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夜のお散歩クエスト、家出少女をエンカウントした。

趣味は散歩、というか歩くのが好きなんですよね、考え事をしたりできますし。

行き交う女の子を見ては、あの子可愛いななんて思ったりしながら常に歩いています。

歩くのが好きなのもあって、最近まではDQWにハマっていた私。

夜中だろうが近所をぶらついたりしてしまうので、ちょうどいいゲームだわ、なんて思っていました。

私がDQWに疲れ、たまたま夜の公園でひと休みしていた時の話です。

ふらっとやってきた一人の少女が、公園の入り口にある石段に腰掛けました。

『あら、こんな夜に女の子が…』

夜11時くらいでしたかね、人通りもまばらで、その少女はポツンと一人座り込んでいました。

まぁ私も人間観察(主に女の子)が趣味みたいなもんですから、また推理をするわけです。

その少女の服装は白いジャケットみたいなコートを羽織り、下は学校のジャージ、素足にサンダルでした。

見た目は中学生?言っても高校生くらいの女の子。

しかも風も強く、寒い中、バッグも何も持たずにただ座っているだけ。

彼氏にでも呼び出されて待っているのかな?なんて想像を働かせながら見ていました。

しかし、一向に誰も来る気配もないし、スマホを見ることもない。

しばらくすると石段の上で横になり始める少女。

『え?どゆこと?』

待ちぼうけをくらって寝に入ったのか、はたまた病んでいて眠剤でもキメてんのか、色々なパターンを考えました。

さすがにこんな時間にこんな所で女の子が寝てるのは色々マズイだろう、変なやつが来てもおかしくはない。

※そうです。私が変なやつです。

「大丈夫?」

と私は意を決して少女に声を掛けました。

「……」

へんじがない。ただのしかばねのようだ。

「おーい、大丈夫か?」

「……」

私の呼びかけに反応しない少女は目を閉じたまま、まぁ普通に考えても知らない男から声を掛けられたら無視するだろうなと思いつつも、一人で寝かせとくわけにはいかないのでしばらく側に居ました。

風が吹くたびに、少女が肩に羽織っていたコートがはだけてインナーのタンクトップや素肌が丸見えになってしまう。

おいおい少女がこんな格好で寝ていたらアカンやろ、つか、ありがとうございます。と心の中で思いながらコートをかけ直してあげました。

「寝てたら風邪ひくよ」

全くの無反応、さすがにほっとけない精神も相まって持久戦に持ち込みました。

ゆすってみたり、ツンツンしてみたり、声を掛けたり…

起きてガン無視決め込んでるのか、ガチで眠りこけているのか、定かではなかったので。

『よし、起こし上げてみよう!』

私は石段から少女の足を下ろし、抱き抱えて起こし上げようと考えたわけです。

それで座ったら起きてるし、そのまま倒れ込んだら寝てるかがわかるなと。

「よっこいしょ…」

起こし上げてみると、少女はちゃんと座りました。

「起きてるじゃねぇか笑」

私は思わず突っ込んでしまいましたが、もうここまで来たら、この少女は何をしていたのか、気になりますよね。

「なにをしてたのよ…」

起きたものの、返事をしない少女、まぁそれは当たり前ですよね。

「何があったかわからんけど、一人でいるのは危ないから居るわ」

私も次の日は仕事が休みでしたし、とことん付き合ったろうと考えていました。

にしても、嫌ならその場から立ち去るはずでしょうが…立ち去ることもしない少女。

「言いにくいことなら無理には聞かないけど…今日も寒いわな」

無反応だった彼女も私の声掛けに徐々に頷いたりしてくれるようになりました。

「あ、笑った…ごめんな、こんなわけのわからん男が来ちゃって」

ふるふる…

首を横に振る彼女、しばらくして、ようやく口を開いてくれました。

「家から出てきちゃって…」

どうやら彼女は親にとやかく言われて、家を飛び出したはいいものの、ケータイも家の鍵も持たずに出てしまったのだとか…

「でも、すぐ戻るつもりだったんだけど…閉め出されちゃって…うち、オートロックだから…」

「あらま…開けてもらえなかったの?」

「うん、インターホン鳴らしても出てくれなかったから…ここまで歩いてきて…」

「マジか…明日は、学校?どうするつもりなん?」

「ある…もう、ここで寝ようかなって…」

「さすがに無理があるだろ、警察に声かけられたら補導されるよ?」

「うん…」

そんなこんなで家出少女をエンカウントしてしまった私、このまま少女を放置するわけにも連れ回すわけにもいきません。

私が気にかける子って闇を持っているものなんですが、まぁよく見ればリスカ痕もある子でした。つくづく自分の引きが怖い。

「家出もよくするのか?」

「ううん…たまに…」

家出と言ったら家庭環境が劣悪な場合も多いのですが、話を聞けば割と普通な家庭だった。

「さすがに心配もするでしょう親なら」

「わかんない…」

親が嫌いなわけでもなさそうでしたし、私は邪な考えも抜きにして彼女のサポートをすることに。

「家に連絡してみたらどうだ?」

「でもケータイ家だし…」

「公衆電話でええやろ、その辺にあるから探しに行こう!ほら立って」

私は彼女の手を引き、公衆電話を探す旅へと出るのでした。その時、時刻は深夜0時手前。

「名前は何て言うん?俺は〇〇」

「わかな…」

「いい名前じゃないか」

夜道を歩きながら少女と少しずつ打ち解けていった。

「あーひとつ言っておくけど、これでもし警察に声を掛けられたら、俺はわかなのお兄ちゃん役になるからな、補導されたかないだろ?」

「うん…!」

都会と言っても意外と使われなくなった公衆電話ですが、なんとか見つけました。

「あった!とりあえず親に電話するぞ!」

「親のケータイ番号わからない…」

「家の番号は?」

「わかんない…自分のケータイならわかる」

現代っ子だなぁと痛感しつつ、少女のケータイに電話をかけてみることに。

「出ない…って言うか、話し中になってる」

公衆電話着拒にしてたら繋がらないかもしれない、何度か試しても話し中。

「じゃあ俺のケータイでかけてみ?」

「うん…」

それでも話し中になってしまう。

「なぁ、思うんだけど…親が心配して、わかなのケータイに掛けてるんじゃないか?」

恐らくケータイを忘れて出て行ったとは親もわからないだろう。

「そしたら絶対、心配してるってことだし、まだ親が起きてる可能性は高い」

「うん…」

「こうなったら家に行こう、俺が送り届ける。これでも親が出てこなかったら俺が朝まで一緒に居てやる」

少女は頷き、家まで案内してくれることに。意外と遠くなくて良かった。まぁ遠かろうが私は行く気満々でしたけど。

少女を家まで送り届けようクエスト。

幸いお巡りさんをエンカウントすることなく、彼女の家まで無事に到着。

マンションの入り口でインターホンを鳴らし、親が出てくれたら帰宅、出なかったら朝まで付き合うの二択、運命の瞬間。

ピンポーン…

ガチャ、ウィーン…

閉ざされた自動ドアが開き、少女は無事に親の元へと帰ることに。

私は親指を立て、少女を見送りました。

めでたしめでたし。

まぁどさくさに紛れて少女のケータイ番号をゲットしてしまったわけですが。

そこから発展することはないですよ?

不思議な出会いでしたね。

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