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日記:Rabbit House Tea Party 2022(後編)

入り口の自動ドアをくぐった直後、目の前に人だかりができていることに気がついた。彼らは入り口自動ドアの上部を見上げているようで、スマホを構えている人もいた。きっと写真を撮っているのだろう。私も検温とチケット提示を済ませ人だかりの中に入って後ろを見上げてみたところ、目の前の光景に圧倒された。皆の視線が釘付けになるわけだ。視線の先にはKoi先生書き下ろしのキャラたちが横並びに描かれた、横断幕サイズの布があった。
…………………………
ギギギッ…ときしむような音を立てながら、私の思考は動き出した。どうやら頭が真っ白になっていたようだ。あぁそうだ…写真とらなきゃ。
思い出したように手にしていたスマホのカメラアプリを起動して、ゆっくり上に向けてシャッターを押した。何枚か写真に収めて満足した私はキャラたちに背を向けて、建物の奥へと進んだ。

すると開けた場所に出て、右手側に何かの販売所らしきものが確認できた。物販は外に待機列があったし、なんだろう。それは横にあった見覚えのあるポスターですぐに判断できた。「イヤモニ」か…。ONKYOさんが出している「イヤモニ」というイヤホンが、期間限定で以前ごちうさとコラボしていたものだった。まだコラボ期間だったのね。となると「コラボしている」が正しい表現だ。ごちうさの主要キャラのイメージカラー+ラビットハウスの看板マークがあしらわれたもので、耳の型を取って自分専用の特注イヤホンをつくろうというもの。以前サイトをチェックしたことがあって、1つ印象に残ったことがある。とにかく高い。高価なのだ。軽い気持ちで手を出せる代物ではなかったし、持ち合わせもなかったので私はスルーした。高いからパース。

少し進むと突き当たりが見えた。突き当たりにはラビットハウスの夏服が並んでいた。キャストさんがこれから身に纏うものだろうか。きちんと7色そろっているので、ラビレンジャーができそうだ。この開けた空間の四つ角あたりの壁は照明になっていて、そこにはキャラクターが貼られていた。おそらく等身大だろう。右後ろにはラビットハウス、甘兎庵、フルール・ド・ラパンの外見が描かれたパネルが置いてあった。それらをすべて写真に収めて私は満足した。

そろそろホールに入場したいところだけれども、入り口がどこかわからない。エスカレータで登っている人たちは大勢いたけれど、エスカレータがどこから延びているか、行き先はどこなのかわからない。仮にエスカレータののり口がわかっても、友人含め我々の席は1Fだ。2Fに上がってどうするというのだ。すると友人が階段を見つけたらしく、上ってみようという話になった。我々の席は1Fだぞ、2Fに上がってどうするんだ友人よ。とはいってもそのほかに打つ手なしだったので、上ってみることにした。階段なので違ったら引き返せば良いし。半信半疑のままに階段をのろのろ上ってみると良い景色が顔を出した。それ見たことか。何もないじゃないか。眺めの良い景色があるだけだ。怪しんだ顔をしていたであろう私にかまわず、友人は進んでいった。仕方なくついて行ったら扉があった。あ~2F席の入り口ね。ハイハイ…。でも何かがおかしい。その違和感の正体は中からこちらをのぞいているステージの位置だった。2F席ならばステージは見下ろす位置にあるはず…。でも確かに前方に立派なステージがたたずんでいた。
あーそういうことね、完全に理解した。
つまりここは1F席の入り口というわけだ。我々は1Fから階段を上って1F席に来たのだ。パシフィコ横浜のホールは1Fの上にあって、ホールの1F席はパシフィコ横浜の2Fにあると。なんて紛らわしいんだ。まあ、事前に調べておかなかった私に落ち度がある。文句を言っても仕方あるまい。それじゃあさっそく入場しよう。

ホールに足を踏み入れたその瞬間、空気がガラリと変わった。
ここは先ほどまでいた世界とは切り離されていて、時間の流れや空気の流れが違うように思えた。ステージから放たれる圧力めいたものが、私の心身を刺激して体中に何かが駆け巡る。なんだかこの場所にいるだけでダメージを受けている気がした。ここは毒の沼なのか。それともマグマの沼なのか。HPゲージがじりじり減っていく音に耳を傾けながらも、一歩一歩かまわず進んでいく。でも嫌な感じではない。
ついに…このときが…来たんだ…。
震えながらも自分の席を探し出し座ることができた。
席に座ると少し落ち着いたのか、先ほどから体中を駆け巡っていたものの正体がわかった気がした。
「期待とときめきと緊張…か…」
しばらくするとティッピーの声が鳴り響き会場での諸注意が伝えられた。そろそろ始まるぞ。ステージを見上げると入り口で見たときよりも、一層輝きを増しているように感じた。
会場が暗くなりスクリーンにカウントダウンの数字が映し出される。そのカウントダウンはまるで、私の鼓動を表しているようだった。数字が小さくなるにつれ、「期待」「ときめき」「緊張」すべてが大きくなっていく。時間の流れがゆっくりに感じた。すべてを詰め込んだ風船はどんどん膨らんでいき、とどまるところを知らないようだった。膨らませすぎた風船は圧力に耐えきれず破裂する。私は膨らみすぎて破裂しないだろうか。耐えられるのだろうか。そんなことを心が勝手にしゃべり出す。気がつけば周りの方たちがカウントダウンに合わせて、手拍子をしていた。私も周りに合わせて手拍子を始める。きっとこの会場にいる人たち全員が今、同じものを感じ、同じ事を考えている。心は一つになっていた。
「5」、「4」、「3」、「2」、「1」、「0」………
♪~♪~♪
聞き慣れたメロディとともに、キャストさんたちが次々に登場していく。

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 講演の内容につきましては、
 他の方がnoteにまとめてくださっているので
 割愛いたします。
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キャストさんたちの終わりの挨拶が始まった。ここまで本当にあっという間だった。とてつもない名残惜しさに襲われていたため、挨拶の内容はあまり頭に入ってこない。挨拶を終えたキャストさんたちが去って行き、ついに昼の部講演の幕が下ろされた。なんだろう、このなんとも言えない気持ち…
素晴らしかったのはもちろんなのだけれど、パズルのピースがかけているというかそんな感覚。以前YouTubeで配信された過去のTeaPartyにあったはずの何かがかけていた…。今回のTeaPartyで出てきたショートケーキは甘く、上品な味わいで素晴らしかった。とても素晴らしかったのだけれども、そのショートケーキの上にはイチゴがのっていなかった…。歌唱がなかったからだろうか。声援が禁止だったからだろうか。その「かけたもの」が何なのかはわからずじまい…。

観客の退場は放送の指示に従う形で、順番に行われた。私はステージの上にあったティーカップをしっかりと目に焼き付け、退場した。

元の世界に帰ってきた。先ほどまでごちうさの沼に浸かっていたからだろうか。私はまだふわふわする。私の心は体を置き去りにして、どこかへ飛んで行ってしまいそうなほど軽かった。
私と友人は飾ってある等身大パネルを写真に収めた後に、物販列に並ぶためささっと建物内から出た。外はもう日が沈みかけていて朝に感じた寒さが戻ってきていた。私の不注意で物販の抽選申し込みを忘れたため、フリーの時間帯に入る他無かった。その関係上急ぐ必要があったのだ。なんとしてでもチケットホルダーは確保したい。友人と私の意見が一致した。
物販の待機列はすでにうねうねと蛇のように長くなっていた。5~6回は折り返しているだろうか。いや、建物内を含めるともっとかもしれない。外から見える待機列の先っぽは、建物内に吸い込まれている。建物の中までは確認できなかったが、中もきっとうねうねだろう。わかっていたとも、わかっていたともさ。
手遅れでないことを願って私と友人は、列に並んだ。並んでいる間はさすがに暇なのでいくつかツイートをした。TeaParty昼の部が終わってしまったことの嘆きや、4期の発表がなかったため夜の部での発表を期待していることを適当につぶやいた。思いのほか「いいね」が集まったので、みんな思うところは一緒らしい。まあそうだよね。
ふと、スタッフさんだろうか。声が聞こえた。よく聞くと売り切れた商品の連絡らしい。
…………
ヨシ!。チケットホルダーはまだ売り切れていないようだ。頼む、売り切れないでくれ。ひとまずツイッターに戻り、今度はつぶやくことが特に思いつかなかったので見物に徹する。皆TeaPartyを楽しむ声や絶賛する声など、ポジティブなツイートがほとんどだった。私は先ほど嘆いてしまったが…う~ん恥ずかしい。そんことは関係なしにどんどん拡散されていく。私の嘆きがいろんな人の目にさらされる。やめておくれ~。心はそう叫んでいた。
ふと面白いツイートを見つけた。法被を着て集合写真をみんなで撮ろうという企画のツイートだった。企画者は知っている方だったので参加したかった。けれども、今この場を離れるわけにはいかない。だれか私の代わりに参加してくれないだろうか。まあ、そんなことしても意味は無いのだが。
そのとき、スタッフさんの声が我々に終焉を告げた。
「チケットホルダー売り切れましたー!」
………………………
わかっていたとも!わかっていたともさ!
今の声を聞いて友人はどう思ったのだろう。ここに並んでいる人たちはどう思ったのだろう。ここに居る人たちはみんな、同じものを感じ、同じ事を思っただろう。TeaParty開始の時と同じだ。
チケットホルダーは事後通販で狙うとして、せめてクリアファイルだけでも確保したい。クリアファイルが完売したら、私が並んでいる意味が無くなってしまう。もともとチケットホルダーとクリアファイルを買う予定だったからだ。頼むぞ。建物の入り口の前まで私が進んだ頃、朝に待ち合わせをしたフォロワーさんから連絡があった。なんだろう。
「アルカローアさん、今どこに居ます?」
居場所を聞かれたので、しどろもどろになりながら頑張って伝えた。果たして伝わっただろうか。私は説明が苦手なのだ。しばらくするとフォロワーさんが目の前に現れたのでほっとした。それにしても何の用事だろう、私には全く見当がつかなかった。こちらに気づいてもらうために恥ずかしさをこらえながら、待機列から大きめに手を振った。気づいて。
すると視線がこちらに向けられて目が合った。あ~良かった、気づいてくれたみたい。
「夜の部行ってきます!」
「ハイ!行ってらっしゃい」
そんなやりとりをするとフォロワーさんは急ぎ足で会場に向かっていった。
え?それだけ?
正直拍子抜けだった。どうやら、一言挨拶をするためだけに会いに来てくれたらしい。なんて律儀な方なんだろう。でもそういう気持ちはとっても大切だとわかっているつもり。フォロワーさんもチャットや電話だけじゃ伝わらないものがあるということを、よく理解されているのだろう。なんだか良い気分だ。彼の誠意を感じたまま、私は建物内へと入った。

紙とペンを渡された。紙には販売していると思われるグッズ名がずらりと並んでいた。どうやらこれに購入するものを書いて用意してもらう方式らしい。なんだかサイゼリヤみたいだ。私はすぐさまクリアファイルの欄に印をつけた。ふとチケットホルダーの欄を眺める。ひょっとしたらさっきの完売は何かの間違いで、ここに印をつければ購入できるかもしれない…。どうせ、無かったら無かったで謝られるだけだし。そんな悪巧みが頭をよぎったが、良心が痛むのでさすがにやめておいた。私の番が回ってきてクリアファイルは無事購入することができた。良かったぁ。私は安堵した。

外に出ると、あたりはすっかり暗くなっていた。海の方を眺めると遠くに建物の光がたくさん見えた。海面には桟橋の照明が反射してテカテカときらめいている。パシフィコ横浜の方に振り返ってみると、やはりこちらもきれいだ。暗闇の中に煌々とついた照明に心強さを感じる。肌寒く心細い時にあたたかく出迎えてくれるホテルのようだ。そのホテルから今出てきたわけだけど。
いろんな光に見送られながら我々は帰路についた。

さて、帰るまでがTeaPartyだ。帰りの電車の中で友人とTeaPartyのことについて、存分に語り合うんだ。と、朝は思っていたけれど我々にそんな体力は残っていなかった。二人ともぐったりだったので帰りの電車内は沈黙が続いた。私はこっそり心の中でつぶやいた。こんな楽しくて素敵なイベントだったのなら、昼の部のみとはいわず夜の部も申し込んでおくべきだった。次の機会があるならば、必ず昼夜どちらも申し込むことにしよう。
我々は帰りの電車に揺られながら、次のTeaPartyの開催を夢見ていた。


最後まで読んでいただきありがとうございます。
この日記はあやふやな記憶を頼りにして、最大限かっこつけて大げさに書いている箇所があるので、事実と異なる場合があるかもしれません。
ご了承を。

さて、2022年のエイプリルフールでついに、ナツメちゃん、エルちゃんの声が発表されました。フユちゃんの声が発表された時点でアニメの次回作は、ほぼ確約されたようなものでしたが、今回でより確実なものになりましたね。ここまで発表しておいて、次回作はありませんなんて展開はないでしょう。もう後には引けない状況まで来ています。突き進むのみです。
そのときが来るまで、皆で制作者様たちを信じて待ちましょう。

それでは!


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