をはって隠してしまいそうな部分も見せていただきました。ご自身が表現したいと思う作品を作られるまでに多くの実験や挑戦を重ねられているリアルな姿を見られたことにジンとします。そして、普段からの制作や失敗との向き合い方にも探求心を持って取り組まれているんだなと、伝わるまっすぐ、優しいお話しのされ方にも感動しました。心を打つ作品の裏側には、幾度もの試行錯誤があってのことなのだと、頭で理解していても普段は忘れてしまいそうな大切なことを呼び戻してくれるようでした。そういった見えない部分に実直に向き合われる姿に、私も前向きなエネルギーをいただけたように思います。

「硝土器」と名付けられた一輪挿し

そして、展示方法にも心を揺さぶられました。アトリエの一部に小さな砂場を設けられていて、そこに一輪挿しが埋まるように展示されていました。地層に眠る鉱物のようなディスプレイは、まるで自然界の美しい景色を見ているようで、展示の見立て方の素晴らしさにも感動しました。今までの雑貨体験の中でも衝撃的なくらい感動の熱量が高く、「硝土器」と名付けられた一輪挿しを購入させていただきました。篠山の地で採取された土を焼き付けられているもので、美しい青紫色のガラスの上にざらりとした土の質感が加わり、新しく作りだされた作品のはずなのに、この地に元々ずっと、草木と同じように在ったような自然に溶け込む作品に魅了されました。
そんな出会いから1年が経つ今も、こちらの一輪挿しを眺めると、純粋にうっとりする気持ちとシャンとした気持ちをいただきます。
実は、「いつか雑貨さんができたらいいなぁ」という夢から、「児玉さんの作品を扱わせていただけるような雑貨屋さんになりたい。。。」という大きな目標ができた体験でもありました。
そんなso arrowさん。12月から春までは制作のためギャラリーをお休みされるとのことだったので、今年お伺いできるのは11月がラストチャンス。どうしても伺いたかったのです。
1年ぶりにお伺いしたso arrowさん。アトリエから臨む冬間近な篠山の風景、心が揺れる展示、児玉さんのお人柄、どれも1年前に感じた感動がそこに在りました。

「ころころ」と名付けられた一輪挿し。

今回は、「ころころ」という名がついた一輪挿しを購入させていただきました。ガラスに真鍮の挿し口が埋め込まれたこちらは、ガラスと真鍮の結合部分がじんわり青くにじみ、光の入り込み方で青色の見え方が変わります。名前の通りに、ころんとした形も愛らしく、昨年購入させていただいた一輪挿しと並べて飾るのも素敵です。
 
「ただそこに在るだけでにやけてしまうような出会いを掬い取り、誰かのある暮らしにそっと寄り添いたい」という想いを持つ雑貨屋「あるくらし」。今回の篠山の旅では、雑貨が自分にとっての暮らしを彩り、支えてくれる仲間のような存在で、そう思える出会いは、希望の光のようだなと感じました。こういった希望の光を雑貨屋「あるくらし」が、小さな希望の光を探す誰かに繋いでいけるよう、noteに想いを残し、少しずつ形づくっていきたいと思います。
 
長くなりましたが、はじめましての方も引き続き読んでくださっている方も、店主の暮らし日記にお付き合いいただきありがとうございます。
今後も焦らずゆっくりと続けていこうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
 
店主 絢音

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